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第一章:勇者誕生?
境の調査へ出発です
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門の前ではすでにヴィリエルが待っており、俺たちを見つけると手を振りながら近づいてきた。
「すまない、待たせてしまったか」
「ううん、私も来たばかりだから。時間は少し早いけど、もう出発する?」
「あぁ、出発しよう」
どうせ戻るなら早い方がいいと思い、俺たちはそのまま人界と魔界の境の調査へ出発することにした。
◆◆◆◆
家からボートピアズまでは一日で走破したものの、今回はヴィリエルが一緒にいるので同じことができない。
というわけで、普通の歩調で向かっている。
あまりの遅さにツヴァイルが退屈そうにしているのだが、俺としてはゆっくり歩きながらの道程も嫌いではなかった。
「……これも、スローライフの一つかもしれないなぁ」
「またスローライフって言ってるわね。スレイはどうしてスローライフにこだわるの? 若いんだから、もっと夢をもって行動してもいいと思うわよ?」
ヴィリエルの言葉は当たり前の発言なのかもしれない。
だが、それは生まれながらにR以上の職業ランクを与えられた者が抱く思いなのだろう。
俺はNだったから、夢を持つなんて考えられなかった。
まあ、Nだった期間は数日だったけど、それでもその数日で俺は絶望を味わったのだ。
奴隷として生きるのではなく、どこかでひっそり暮らそうとしただけで野垂れ死にそうになったのだから。
「……俺の夢が、スローライフを送ることなんだ」
だからなのかは分からないが、俺はスローライフに大きな憧れを抱いていた。夢と言っても過言ではないだろう。
「ふーん。そっか、そうなんだね」
怪しまれるだろうかと思ったが、不思議なことにヴィリエルはすんなりと受け入れてくれた。
いや、単純に興味がなかったか、無くなっただけかもしれないけど。
「ヴィリエルはどうして冒険者になったんだ? 何か夢でもあったのか?」
「前に言ったでしょ。自由気ままな生活が性に合っているって」
「それは言い換えると、スローライフな生活が性に合っているってことじゃ――」
「ないからね?」
「……はい」
まあ、確かにスローライフと自由気ままな生活が合致するかと言えばしないかもしれない。
でも、近い部分はあると思うのだが完全否定されてしまった。
「それよりも、二人は付き合ってるのかしら?」
「……なんでそんな話になるんだ?」
「だって、若い男女が一緒に暮らしているんでしょ? ってことは、そういう関係じゃないの?」
「そういう関係じゃないし、そもそもヴィリエルに話す理由が見つからない」
「境までは三日くらい掛かるのよ? 暇じゃないのよー!」
だったら黙って歩けばいいじゃないか。こっちは一日で到着できるってのに。
そんなことを考えていると、街道には珍しく魔獣の気配を見つけてしまう。
「……どうしてこんなところに?」
「うーん、距離は100メートル先の茂みの中か。無視もできるけど、さすがに街道から近すぎるか」
「ヴィリエルさんは斥候か何かですか? 距離まで見極められるなんて、すごいですね」
おいおい、いきなり探るようなことを言うなって。
リリルの発言にドキドキしつつヴィリエルの返事を待っていると、意外なことにあっさりと答えてくれた。
「そっか。まだ私の職業を言ってなかったわね。私は職業ランクURの剣聖よ」
「「……URの剣聖!?」」
――ガサガサッ!
俺とリリルが同時に驚きの声をあげると、その声を聞いて魔獣が飛び出してきた。
「あちゃー。すまない、ヴィリエル」
「いいのよ。それに、狩っとかないと後々面倒だしね」
笑いながらそう口にしたヴィリエルは、背負っていた自らの身長ほどの刀身を有する大剣を、なんと片手で抜き放った。
「せっかくだし、二人に私の実力を見ておいてもらおうかな。まあ、ブラックウルフ程度だと一瞬で終わっちゃうけど――ね!」
言い終わるのと同時に駆け出したヴィリエル。
先ほどまで立っていた場所の地面が陥没し、ヴィリエル自身は一瞬でブラックウルフを間合いに捉えている。そして――
「はあっ!」
『キャウンッ!』
振り抜かれた大剣はブラックウルフだけではなく地面をも穿ち、その剣圧で少し先まで亀裂が走った。
振り抜く速度も尋常ではないが、あれだけの大剣を軽々と持ちながら、一瞬で間合いに飛び込むことのできる速度を出せるのもまた尋常ではない。
「これが、UR」
「これが、剣聖」
「ガウ、ガウガウ」
三者三様の意見が出たところで、ヴィリエルが笑みを浮かべながら戻ってくる。
「まあ、ざっとこんなもんね」
「なあ、ヴィリエル。今回の調査に、俺たちって必要なのか?」
「スレイの言う通りね。一人でも十分だったんじゃないの?」
ヴィリエルの実力ならそう簡単に負けるようなこともなさそうだし、そもそもURなら魔界でも十分活動できるはずだ。
境の調査には打ってつけの人材だろうに、俺たちがいたらむしろ邪魔になるんじゃないだろうか。
「境は広大だから一人じゃ無理ね。だからといって弱い奴で数を揃えると被害が大きくなるから、実力がある人を集めないといけないのよ」
「……これでも冒険者ランクはFなんだが?」
「SRの魔剣士が何を言ってるのよ! さあ、次に魔獣が現れたら二人が戦って見せてよね!」
勝手にそう決めてしまったヴィリエルが歩き出す。
