役立たずだと見捨てられたら、敵国で英雄扱いされました! ~謎スキル緑魔法で成り上がります~

渡琉兎

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第一章:役立たずから英雄へ

30.作戦会議②

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 母上は微笑みを絶やす事なく、二人の視線に言葉で返した。

「リッツの言う通りです。私は特級スキル【精霊魔法】を授かっています。なので、特級のゼス大隊長と一級のレイ大隊長が組んでも問題はないかと思いますよ?」
「……そう、ですか。わかりました。では、そのように配置しましょう。それと、バルニシア辺境伯」
「はい」
「ライブラッド王国軍とバルザーリ軍を連合軍とし、その総指揮をあなたにお任せしてもいいでしょうか?」

 この申し出にはコリーヌさんも驚きを隠せずにいる。
 それもそのはずで、この戦争はライブラッド王国とアルスラーダ帝国によるものだ。
 その総指揮を他国の者にお願いするというのは、外聞が良いとは言えないはず。

「確かにその方が効率は良いかと思いますが……本当によろしいのですか?」
「はい。バルニシア辺境伯の特級スキル【軍神の加護】は、多くの兵を指揮する事でより高い力を発揮すると聞いています。懸念する通り、ライブラッド王国とアルスラーダ帝国の戦争で、他国の者に総指揮を任せるのはどうかと考える者もいると思いますが、私はこの戦争にどうしても勝ちたい。勝つためならば、外聞など気にしている余裕はないのです」
「そうだな、アーク兄上の言う通りだ。この戦争には、リッツの将来が懸かっているからな」
「……アーク兄上、イシス兄上」

 二人の覚悟は、僕のためだったのだと素直に嬉しく思ってしまった。

「……そこまで言ってくれたのですから、負けるわけにはいきませんね。コリーヌ・バルニシア、謹んで総指揮の任を承りました!」

 コリーヌさんが総指揮を執る事が決まると、そこからは細かな部隊配置の話へと移っていく。

「ゼス大隊長とレイ大隊長が同じ部隊だとして、残りはどうする?」
「俺は右翼だな。あそこにレンネルがいやがる」
「でしたら、私もイシス王子とご一緒しましょう」
「それはいいが……その理由を聞いてもいいか?」

 イシス兄上は鋭い視線を母上に向ける。

「レンネルの【炎帝の加護】は、イシス王子の【風帝の加護】とは相性が悪いのではないですか?」
「そうか? 炎を吹き飛ばせばいいだけの話だろ?」
「ただの炎ならそれもできるでしょうが、レンネルの炎は自在にその動きを変えてきます。風を受ける事によって広がった炎の全てがレンネルの支配下になってしまえば、多くの兵士が命を落とす事になりますよ?」
「イシス兄上。母上はアルスラーダ帝国の皇子たちの事をよく知っています。同行を許していただけませんか?」

 最初は睨み合うようにして意見を聞いていたイシス兄上だったが、僕が間に入ると何故か視線を逸らして頭を掻き出した。

「……ったく、リッツの頼みなら仕方ねえな」
「本当に愛されていますね、リッツは」
「あ、ありがとうございます、イシス兄上!」
「そうなると、僕は中央かな」

 僕たちのやり取りを聞きながら、アーク兄上が地図を見ながらそう呟いた。

「という事は、中央にはロベルトが?」
「そうだよ。というわけで、左翼の方はリッツに任せるからね」

 最後の言葉に僕の心臓はドクンと強く鳴った。
 その左翼には、レイリアがいる。
 僕の我儘を聞き入れてくれたアーク兄上の期待に応えなければならない。

「……でも、不思議な布陣ね」
「そうですか? 中央と左右、全てに皇族がいるのは普通では?」

 母上の言葉にそう問い返すアーク兄上。
 だが、よく考えれば確かにおかしな点はある。

「レンネルとロベルトはわかるのよ。だけれど、レイリアに一軍を預けるというのが、解せないわ」
「レイリア皇女のスキルは【癒しの加護】でしたね」
「その通りです、アーク王子。後方から支援に徹するのであれば有効なスキルですが、自らが前に出てくるのは少々おかしいのではないかと」
「左翼に俺たちが知らない特級スキル持ちがいるって事か?」
「その可能性はあるかもしれませんね。リッツ君、本当に一人で大丈夫なのかい?」

 最後はコリーヌさんが確認のために声を掛けてきた。
 僕の【緑魔法】が特級スキルだとしても、全てを使いこなせているとは言い難い。
 本当に特級スキル持ちが待ち構えていたとすれば、相当な危険を背負う事になるだろう。

「ならば、私とレイ大隊長が左翼に向かいましょう」
「その方がいいかもしれませんね」

 ゼス大隊長とレイ大隊長が助力を買って出てくれた。

「それに、アーク様とイシス様が中央と右翼に行かれるのであれば、自ずとそうなるかと思いますが?」
「まあ、そうなるか。よし、それでいこう」

 最終的にはコリーヌさんが決定を下し、左翼には頼れる二人の大隊長がついて来てくれる事になった。

「リッツ……」
「安心して、ニーナ。僕には神木ユーグリッシュ様に魔力を注ぐという役目を置いて、いなくなったりしないからさ」
「……約束、ですよ?」
「もちろんだよ」
「あの、リッツ殿。私もご一緒しましょうか? 少しはお力になれるかと」

 キリシェの申し出はありがたかったが、僕は首を横に振った。

「大丈夫。ありがとう、キリシェ。もし力を貸してくれるなら、アーク兄上を助けて欲しいんだ」
「ん? 僕かい?」

 アーク兄上が驚いたように顔を上げたので、僕はその理由を伝えた。

「ロベルトは多くの戦場を経験しています。年齢はアーク兄上の方が上ですが、経験だけを見ればロベルトの方が上かもしれません。万が一が起きてしまうと、僕は僕自身を許す事ができなくなります」
「私からもお願いできるかしら?」
「マリー殿もですか?」
「えぇ。リッツの言う通り、ロベルトの剣は同じ【剣帝の加護】を持つ者から見ても脅威に映るはず。【守護の加護】を持つキリシェ様となら、上手く戦えるはずです」

 アーク兄上、ニーナ、キリシェが顔を合わせているが、母上の言葉が決め手になったのだろう。

「わかったよ。キリシェ、今日この時だけは僕のために戦ってくれるかい?」
「はっ! アーク王子のため、この剣を振るいます!」
「キリシェ。アークお兄様の事を、よろしくお願いね」
「はっ! この命に懸けて!」

 こうして連合軍の配置が全て決まり、いよいよ本格的な開戦を待つ事になるのだった。
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