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第一章:役立たずから英雄へ
5.護衛騎士
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廊下を進みながら、僕はニーナ様に【緑魔法】について聞いてみた。
「あ、あの、ニーナ様。僕のスキルは、そんなに貴重なものなんですか?」
「はい! 色を冠したスキルと言うのは唯一無二と言われており、等級だって特級スキル……いいえ、それ以上かもしれません。使い方によっては国を一つ滅ぼす事もできると言われているんですよ!」
「く、国を一つ!?」
それが本当なのかどうかは僕にはわからない。
しかし、もし本当であるなら、そんな恐ろしいスキルについての文献がどうしてアルスラーダ帝国にはなかったのだろうか。
そして、どうしてライブラッド王国にはあったのだろうか。
「色を冠するスキルについて、ニーナ様はどれだけ知っているのですか?」
「正直、私もほとんどわかりません。元々は神木を復活させるために調べていた文献に【緑魔法】について記されていただけですから」
という事は、色を冠するスキルについて詳しく記された文献と言うのはライブラッド王国にもないという事かもしれない。
「それでは、神木を復活させるために、僕は【緑魔法】で何をしたらいいんでしょうか?」
正直なところ、僕にできる事というのはとても少ない。
植物の成長に影響を与えるくらいで、思いつく事といえば成長させる程度だろうか。
「神木に魔力を与えるだけで大丈夫です」
「……えっ? それだけですか? 何か特別な事とか必要ないんですか?」
「ありませんよ?」
……うん、完全に予想外だ。
でも、特別な事がないなら僕にも役に立てることがあるかもしれない。
「【緑魔法】は植物の成長に影響を与える事ができると先ほど仰っていましたが、それが重要なのです」
「そうなんですか?」
「はい。そもそも、植物の成長に影響を与える事ができるスキルというのが規格外なのです。そのようなスキルは【緑魔法】以外にあり得ないのですよ」
……それもそうか。
植物の成長に影響を与えるという事がどれほど凄い事なのか、父上たちは気づかなかったのだろうか。
いや、気づいていても重要性が低いと考えたのかもしれない。神木と言った特別な物がない限り、農業が盛んな国では特に必要とはしないスキルだろうしな。
ただ、飢餓に苦しんでいる国からすると喉から手が出るほどに欲しいスキル、人材になるんだろうけど。
「姫様!」
そんな事を考えていると、通りの先からニーナ様を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あっ! キリシェ!」
「貴様! 何者だ!」
「うえぇっ!?」
キリシェと呼ばれた女性騎士は、僕を睨みつけると声をあげ、抜剣してきた。
「ちょっとキリシェ! 彼は私の大事な客人ですよ!」
「ですが姫様! こ奴、姫様の手を!」
「これは私が引っ張ってきたんです!」
「……な、なんですと?」
ま、まあ、冷静に見ていただけるとわかると思いますよ? ニーナ様の手が、僕の腕を掴んでいる姿が。
しばらく僕を睨みつけていたキリシェ様だが、ニーナ様の怒りを買いたくないのかすぐに剣を鞘に納めてくれた。
「……わかりました。失礼いたしました」
「い、いえ。とても良い騎士が仕えているのですね、ニーナ様」
「――!」
「はい! キリシェは私が小さな頃から仕えてくれていて、姉のように慕っているのです」
「ひ、姫様! この場でそのような事を言ってはいけません!」
何やら恥ずかしそうにしているが、それは当然かもしれない。おそらくキリシェ様はニーナ様の護衛騎士なのだろう。
護衛騎士でありながら、護衛対象から姉として慕われているというのは、立場的に問題が生じるという事だ。
ニーナ様から見れば些細な事かもしれないが、部下であるキリシェ様から見れば問題でしかないという事かな。
「……ま、まあ、私も貴様の事を客人として扱いましょう」
いや、貴様って言っている時点でダメな気がするんですが。
「キリシェ?」
「……それと、先ほどは失礼いたしました。私は、姫様に護衛騎士として仕えております、キリシェ・アールネスと言います」
「リッツ・アルスラーダです」
「……アルスラーダ、だと?」
「キーリーシェー?」
名前を聞いた途端、弛緩していた緊張感が一気に張り詰め、キリシェ様は再び剣の柄に手を伸ばす。
だが、先んじてニーナ様が声を掛けると、渋々といった感じで右手を下ろした。
「全く、キリシェは焦り過ぎなのです」
「も、申し訳ございません、姫様」
「あ、あは、あはは……はぁ」
とりあえず、僕への警戒を一旦は解いてくれたみたいで安心したかな。
そして、僕たちはそのまま三人で中庭へと向かった。
