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第一章:逆行聖女
第28話:自警団員アリシア 6
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翌日となり、アリシアはアーノルドと共にリーナの家へ向かっている。
その道中、アリシアは気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、お父さん」
「なんだい?」
「お父さんはどうして昨日の話を信じることができたの?」
アリシアは疑問だった。
自分に関することなら、言葉には出さずに心の中で疑えばいいだけの話だ。
しかし、今回は二日後に起こるだろう出来事についてであり、アーノルドだけではなく亡くなっているヴォルスをも巻き込んだ話になってしまった。
親友を殺した相手が近々やってくるなどと、冗談では絶対に言えない話である。
それをアーノルドは、信じると口にしたから信じたのか、それとも内心では信じていないのか。もしそうであれば、憤っているのではないのかと、不安を覚えていた。
「……何もなければいいな、とは思っているよ」
「だったら信じなくても――」
「しかし、それが信じないという理由にはならないだろう?」
「……それは、そうだけど」
「それに、アリシアだから信じたんだ。あれだけ悩み、苦しみ、震えるほどの恐怖を感じながら打ち明けてくれた娘を信じない親なんて、いるはずがないさ」
いつもと変わらない笑みを浮かべながら、大きな手で頭を撫でてくれる。
だが、その手はすぐにピタリと止まり、すぐに『うーん』と考え込むアーノルドの声が聞こえてきた。
「どうしたの、お父さん?」
「いやなあ、アリシアが二五歳の頃の記憶を持っているのであれば、頭を撫でられるのは嫌じゃないかと思ってなぁ」
「嫌じゃないよ! もっと撫でてほしいの!」
「そうか?」
「そうだよ! ……ずっと、恋しかったんだもの」
最後の一言で、アーノルドの悩みはすぐに吹っ飛んだ。
そして、再び大きな手がアリシアの頭に置かれると、一際優しく撫でられた。
「……絶対に、無事に戻ってくるからな」
「……信じてるよ、お父さん」
気持ちを切り替えたアリシアは普段の表情に戻り、そのままヴァイスとジーナと合流した。
そのまま四人で詰め所へ向かうのだが、アーノルドは楽し気に歩いている三人の後ろ姿を眺めながら、絶対に巻き込ませないと心に誓っていたのだった。
詰め所に到着すると、それぞれが剣を学ぶために訓練場へ散らばっていく。
しかし、今日だけは一部の自警団員だけをアーノルドが呼び止めていた。
「三人はシエナと訓練を続けておいてくれ」
そう言い残したアーノルドは自警団員と共に訓練場を離れていった。
「団長、どうしたのかしら? アリシアちゃん、何か聞いてる?」
「えっと、一応は。でも、お父さんから話があると思いますよ」
「……そっか。まあ、それならいいかな」
「それよりも訓練を始めましょう!」
アリシアがそう口にすると、シエナは少しだけ考え込んだあと、すぐに普段通りに訓練を開始した。
主に素振りと模擬戦なのだが、自分に合った動きを身に付けるために一つひとつの動きを意識しながら型の確認という訓練も行われている。
多くの場合でアリシアが積極的に行い、ヴァイスとジーナを引っ張っていくのがいつもの流れなのだが――今日だけはそのようにならなかった。
「……はぁ」
少しでも時間が空くと視線が詰め所へ向いてしまい、訓練に身が入らない。
模擬戦の時ですら集中力を欠いており、危うくジーナに初勝利をプレゼントしてしまうところだった。
だが、そんな状態で訓練を続けさせるほどシエナも甘くはない。
「ヴァイス君とジーナちゃんで訓練を続けてくれる?」
「……わかりました」
「はーい!」
「えっ? あの、シエナさん?」
「アリシアちゃんはこっちにおいでー」
有無を言わせない雰囲気でシエナがそう口にすると、アリシアはやや俯いたまま歩き出す。
(……やっちゃった。剣を振るうのに、集中できていないなんて、怒られて当然だよね)
ため息をつきながらシエナについていき、訓練場の端まで移動する。
