傷物英雄、義手義足となり真の勇者を目指す

渡琉兎

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第10話:キリカの故郷

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 ◆◇◆◇

 翌朝、準備ができ次第で野営地を出発したバジリオたちは、その日の昼前になり、キリカの故郷が見えるところまでやってきた。

「あそこは確か……」
「うふふ。思い出しましたか?」

 見覚えのある場所にバジリオが呟くと、微笑みながらキリカが声を掛けてきた。

「あ、あぁ。……まさかキリカが、ラビクの里の人間だったとは思わなかったな」

 ――ラビクの里。
 大陸南の森でひっそりと暮らしている、争いとは縁のない穏やかな人族が生活している里だ。
 バジリオが英雄の頃、近くの都市に立ち寄った時にラビクの里出身の男性から助けを求められ、その求めに応じたことでつながりを持つことができた。
 ラビクの里では古代遺跡を管理しており、そこに住み着いた魔獣退治を請け負ったのだ。

「懐かしいなぁ。……だが、当時の魔獣くらいなら、近くの都市の奴らでも倒せるんじゃないのか?」

 わざわざ山の中に入り、自分に依頼する必要はなかったのではないかと疑問を口にしたバジリオだったが、キリカの表情は冴えない。

「……それが、そうもいかない状況になってしまったんです」
「……どういうことだ?」
「……魔族、です」

 魔族と聞いたバジリオの表情は、一気に真剣なものに変わる。

「ここは大陸の南だろう。ってことは、はぐれか?」
「分かりません。ただ、魔族は突如として現れると、古代遺跡に住み着いてしまったのです」
「住み着いただと? こう言っちゃあなんだが、ラビクの里を襲ってはこないのか?」
「今のところは……ただ、状況がどうなるかは魔族次第ということもありまして、バジリオ様にお願いした次第なんです」

 納得顔で頷いたバジリオ。
 相手がただの魔獣であれば別だが、魔族が相手では普通の人族には荷が重すぎる。
 近くに英雄がいたならばそちらに依頼しただろうが、ほとんどの英雄は姿をくらませてしまった。
 だからこそキリカは、前線に立っていない、所在をある程度把握できているバジリオを探すために、あの険しい山々を超えてきたのだ。

「……急ぐか」
「ありがとうございます、バジリオ様」
「気にすんな。ラビクの里には俺も世話になったからな。これで恩返しができるなら、当然のことだ」

 笑顔でそう口にしたバジリオに感謝し、ラビクの里を目指して歩き出す。
 しかし、バジリオには疑問が一つだけあった。
 見た目にも若いキリカだが、バジリオがラビクの里を助けたのは一〇年以上も前であり、逆算すると彼女は子供だったはず。
 それにも関わらず、バジリオを探すために何故キリカがやってきたのか、それが気になっていたのだ。

(……だがまあ、今はそんなことよりも、魔族をどうにかせにゃならんか)

 五年以上も前になる、魔族と戦っていた頃のことを思い出しながら、バジリオは足を進めていた。そして――

「戻ったよ!」

 ラビクの里の門が見えてくると、キリカが声を上げた。
 門番の男性二人が振り返り、笑顔で迎えてくれる。

「キリカ! ハヅキ様! それに……あぁ、バジリオ様まで!」
「本当に来てくれたのですね! あなた様は、昔とお変わりないんだ!」

 男性二人はバジリオを見るや否や、涙を浮かべながらそう口にした。

「おいおい、大げさだな」

 バジリオは苦笑しながらそう声を掛け、男性二人の肩を軽く叩く。

「それだけ、バジリオ様の存在がラビクの里にとって、大きいと言うことです」

 そんなやり取りを見ながら、キリカがそう口にした。

「……本当に大げさだな。っと、キリカ。やるべきことがあるんだ。中を案内してくれるか?」
「もちろんです。門を開けてもらえますか?」

 バジリオの言葉を受けてキリカが男性二人に声を掛けると、彼らは大きく頷き、門を開けた。
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