不遇天職と不遇スキルは組み合わせると最強です! ~モノマネ士×定着で何にでもなれちゃいました~

渡琉兎

文字の大きさ
21 / 46

第19話:定着

しおりを挟む
 冒険者ギルドを出て馬車を探していると、レミティアが声を掛けてくれた。

「アリウス!」
「すまない、遅くなった」

 すぐに馬車へ乗り込むと、レミティアとリディアが何やらソワソワしている。
 何かあったのかと思い首を傾げていると、その理由をバズズさんが教えてくれた。

「がははははっ! 二人はアリウス殿がギルドマスターとどのような話をしたのかが気になっているのですよ!」
「ちょっと、バズズ!」
「なんだ、そんなことか」

 スキルの使い方に関しては隠す必要はあるが、それ以外は特に話しても問題はない。
 俺は簡潔に話の内容を伝えたのだが、どうやら二人はお気に召さなかったようだ。

「……本当にそれだけですか?」
「もっと特別な内容とかないのですか?」
「ないよ。というか、あったとしても言えるわけがないだろう」
「アリウス殿の言う通りですな」

 俺の言葉にバズズさんだけは同意を示してくれた。

「人には知られたくないことの一つや二つ、ありますからな」
「私にはないわよ!」
「いやいや、レミティアこそ聖女であることを隠さないとダメだろうが」
「うっ!」
「冒険者カードにも回復魔法師って書いたんだろう?」
「うぅっ!!」

 ……いや、別にそこまでのけ反らなくても。

「……すみません、アリウス」
「……私も申し訳ありませんでした」
「分かってくれればいいんだよ」

 ……なんだろう、気まずいな。
 俺は話題を変えるためにバズズさんへ声を掛けた。

「このあとはどちらに向かうんですか?」
「今は宿へ向かっています」
「でしたら、そのあとに少しだけ自由時間をくれませんか?」
「構いませんが……どちらかに行かれるのですかな?」
「ちょっとした用事を済ませたいんです」
「で、でしたら、私が街をご案内いたします!」

 ……これは困った。
 俺がこれからやろうとしていたこと、それは定着スキルを使ったスキルの定着だ。
 これをやるには実際にスキルを使っている姿を見る必要があるのだが、それに加えて俺がスキルをモノマネしなければならない。
 大きな動作を必要とするスキルだと街中では難しいものの、小さな動作で問題がなければその場でスキルを定着させることができる。
 しかし、レミティアがいてはモノマネしている姿を見られる可能性があり、そこを追及されてしまうとモノマネ士と定着スキルの有用性がバレてしまいかねない。

「……いいえ、俺一人で行きますよ」

 今はまだ話せない。そう思った俺は、申し訳ないもののレミティアの提案を断ることにした。

「アリウス!」
「レミティア様、落ち着いてください」
「ですが、バズズ!」
「アリウス殿には、アリウス殿の用事があるのです。そこに我々が許可もなく介入することはできません」
「それは、そうですが……」

 バズズさんの言葉にレミティアは下を向いてしまい、その肩にリディアが手を置いている。
 申し訳ないと思いながらも、力のことを知られるわけにはいかないので我慢してもらうしかない。

「……この埋め合わせは絶対にするから」
「……本当ですか?」
「もちろんだ」
「……分かりました。我がままを言ってしまい、すみませんでした」
「いや、俺の方こそいきなり一人で行動したいなんて言ってすまなかった」

 そのあとは誰も口を開くことなく、無言のまま馬車は進んでいく。
 そうして到着した宿は、俺が予想していたよりもはるかに豪華な高級宿だった。
 俺の手持ちでは間違いなく一日で破産、もしくは泊まることすらできないと判断し、すぐにバズズさんに声を掛けた。

「お、俺は自分で宿を探します」
「どうしたのですか?」
「あー……金が、ない」
「あぁ、構いませんよ。ここは同行させていただいたお礼として、我々が支払いますから」

 いや、ダメだろう! 同行させていただいたって、馬車に揺られていたのは俺の方なんだが!?

「そうですよ、アリウス! せっかく知り合えたのですから、同じ宿にしましょう!」
「レミティア様もそう仰っています、ささ、アリウス様」
「部屋は三部屋じゃ」
「ちょっと、皆さん!?」

 ……あー……まあ、タダならいいか。必要経費が節約できたと考えればいいんだよな。
 ただし、バズズさんは俺を個室にしようとしていたので、慌ててバズズさんと同じ部屋で構わないと付け加えた。
 レミティアは護衛のリディアと同部屋らしく、そこで俺が個室になるのはさすがにおかしい。

「私としては話し相手がいてくれると助かりますが、よろしいのですかな?」
「もちろんです! 無駄な出費は避けてください!」
「……分かりました。では、部屋は二部屋を」

 そのまま部屋の場所を確認した俺は、バズズさんに断りを入れてラグザリアを見て回ることにした。

 ――やって来た場所はラグザリアの市場である。
 街中で戦闘スキルを定着させられるとは思っていないので、まずは役に立ちそうな後方スキルや特殊スキル、チャンスがあれば魔法スキルを定着させたい。
 ナリゴサ村に立ち寄っていた行商人からは、大きな街の市場には屋台も多く並んでおり、スキルを使って商品を販売しているところもあると聞いたことがある。
 ここで一番欲しいスキルは料理スキル、解体スキル、付与スキル、魔鉱スキルだろうか。
 料理スキルは野営をする時に役立つし、解体スキルは魔獣を解体する時に無駄な部位を出すことなく解体ができるようになる。
 付与スキルは木工や鉄工や細工スキルと組み合わせて使えるし、魔鉱スキルは魔鉱石という特殊な鉱石の加工ができるようになる。
 これだけ多くの人がいるのだから、もっと多種多様なスキルを定着させることができるはずで、俺はこれが楽しみで仕方がなかった。
 ……正直、冒険者ギルドで模擬戦をした男性は槍術スキルだったし、ギルマスは柔剣スキルだったのでガッカリしていたのだ。
 稀にスキルを複数授かる人もいるらしいが、最初の男性はないだろう。弱かったし。
 あるとしたらギルマスだが、手の内を簡単に晒すことはしないだろうし、機会があればくらいに考えておこう。

「……よし、それじゃあ行くか!」

 俺は人が行き交う市場に足を踏み入れて、鑑定スキルをフル活用しながら、新たなスキルを求めて歩き出した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

処理中です...