そこで掛けられた言葉はと言えば――
「ちょっとだけ世間話でもしようか!」
「……えっ?」
完全にアリシアの予想外の言葉だった。
その道中、アリシアは気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、お父さん」
「なんだい?」
「お父さんはどうして昨日の話を信じることができたの?」
アリシアは疑問だった。
自分に関することなら、言葉には出さずに心の中で疑えばいいだけの話だ。
しかし、今回は二日後に起こるだろう出来事についてであり、アーノルドだけではなく亡くなっているヴォルスをも巻き込んだ話になってしまった。
親友を殺した相手が近々やってくるなどと、冗談では絶対に言えない話である。
それをアーノルドは、信じると口にしたから信じたのか、それとも内心では信じていないのか。もしそうであれば、憤っているのではないのかと、不安を覚えていた。
「……何もなければいいな、とは思っているよ」
「だったら信じなくても――」
「しかし、それが信じないという理由にはならないだろう?」
「……それは、そうだけど」
「それに、アリシアだから信じたんだ。あれだけ悩み、苦しみ、震えるほどの恐怖を感じながら打ち明けてくれた娘を信じない親なんて、いるはずがないさ」
いつもと変わらない笑みを浮かべながら、大きな手で頭を撫でてくれる。
だが、その手はすぐにピタリと止まり、すぐに『うーん』と考え込むアーノルドの声が聞こえてきた。
「どうしたの、お父さん?」
「いやなあ、アリシアが二五歳の頃の記憶を持っているのであれば、頭を撫でられるのは嫌じゃないかと思ってなぁ」
「嫌じゃないよ! もっと撫でてほしいの!」
「そうか?」
「そうだよ! ……ずっと、恋しかったんだもの」
最後の一言で、アーノルドの悩みはすぐに吹っ飛んだ。
そして、再び大きな手がアリシアの頭に置かれると、一際優しく撫でられた。
「……絶対に、無事に戻ってくるからな」
「……信じてるよ、お父さん」
気持ちを切り替えたアリシアは普段の表情に戻り、そのままヴァイスとジーナと合流した。
そのまま四人で詰め所へ向かうのだが、アーノルドは楽し気に歩いている三人の後ろ姿を眺めながら、絶対に巻き込ませないと心に誓っていたのだった。
詰め所に到着すると、それぞれが剣を学ぶために訓練場へ散らばっていく。
しかし、今日だけは一部の自警団員だけをアーノルドが呼び止めていた。
「三人はシエナと訓練を続けておいてくれ」
そう言い残したアーノルドは自警団員と共に訓練場を離れていった。
「団長、どうしたのかしら? アリシアちゃん、何か聞いてる?」
「えっと、一応は。でも、お父さんから話があると思いますよ」
「……そっか。まあ、それならいいかな」
「それよりも訓練を始めましょう!」
アリシアがそう口にすると、シエナは少しだけ考え込んだあと、すぐに普段通りに訓練を開始した。
主に素振りと模擬戦なのだが、自分に合った動きを身に付けるために一つひとつの動きを意識しながら型の確認という訓練も行われている。
多くの場合でアリシアが積極的に行い、ヴァイスとジーナを引っ張っていくのがいつもの流れなのだが――今日だけはそのようにならなかった。
「……はぁ」
少しでも時間が空くと視線が詰め所へ向いてしまい、訓練に身が入らない。
模擬戦の時ですら集中力を欠いており、危うくジーナに初勝利をプレゼントしてしまうところだった。
だが、そんな状態で訓練を続けさせるほどシエナも甘くはない。
「ヴァイス君とジーナちゃんで訓練を続けてくれる?」
「……わかりました」
「はーい!」
「えっ? あの、シエナさん?」
「アリシアちゃんはこっちにおいでー」
有無を言わせない雰囲気でシエナがそう口にすると、アリシアはやや俯いたまま歩き出す。
(……やっちゃった。剣を振るうのに、集中できていないなんて、怒られて当然だよね)
ため息をつきながらシエナについていき、訓練場の端まで移動する。
そこで掛けられた言葉はと言えば――
「ちょっとだけ世間話でもしようか!」
「……えっ?」
完全にアリシアの予想外の言葉だった。
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