そこで目にした光景は、僕が今まで見てきたものの中で一番の美しさを放っていたんだ。
「あ、あの、ニーナ様。僕のスキルは、そんなに貴重なものなんですか?」
「はい! 色を冠したスキルと言うのは唯一無二と言われており、等級だって特級スキル……いいえ、それ以上かもしれません。使い方によっては国を一つ滅ぼす事もできると言われているんですよ!」
「く、国を一つ!?」
それが本当なのかどうかは僕にはわからない。
しかし、もし本当であるなら、そんな恐ろしいスキルについての文献がどうしてアルスラーダ帝国にはなかったのだろうか。
そして、どうしてライブラッド王国にはあったのだろうか。
「色を冠するスキルについて、ニーナ様はどれだけ知っているのですか?」
「正直、私もほとんどわかりません。元々は神木を復活させるために調べていた文献に【緑魔法】について記されていただけですから」
という事は、色を冠するスキルについて詳しく記された文献と言うのはライブラッド王国にもないという事かもしれない。
「それでは、神木を復活させるために、僕は【緑魔法】で何をしたらいいんでしょうか?」
正直なところ、僕にできる事というのはとても少ない。
植物の成長に影響を与えるくらいで、思いつく事といえば成長させる程度だろうか。
「神木に魔力を与えるだけで大丈夫です」
「……えっ? それだけですか? 何か特別な事とか必要ないんですか?」
「ありませんよ?」
……うん、完全に予想外だ。
でも、特別な事がないなら僕にも役に立てることがあるかもしれない。
「【緑魔法】は植物の成長に影響を与える事ができると先ほど仰っていましたが、それが重要なのです」
「そうなんですか?」
「はい。そもそも、植物の成長に影響を与える事ができるスキルというのが規格外なのです。そのようなスキルは【緑魔法】以外にあり得ないのですよ」
……それもそうか。
植物の成長に影響を与えるという事がどれほど凄い事なのか、父上たちは気づかなかったのだろうか。
いや、気づいていても重要性が低いと考えたのかもしれない。神木と言った特別な物がない限り、農業が盛んな国では特に必要とはしないスキルだろうしな。
ただ、飢餓に苦しんでいる国からすると喉から手が出るほどに欲しいスキル、人材になるんだろうけど。
「姫様!」
そんな事を考えていると、通りの先からニーナ様を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あっ! キリシェ!」
「貴様! 何者だ!」
「うえぇっ!?」
キリシェと呼ばれた女性騎士は、僕を睨みつけると声をあげ、抜剣してきた。
「ちょっとキリシェ! 彼は私の大事な客人ですよ!」
「ですが姫様! こ奴、姫様の手を!」
「これは私が引っ張ってきたんです!」
「……な、なんですと?」
ま、まあ、冷静に見ていただけるとわかると思いますよ? ニーナ様の手が、僕の腕を掴んでいる姿が。
しばらく僕を睨みつけていたキリシェ様だが、ニーナ様の怒りを買いたくないのかすぐに剣を鞘に納めてくれた。
「……わかりました。失礼いたしました」
「い、いえ。とても良い騎士が仕えているのですね、ニーナ様」
「――!」
「はい! キリシェは私が小さな頃から仕えてくれていて、姉のように慕っているのです」
「ひ、姫様! この場でそのような事を言ってはいけません!」
何やら恥ずかしそうにしているが、それは当然かもしれない。おそらくキリシェ様はニーナ様の護衛騎士なのだろう。
護衛騎士でありながら、護衛対象から姉として慕われているというのは、立場的に問題が生じるという事だ。
ニーナ様から見れば些細な事かもしれないが、部下であるキリシェ様から見れば問題でしかないという事かな。
「……ま、まあ、私も貴様の事を客人として扱いましょう」
いや、貴様って言っている時点でダメな気がするんですが。
「キリシェ?」
「……それと、先ほどは失礼いたしました。私は、姫様に護衛騎士として仕えております、キリシェ・アールネスと言います」
「リッツ・アルスラーダです」
「……アルスラーダ、だと?」
「キーリーシェー?」
名前を聞いた途端、弛緩していた緊張感が一気に張り詰め、キリシェ様は再び剣の柄に手を伸ばす。
だが、先んじてニーナ様が声を掛けると、渋々といった感じで右手を下ろした。
「全く、キリシェは焦り過ぎなのです」
「も、申し訳ございません、姫様」
「あ、あは、あはは……はぁ」
とりあえず、僕への警戒を一旦は解いてくれたみたいで安心したかな。
そして、僕たちはそのまま三人で中庭へと向かった。
そこで目にした光景は、僕が今まで見てきたものの中で一番の美しさを放っていたんだ。
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