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魔法競技会
閑話:フローリアンテ・ワン・エレオノーラ③
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地上世界を天上世界から見つめながらフローリアンテは冷や汗を掻いていた。
理由はたった一つ──堕神デヴォルガンデの存在である。
「まさか、堕神が現れるとはねぇ」
神の座を失い、地上世界でのやり直しを命じられた一神だったが、人間の生活に耐えきれずわずかに残っていた神力を暴走させてしまい堕神に成り果てた魔獣。
そして、デヴォルガンデはヴァリアンテと同じようにフローリアンテが地上世界に向かうよう命じた一神であった。
「天上世界でも罪を犯し、地上世界でも……いいえ、今回に関しては利用されたと言うべきかしら」
魔法国家カーザリアと敵対しており、シンたちを使って堕神デヴォルガンデの進化を手助けした国の存在。フローリアンテはその事に気づいていた。
「……海の向こうの国──ラクスマキナ帝国」
力こそが全てだと皇帝が宣言しているラクスマキナ帝国では、魔法だけではなく全ての分野において実力者を集めている。
武術、知識、魔法装具、魔法に関しても分母は違えどトップの実力は引けをとらない人材を集めていた。
シンもそのうちの一人であったが、武術の中でも中の上ほどの実力しか持ち合わせていない。パーティーメンバーに至っては各分野の中の下以下と言ってもいいだろう。
デヴォルガンデは切り札の一つではあったが、それが最高の切り札というわけでもなかった。
「アル様がカーザリアにいてくれた事が幸いしましたね」
あのまま時間を掛けていてはデヴォルガンデが完全体になっていただろう。もしそうなっていれば、アルがいたとしても敗北していたかもしれない。
「それに、今回はあの子の事を責められませんしねぇ」
あの子というのは、アルを補佐するため一時的に地上に干渉できない女神から、干渉する事ができる信仰神になっているヴァリアンテの事だ。
普段から駄女神と言われていたヴァリアンテは今までもアルの近くにいながら色々とやらかしてきたが、今回に限って言えばどうしようもなかった。
「せめて、アル様が神像を持ち歩いてくれていれば力になれたでしょうに」
魔法競技会という学園の催し物に参加するとあって、アルは無駄な荷物を極力減らしていた。
自らが信仰する神像なら無駄な荷物ではないものの、出発前に普段よりも長い時間の祈りを捧げた事もありユージュラッドに置いてきていたのだ。
「……とはいえ、さすがにあの状態を見過ごすのは……どうしましょうかねええぇぇぇぇえ?」
フローリアンテが視線をカーザリアからユージュラッドへ向けると、アルの机の上に置かれた神像が横になっていた。
これはおかしな話で、アルは祈りを捧げてそのまま出発しており、神像は確かに立たされていた。
ならば何故、ヴァリアンテの神像は横になっているのだろう。
その答えは一つしかなかった。
「……ぐーすかぴーすか寝てるんじゃないわよ! この駄女神がああああああああぁぁっ!」
アルがいなければ力をろくに発揮できない今のヴァリアンテだが、彼が祈りを捧げる事によってわずかながら神力を蓄えることができる。
その力は地上世界において強力なものであり、使い方によっては一国を滅ぼすほどに強大になる事もあった。
しかしヴァリアンテは、そんな神力を神像を倒すためだけに使っていたのだ。
「あんたは立ってても寝てても関係ないでしょうが! 気分の問題なの? ねえ、それだったら天罰を与えてやろうかしらねえっ!」
独り言がだんだんと大きくなっている事に気づかず、フローリアンテは拳を握り机をバンバンと叩いている。
「……もし、もしも次にヴァリアンテが何かをしでかしたら……直接殴りに行くしかなさそうね!」
フローリアンテがそんな事を決意しているとは、眠りこけているヴァリアンテが気づくことはなかった。
※※※※
「──……ブルブル!?」
