最弱職と村を追い出されましたが、突然勇者の能力が上書きされたのでスローライフを始めます

渡琉兎

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第一章:勇者誕生?

それはさすがに想定外です

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 ◆◆◆◆

 さて、二人と一匹が出発してから二週間が経過した。
 ……本当についていきやがったよ、ツヴァイルめ!

「これくらいでいいかな」

 魔族のRを連れてくると言っていたが、多くてもロットさんたちを連れてきた時と同じくらいの人数だろう。
 元々建てた家も二軒余っていたし、追加で建てた二軒があれば問題はないはずだ。

「……ほ、本当に、できてしまったんですね」

 新しく建てられた家を眺めながら、ロットさんがそんな声を漏らしている。
 まあ、普通は建築スキルがあっても数日で家を建てるなんてできるわけないもんな。
 勇者の体力に、魔法があってこそできる荒業だ。

「さて、ロットさんたちの時は二週間くらいで戻ってきたんだけど、今回はどうだろうなぁ」

 そんなことを話していると、遠くの方から聞き慣れた声が響いてきた。

「おーい! スウェイーン!」
「戻りましたよー!」
「ガウガウーンッ!」
「おっ! 噂をすれば……って、ええええええええぇぇぇぇっ!?」

 いやいや、待て待て! それはさすがに、予想外なんですが!?

「……お、大きい、ですね。スウェインさん」
「……家、建て直さなきゃ」

 やって来たのは、一つ目巨人のサイクロプスさんご家族でした。

「……あ、あど、おいらたち、本当に、ここで暮らしていいだか?」

 驚いている俺に話し掛けてくれたのは、おそらく父親のサイクロプスさんだろう。

「えっと、リリル? 説明はどこまで終わっているんだ?」
「ロットさんたちにした説明は全て終わらせているわ。スウェインが勇者だってこともね」

 それを聞いてなお、移住したいと思って来てくれたのか。
 父親と並んでいるのがおそらく母親で、その後ろには三人のサイクロプスさんが隠れるようにして顔を覗かせている。

「……あれ? もう一組、いるのか?」
「お初にお目に掛かります。私は十字魔会で牧師を務めておりました。種族はインプでございます」

 インプさんご家族はサイクロプスさんとは真逆で小さい。
 父親だろう話し掛けてきたインプさんでも俺の胸くらいまでしか身長がないのだ。
 こちらは両親と子供が一人。子供に至っては俺の腰くらいの高さしかないな。

「私どもも移住を希望しているのですが、いかがでしょうか?」

 両種族の父親からジーっと見られている。
 いや、ここまで来てもらって断るとかできないでしょうに。

「も、もちろん受け入れますが、実を言うとサイクロプスさんとインプさんの身長に合った家がないんです。すぐに建てたいと思いますが、しばらくは不自由をさせるかもしれません。それでもいいですか?」

 俺の言葉に、何故か二人ともとても驚いた顔をしていた。
 いやいや、一応、俺がこの集落の代表ってことになってるから、家くらいは準備しないとダメだと思うんだけど。

「……う……うぅぅっ!」
「ど、どうしたんですか、サイクロプスさん!」
「……あぁ、邪神よ! 我々は、生きていけるようです!」
「いや、祈る神が邪神って!」

 色々とツッコミたいこともあるが、ロットさん以外の住民たちが集まってきたので紹介をすることにした。

「えーっと、皆さん! こちらが新しく住民となります、サイクロプスさんご家族と、インプさんご家族です! 自己紹介は後ほどとして、これから仲良くしていきましょう!」

 最初はお互いに緊張していたのだが、怖さを知らない子供たちがインプさんご家族の子供をジーっと見ていると、目が合ったのかニコリと笑った。
 それを見たインプさんの子供もニコリと笑い、サイクロプスさんの子供たちも前に出てきた。

「あど、ぼくたちもこどもなんだ」
「そうなんだ! おおきいね、いいなー」
「みんなであそぼうよ!」
「おとうさま、いってきてもいいですか?」

 おいおい、インプさんの子供はとても大人みたいだが、それでいいのかよ。

「構わないよ。みんなで遊んできなさい」
「怪我だけはさせんでくでよなー。お前たちは体が大きいで」
「「「「「「はーい!」」」」」」
「リリルは子供たちの引率を頼めるかな?」
「分かったわ」

 リリルは子供たちを連れて拓けた場所へと移動した。
 うん、あそこなら他の大人からも見える位置だし、問題はないだろう。
 俺は俺でやるべきことがある。まずは雨風をしのげる場所が必要だ。特に、サイクロプスさんの。

「インプさんご家族は、不便だと思いますがしばらくは今ある家で生活をお願いします。サイクロプスさんご家族は、大至急で大きさに合った家を建てますので」
「……あど、おいらたちも手伝うでよ。力仕事なら、役に立つで」
「助かります! それじゃあ、行きましょうか!」

 ルリエにはインプさんご家族を家に案内するように伝え、俺はサイクロプスさん夫婦と一緒に森の中へ移動する。
 ……うん。やっぱり、こんなスローライフもいいもんだな!

 第一章 終わり
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