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第一章:役立たずから英雄へ
6.神木ユーグリッシュ
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とても広大な中庭の中央には、雄々しく根を張り、太く逞しい幹が天高くまで伸びている。
だからこそ力強いのかと思いきや、幹の色は純白と言っていいほどの透明感を持ち、そこから放たれる光が幹の美しさを際立たせている。
こちらからは見えないが枝葉からもこの光が放たれ、大地に降り注いでいるに違いない。
「……こ、これが……神木、ユーグリッシュ」
「はい」
「とても、美しいですね」
「そう、ですね……」
僕の問い掛けに答えてくれたのだが、その声には力がないように聞こえた。
振り返り見てみると、やはり浮かない表情を浮かべている。
「……神木は、これでも枯れ始めているのですか?」
「……はい。昔はこれ以上に光り輝いていました。幹の白さだって」
「えっ! 今でも十分に透明感のある純白だと思いますけど?」
正直な感想だ。僕は現状の神木を見て、純白に近い透明感のある幹だと感じたのだから。
「……リッツ様は純白と言ってくれましたが、その後の透明感というのが本来の姿なのです」
「透明感が本来の姿、ですか?」
「はい。本来のユーグリッシュは、幹の全てが半透明の姿をしているのですから」
「えっ!」
全てが半透明って、そんな事ってあるのか?
……まあ、神木っていう未知の存在だし、僕の知識なんて世界の理からするとほんの一部に過ぎないのだから、あり得ないなんて言ってはいられないよね。
「枝葉も半透明だと聞いた事もありますが、ここからでは見えないのでわかりませんが。……でも、見える範囲が全て純白になってしまっている時点で、枯れ始めている証拠なのです」
「その情報はどこから?」
「文献から。徐々に白く色づき始めたあたりから必死になって調べて、ようやくわかったのが一年前です。その時に【緑魔法】についても知る事ができました」
「神木の衰退と【緑魔法】が一緒になって記されていたのであれば、可能性は高いですね」
「貴様! 姫様の言葉が信じられないのか!」
「キリシェ!」
「はっ! も、申し訳ありません、姫様!」
……謝ってくれているんだけど、こっちを睨むのは止めてくれないだろうか。
「その文献にはこうも書いてありました。神木を有する国は毎年のように豊作となる。しかし、枯れてしまえばその恩恵は消えてしまい、神木は失われる。と」
「失われるって……それは消滅するって事ですか?」
「おそらく。それに、すでに作物へ影響が出始めているのです。収穫量が大きく減少しています。すぐに飢える事はありませんが、もし神木が枯れてしまった後の事を考えると……」
神木を復活させるために文献を漁ったが、枯れてしまった時の影響力にまで気づかされてしまっては焦らずにはいられなかっただろう。
「……わかりました、やってみます」
「本当ですか、リッツ様!」
「はい。ですが、上手くいくかはわかりません。僕も【緑魔法】についてはわからないことだらけなので、あまり期待はしないでくださいね」
苦笑いを浮かべながら、僕は綺麗に手入れされた芝生を踏みしめて中庭を進む。
遠目からでも雄々しく見えた神木は、近づくにつれてその迫力は増していく。
それ以上に僕が驚いたのは、その神々しさだ。
これは見た目どうこうで説明できるものではなく、心の奥底に響くものがあり、抗えないものがある。
『――……けて』
「えっ?」
誰かの声が聞こえたように思えて周囲に視線を送り、その後に振り返る。
だが、ニーナ様もキリシェ様も僕と目が合うと困惑した様子を見せた。
『――……ねが……けて』
「……これは、まさか?」
前を向いた僕は、もう一度神木に目を向けてゆっくりと見上げる。
「……神木の声、なのか?」
あり得ない……とは、もう言えないか。
部屋に閉じ込められて過ごした15年間など、知識を得るには全く足りない質と時間だっただろう。
僕はこれから、今日この日から、変わる事ができるのだろうか。……神木を助ける事ができたら、何かが変わるだろうか。
「……僕の魔力で助けられるなら、全てを貰ってくれても構わない。だから、元気になってくれ!」
ゆっくりと、それでもしっかりとその手で神木の幹に触れて、僕は魔力を注ぎ込んでいく。
「――うおっ!?」
こ、これは、思っていた以上に、きついなぁ。
魔力を持っていかれる感覚って、こんなにも脱力感が、あるものなんだなぁ。
意識が吹っ飛びそうになる。……だけど、だけどなぁ。
「……まだ、だよね」
すでに半分以上の魔力が持っていかれたが、それでも神木を復活させるには足りないのだとわかってしまう。
神木と繋がっているから、わかる事なのだろう。
それだけ、神木の魔力が枯渇に近づいていた、という事だ。
僕の魔力で事足りるとは到底思えないが、【緑魔法】が、僕のスキルが何かの役に立つのであれば、この魔力――
「全部持っていけええええええええ――!」
声を張り上げたのと同時に、僕はそのまま意識を失った。
だからこそ力強いのかと思いきや、幹の色は純白と言っていいほどの透明感を持ち、そこから放たれる光が幹の美しさを際立たせている。
こちらからは見えないが枝葉からもこの光が放たれ、大地に降り注いでいるに違いない。
「……こ、これが……神木、ユーグリッシュ」
「はい」
「とても、美しいですね」
「そう、ですね……」
僕の問い掛けに答えてくれたのだが、その声には力がないように聞こえた。
振り返り見てみると、やはり浮かない表情を浮かべている。
「……神木は、これでも枯れ始めているのですか?」
「……はい。昔はこれ以上に光り輝いていました。幹の白さだって」
「えっ! 今でも十分に透明感のある純白だと思いますけど?」
正直な感想だ。僕は現状の神木を見て、純白に近い透明感のある幹だと感じたのだから。
「……リッツ様は純白と言ってくれましたが、その後の透明感というのが本来の姿なのです」
「透明感が本来の姿、ですか?」
「はい。本来のユーグリッシュは、幹の全てが半透明の姿をしているのですから」
「えっ!」
全てが半透明って、そんな事ってあるのか?