気づくはずはないのだが、神像の中のヴァリアンテが不思議と体を震わせていたのはわずかな殺気を感じ取ったからかもしれない。
理由はたった一つ──堕神デヴォルガンデの存在である。
「まさか、堕神が現れるとはねぇ」
神の座を失い、地上世界でのやり直しを命じられた一神だったが、人間の生活に耐えきれずわずかに残っていた神力を暴走させてしまい堕神に成り果てた魔獣。
そして、デヴォルガンデはヴァリアンテと同じようにフローリアンテが地上世界に向かうよう命じた一神であった。
「天上世界でも罪を犯し、地上世界でも……いいえ、今回に関しては利用されたと言うべきかしら」
魔法国家カーザリアと敵対しており、シンたちを使って堕神デヴォルガンデの進化を手助けした国の存在。フローリアンテはその事に気づいていた。
「……海の向こうの国──ラクスマキナ帝国」
力こそが全てだと皇帝が宣言しているラクスマキナ帝国では、魔法だけではなく全ての分野において実力者を集めている。
武術、知識、魔法装具、魔法に関しても分母は違えどトップの実力は引けをとらない人材を集めていた。
シンもそのうちの一人であったが、武術の中でも中の上ほどの実力しか持ち合わせていない。パーティーメンバーに至っては各分野の中の下以下と言ってもいいだろう。
デヴォルガンデは切り札の一つではあったが、それが最高の切り札というわけでもなかった。
「アル様がカーザリアにいてくれた事が幸いしましたね」
あのまま時間を掛けていてはデヴォルガンデが完全体になっていただろう。もしそうなっていれば、アルがいたとしても敗北していたかもしれない。
「それに、今回はあの子の事を責められませんしねぇ」
あの子というのは、アルを補佐するため一時的に地上に干渉できない女神から、干渉する事ができる信仰神になっているヴァリアンテの事だ。
普段から駄女神と言われていたヴァリアンテは今までもアルの近くにいながら色々とやらかしてきたが、今回に限って言えばどうしようもなかった。
「せめて、アル様が神像を持ち歩いてくれていれば力になれたでしょうに」
魔法競技会という学園の催し物に参加するとあって、アルは無駄な荷物を極力減らしていた。
自らが信仰する神像なら無駄な荷物ではないものの、出発前に普段よりも長い時間の祈りを捧げた事もありユージュラッドに置いてきていたのだ。
「……とはいえ、さすがにあの状態を見過ごすのは……どうしましょうかねええぇぇぇぇえ?」
フローリアンテが視線をカーザリアからユージュラッドへ向けると、アルの机の上に置かれた神像が横になっていた。
これはおかしな話で、アルは祈りを捧げてそのまま出発しており、神像は確かに立たされていた。
ならば何故、ヴァリアンテの神像は横になっているのだろう。
その答えは一つしかなかった。
「……ぐーすかぴーすか寝てるんじゃないわよ! この駄女神がああああああああぁぁっ!」
アルがいなければ力をろくに発揮できない今のヴァリアンテだが、彼が祈りを捧げる事によってわずかながら神力を蓄えることができる。
その力は地上世界において強力なものであり、使い方によっては一国を滅ぼすほどに強大になる事もあった。
しかしヴァリアンテは、そんな神力を神像を倒すためだけに使っていたのだ。
「あんたは立ってても寝てても関係ないでしょうが! 気分の問題なの? ねえ、それだったら天罰を与えてやろうかしらねえっ!」
独り言がだんだんと大きくなっている事に気づかず、フローリアンテは拳を握り机をバンバンと叩いている。
「……もし、もしも次にヴァリアンテが何かをしでかしたら……直接殴りに行くしかなさそうね!」
フローリアンテがそんな事を決意しているとは、眠りこけているヴァリアンテが気づくことはなかった。
※※※※
「──……ブルブル!?」
気づくはずはないのだが、神像の中のヴァリアンテが不思議と体を震わせていたのはわずかな殺気を感じ取ったからかもしれない。
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