俺はリリルと目を合わせて嘆息しつつ、ヴィリエルを敵に回すと本当に厄介だなと思いながら足を進めるのだった。
「すまない、待たせてしまったか」
「ううん、私も来たばかりだから。時間は少し早いけど、もう出発する?」
「あぁ、出発しよう」
どうせ戻るなら早い方がいいと思い、俺たちはそのまま人界と魔界の境の調査へ出発することにした。
◆◆◆◆
家からボートピアズまでは一日で走破したものの、今回はヴィリエルが一緒にいるので同じことができない。
というわけで、普通の歩調で向かっている。
あまりの遅さにツヴァイルが退屈そうにしているのだが、俺としてはゆっくり歩きながらの道程も嫌いではなかった。
「……これも、スローライフの一つかもしれないなぁ」
「またスローライフって言ってるわね。スレイはどうしてスローライフにこだわるの? 若いんだから、もっと夢をもって行動してもいいと思うわよ?」
ヴィリエルの言葉は当たり前の発言なのかもしれない。
だが、それは生まれながらにR以上の職業ランクを与えられた者が抱く思いなのだろう。
俺はNだったから、夢を持つなんて考えられなかった。
まあ、Nだった期間は数日だったけど、それでもその数日で俺は絶望を味わったのだ。
奴隷として生きるのではなく、どこかでひっそり暮らそうとしただけで野垂れ死にそうになったのだから。
「……俺の夢が、スローライフを送ることなんだ」
だからなのかは分からないが、俺はスローライフに大きな憧れを抱いていた。夢と言っても過言ではないだろう。
「ふーん。そっか、そうなんだね」
怪しまれるだろうかと思ったが、不思議なことにヴィリエルはすんなりと受け入れてくれた。
いや、単純に興味がなかったか、無くなっただけかもしれないけど。
「ヴィリエルはどうして冒険者になったんだ? 何か夢でもあったのか?」
「前に言ったでしょ。自由気ままな生活が性に合っているって」
「それは言い換えると、スローライフな生活が性に合っているってことじゃ――」
「ないからね?」
「……はい」
まあ、確かにスローライフと自由気ままな生活が合致するかと言えばしないかもしれない。
でも、近い部分はあると思うのだが完全否定されてしまった。
「それよりも、二人は付き合ってるのかしら?」
「……なんでそんな話になるんだ?」
「だって、若い男女が一緒に暮らしているんでしょ? ってことは、そういう関係じゃないの?」
「そういう関係じゃないし、そもそもヴィリエルに話す理由が見つからない」
「境までは三日くらい掛かるのよ? 暇じゃないのよー!」
だったら黙って歩けばいいじゃないか。こっちは一日で到着できるってのに。
そんなことを考えていると、街道には珍しく魔獣の気配を見つけてしまう。
「……どうしてこんなところに?」
「うーん、距離は100メートル先の茂みの中か。無視もできるけど、さすがに街道から近すぎるか」
「ヴィリエルさんは斥候か何かですか? 距離まで見極められるなんて、すごいですね」
おいおい、いきなり探るようなことを言うなって。
リリルの発言にドキドキしつつヴィリエルの返事を待っていると、意外なことにあっさりと答えてくれた。
「そっか。まだ私の職業を言ってなかったわね。私は職業ランクURの剣聖よ」
「「……URの剣聖!?」」
――ガサガサッ!
俺とリリルが同時に驚きの声をあげると、その声を聞いて魔獣が飛び出してきた。
「あちゃー。すまない、ヴィリエル」
「いいのよ。それに、狩っとかないと後々面倒だしね」
笑いながらそう口にしたヴィリエルは、背負っていた自らの身長ほどの刀身を有する大剣を、なんと片手で抜き放った。
「せっかくだし、二人に私の実力を見ておいてもらおうかな。まあ、ブラックウルフ程度だと一瞬で終わっちゃうけど――ね!」
言い終わるのと同時に駆け出したヴィリエル。
先ほどまで立っていた場所の地面が陥没し、ヴィリエル自身は一瞬でブラックウルフを間合いに捉えている。そして――
「はあっ!」
『キャウンッ!』
振り抜かれた大剣はブラックウルフだけではなく地面をも穿ち、その剣圧で少し先まで亀裂が走った。
振り抜く速度も尋常ではないが、あれだけの大剣を軽々と持ちながら、一瞬で間合いに飛び込むことのできる速度を出せるのもまた尋常ではない。
「これが、UR」
「これが、剣聖」
「ガウ、ガウガウ」
三者三様の意見が出たところで、ヴィリエルが笑みを浮かべながら戻ってくる。
「まあ、ざっとこんなもんね」
「なあ、ヴィリエル。今回の調査に、俺たちって必要なのか?」
「スレイの言う通りね。一人でも十分だったんじゃないの?」
ヴィリエルの実力ならそう簡単に負けるようなこともなさそうだし、そもそもURなら魔界でも十分活動できるはずだ。
境の調査には打ってつけの人材だろうに、俺たちがいたらむしろ邪魔になるんじゃないだろうか。
「境は広大だから一人じゃ無理ね。だからといって弱い奴で数を揃えると被害が大きくなるから、実力がある人を集めないといけないのよ」
「……これでも冒険者ランクはFなんだが?」
「SRの魔剣士が何を言ってるのよ! さあ、次に魔獣が現れたら二人が戦って見せてよね!」
勝手にそう決めてしまったヴィリエルが歩き出す。
俺はリリルと目を合わせて嘆息しつつ、ヴィリエルを敵に回すと本当に厄介だなと思いながら足を進めるのだった。
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