……まあ、神木っていう未知の存在だし、僕の知識なんて世界の理からするとほんの一部に過ぎないのだから、あり得ないなんて言ってはいられないよね。
「枝葉も半透明だと聞いた事もありますが、ここからでは見えないのでわかりませんが。……でも、見える範囲が全て純白になってしまっている時点で、枯れ始めている証拠なのです」
「その情報はどこから?」
「文献から。徐々に白く色づき始めたあたりから必死になって調べて、ようやくわかったのが一年前です。その時に【緑魔法】についても知る事ができました」
「神木の衰退と【緑魔法】が一緒になって記されていたのであれば、可能性は高いですね」
「貴様! 姫様の言葉が信じられないのか!」
「キリシェ!」
「はっ! も、申し訳ありません、姫様!」
……謝ってくれているんだけど、こっちを睨むのは止めてくれないだろうか。
「その文献にはこうも書いてありました。神木を有する国は毎年のように豊作となる。しかし、枯れてしまえばその恩恵は消えてしまい、神木は失われる。と」
「失われるって……それは消滅するって事ですか?」
「おそらく。それに、すでに作物へ影響が出始めているのです。収穫量が大きく減少しています。すぐに飢える事はありませんが、もし神木が枯れてしまった後の事を考えると……」
神木を復活させるために文献を漁ったが、枯れてしまった時の影響力にまで気づかされてしまっては焦らずにはいられなかっただろう。
「……わかりました、やってみます」
「本当ですか、リッツ様!」
「はい。ですが、上手くいくかはわかりません。僕も【緑魔法】についてはわからないことだらけなので、あまり期待はしないでくださいね」
苦笑いを浮かべながら、僕は綺麗に手入れされた芝生を踏みしめて中庭を進む。
遠目からでも雄々しく見えた神木は、近づくにつれてその迫力は増していく。
それ以上に僕が驚いたのは、その神々しさだ。
これは見た目どうこうで説明できるものではなく、心の奥底に響くものがあり、抗えないものがある。
『――……けて』
「えっ?」
誰かの声が聞こえたように思えて周囲に視線を送り、その後に振り返る。
だが、ニーナ様もキリシェ様も僕と目が合うと困惑した様子を見せた。
『――……ねが……けて』
「……これは、まさか?」
前を向いた僕は、もう一度神木に目を向けてゆっくりと見上げる。
「……神木の声、なのか?」
あり得ない……とは、もう言えないか。
部屋に閉じ込められて過ごした15年間など、知識を得るには全く足りない質と時間だっただろう。
僕はこれから、今日この日から、変わる事ができるのだろうか。……神木を助ける事ができたら、何かが変わるだろうか。
「……僕の魔力で助けられるなら、全てを貰ってくれても構わない。だから、元気になってくれ!」
ゆっくりと、それでもしっかりとその手で神木の幹に触れて、僕は魔力を注ぎ込んでいく。
「――うおっ!?」
こ、これは、思っていた以上に、きついなぁ。
魔力を持っていかれる感覚って、こんなにも脱力感が、あるものなんだなぁ。
意識が吹っ飛びそうになる。……だけど、だけどなぁ。
「……まだ、だよね」
すでに半分以上の魔力が持っていかれたが、それでも神木を復活させるには足りないのだとわかってしまう。
神木と繋がっているから、わかる事なのだろう。
それだけ、神木の魔力が枯渇に近づいていた、という事だ。
僕の魔力で事足りるとは到底思えないが、【緑魔法】が、僕のスキルが何かの役に立つのであれば、この魔力――
「全部持っていけええええええええ――!」
声を張り上げたのと同時に、僕はそのまま意識を失った。
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