職業賢者、魔法はまだない ~サバイバルから始まる異世界生活~

渡琉兎

文字の大きさ
26 / 56
第1章:異世界転生

グランザリウスのあれこれ

しおりを挟む
 結局、残った5ポイントは次の機会に取っておくことにした。
 重力制御や空間収納など、スキルポイントが高いスキルほど便利だということがわかったからだ。
 ただし、しばらくはレベルアップの期待はできないとリリアーナに言われてしまったので、使う機会がいつになることやら。

 森を出てからの三日間、俺はとても楽しくゼルジュラーダまで向かうことができた。
 道中では本来の大きさである兎や豚も見つけたのだが、日本で見たことのある標準的な大きさだったので、やはりエルフの森が特別だったのだと改めて理解する。
 そして、重力制御スキルがとても便利だと実感することもできた。

「その効果、私には効かないのかしら!」

 リリアーナがそう口にするくらいだ。
 しかし、重力制御スキルは俺にしか作用しないらしい。
 スキルレベルが上がれば分からないが、今は関係のない話である。

 それにしても、上級冒険者であるリリアーナは身体能力が高く、俺の何倍もの力と速さを兼ね備えていた。
 ステータスを見せてもらったが、レベルも桁違いに高い。
 ……あと、チラリと見えた年齢は口にしない方がいいだろう。さすがはエルフと言ったところで、長命なのは本当のようだ。

 グランザリウスについても教えてもらった。
 俺はこの世界のことをグランザリウスと言うのかと思っていたのだが、どうやら国の名前がグランザリウスというらしい。
 そして、グランザリウスを治めているのがヴィルシュタット17世という王様なんだとか。

「王様が暮らす王都、ヴィルシュタインはここからずーっと北に行った先にあるから、私も行ったことがないのよね」
「そんなに遠いのか?」
「まず確実に歩いては行けないわね。馬で何十日も掛けて行くところよ」

 そんなところにまで足を運ぶ必要はないだろう。
 いや、もしグランザリウスを救うとなればいつかは行く機会もあるだろうか。
 ……まあ、今は気にする必要はないか。まずは今日を生きるべし!

「そして、これがお金よ」
「俺の世界ではお金のことを円って読んでたんだけど、こっちでは何て言うんだ?」
「ポルとリラよ」

 グランザリウスでは硬貨が1ポルから10ポル、100ポル、500ポル、1000ポルと高くなり、それ以上となるとポルからリラに変わる。
 1リラが10000ポルと同等となり、硬貨は1リラ、10リラ、100リラ、500リラ、1000リラとなる。

 冒険者の実入りは依頼によっても変わるのでなんとも言えないようだが、平均的な月の収入は20リラから30リラらしい。
 1ポルを1円で計算すると、20リラだと20万円ということになる。

「うーん、可もなく不可もなく」
「どういうこと?」
「いや、こっちの話だ。ちなみに、リリアーナはどれくらい稼いでいるんだ?」
「ふっふーん! 上級冒険者ともなれば、その二倍も三倍も稼げちゃうんだからね!」
「マジかよ。それって、100リラくらい稼いでるってことか?」
「ご想像にお任せしまーす」

 冒険者、夢がある職業だなぁ。

「でも、危険と隣り合わせの職業でもあるのよ? 今回みたいに魔族と戦うことも多いし、在中してる都市に危険が迫れば駆り出されるんだからね」
「拒否はできないの?」
「できないわ。もし召集を断れば、ギルドからそれなりのペナルティが課せられるのよ」

 そのペナルティだが、ランクが下がってしまったり、ギルドカードを没収されて一定期間の活動休止、最悪の場合は資格剥奪なんてこともあるというから驚きだ。

「命を懸けるんだから、少しくらいは融通してくれてもいいのにな」
「冒険者は都市から都市へ移動するのがほとんどだもの。その全てを融通するなんてできないし、そもそもしない。融通するなら、都市に根差している住民が優先されるべきだもの」

 優先されるべき、とリリアーナは言い切った。
 ということは、グランザリウスでの冒険者は今の立場を受け入れているということだろう。
 ならば転生者である俺があれこれ言う必要もなく、そういうものなのだと理解することにした。

「それと、冒険者になるならその仕組みも教えておくわね」

 新人は当然ながら下級冒険者、ではなく新人冒険者として始まる。
 そして、昇級に値する活躍をした時にギルドが査定を行い、認められたものがようやく下級冒険者となる。

「新人から下級には比較的楽に上がれるから安心しなさい。それに、アマカワは私とパーティを組むんだから、さらに楽勝よ!」
「だといいんだけどな。下級から昇級するのも似たようなものなのか?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるかな。そこは冒険者ギルドでちゃんとした説明を受けた方がいいかな」

 ふむ、どうやら複雑らしい。

 とりあえず、今必要な知識は得られた。
 あとはゼルジュラーダの冒険者ギルドで登録をするだけだ。
 魔法は使えないけど、なんとかなるだろう!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...