45 / 56
第1章:異世界転生
ドラゴン③
しおりを挟む
これは、死んだわ。
そう思った直後、俺の周囲に光の膜がドーム型で顕現した。
光の膜はブレスを遮り、膜の外だけを消し炭に変えてしまう。
しばらく続いたブレスだったが、徐々に勢いを落としていき最終的には息切れを起こした。
……っていうか、この膜はなんだったんだ? 光みたいだけど……光って、まさか!
「リリアーナ!」
「……なんとか、間に合ったわね」
リリアーナは俺に右手を向けている。
この光の膜は、リリアーナの魔法だ。結界といえばいいだろうか、これがなかったら確実に俺は死んでいただろう。だが、今の状態で魔法を行使したとなれば――
「かはっ!」
やっぱり、魔法行使の負担が体を蝕んでいやがる!
「お前、何をやってるんだよ!」
「……どっちにしても、ドラゴンを倒せなかったら、私も死んじゃうんだもの。これくらいの無茶は、想定内だよ」
苦しいだろうに、無理やり笑みを浮かべてくれるリリアーナには何も言えないよ。
……これは、勝てるかもではいけないな。絶対に、勝たなければならない!
「残るスキルポイント4……これを、戦闘に特化したスキル習得に使う」
すでに目星を付けている。
俺はいつの間にかに現れていたナイフ術の発展スキル――ポイントを全て使うことになるが、ナイフ術・中スキルを習得した。
「さて、何が変わるのかは実戦で試してみるか」
立ち上がった俺はドラゴンを見据える。
ナイフの質によって補正値が変わるナイフ術だが、上位互換と思われるナイフ術・中ともなればその補正にさらなる補正が加わると俺は読んでいる。
そうでなくてもステータスが上がることに変わりはないはずだが。
「とりあえず行くか――どわあっ!」
そして走り出そうと力一杯に一歩を踏み出したのだが、瞬歩スキルを使っていないにもかかわらず一瞬でドラゴンの懐に潜り込むことができた。
『——ゴワッ!?』
「これは、ヤバいだろう!」
驚きながらも俺はナイフを振り抜く。
今までも鱗を斬り裂いて肉を断つことはできていたが、これもナイフ術・中の効果なのだろうか。
刀身の長さよりもさらに深く肉を断っている。
『ゴガアアアアアアァァッ!』
「まだまだああああぁぁっ!」
脚力が上がったということは、膂力だって上がっている。
ナイフを振る速度もさらに加速してドラゴンをめった切りにしていく。
反撃する隙を与えることもなく、地面はドラゴンの血で赤黒く染まっていくが、まだまだ止まらない。
「ドラゴンの生命力、高過ぎだろうがああああああぁぁっ!」
さすがに疲れてきたが、まだ止められない。
こいつが無力化されるまでは絶対にな!
『ゴゴゴ……ゴガアアアアアアァァッ!』
「なあっ! こいつ、自滅覚悟のブレスかよ!」
現状、今の俺にはブレスを防ぐ手段は皆無。
それでも対処のしようはある――ブレスを吐き出させなければいいのだ。
「重力制御!」
『ゴグガガガガッ!?』
うおっ! ……こ、これは、きついなあっ!
ドラゴンに密着していたために俺は重力二倍の範囲内に立っている。
これならいくらドラゴンであっても身動きできなくなるのは分かるが、それは本人が巨体だからだ。
俺もきつくはあるが、ナイフ術・中の補正があれば動けないわけではない!
「こ、こなくそおおおおおおぉぉっ!」
肉体に鞭打ち何とか重力二倍の範囲外へと移動した。
俺はドラゴンから離れるのを急いでいた。というのも、ドラゴンのブレスが関係していたのだ。
『ゴギャギャ、ギャギャアアアアアアッ!』
吐き出そうとしていたブレスがドラゴンの口内で暴走、そして――
――ドゴオオオオオオオオンッ!
内側から大爆発を起こした。
ドラゴンを中心に大きなクレーターが作られ、衝撃波が周囲を襲い近くの大木がなぎ倒されていく。
俺はというとリリアーナの近くに着地して衝撃波や飛んでくる石や木々からリリアーナを守っている。
「…………風は、止んだか?」
「…………そ、そうみたいね」
俺はリリアーナから腕をほどき振り返る。
すると、クレーターの中心で動かなくなったドラゴンが横たわっていた。
「……勝った、のか?」
「……そうみたいね」
「立って大丈夫なのか?」
「アマカワのおかげで、だいぶ横になっていたからね。それよりも……」
口を閉ざしてドラゴンへと視線を向けるリリアーナ。
正直、倒せたのはギリギリだ。ナイフ術・中を習得できなければ、倒れていたのはドラゴンではなく俺たちだっただろう。
……マジでスキルポイントを残していてよかったわ。
『……て』
「ん? 何か言ったか、リリアーナ?」
「何も言ってないけど?」
……気のせいか?
『……けて』
「いや、気のせいじゃない。この辺りに誰かいる!」
「で、でも、さっきの爆発でこれだけ荒れているのよ、他の冒険者がいるわけないわ!」
普通ならそう考えるはずだが、俺には確かに聞こえたんだ。
『たす、けて』
「……ちょっと待て。まさか、このドラゴンかあ!?」
俺はドラゴンに顔を向けると、確かに目と目が合った気がした。
そう思った直後、俺の周囲に光の膜がドーム型で顕現した。
光の膜はブレスを遮り、膜の外だけを消し炭に変えてしまう。
しばらく続いたブレスだったが、徐々に勢いを落としていき最終的には息切れを起こした。
……っていうか、この膜はなんだったんだ? 光みたいだけど……光って、まさか!
「リリアーナ!」
「……なんとか、間に合ったわね」
リリアーナは俺に右手を向けている。
この光の膜は、リリアーナの魔法だ。結界といえばいいだろうか、これがなかったら確実に俺は死んでいただろう。だが、今の状態で魔法を行使したとなれば――
「かはっ!」
やっぱり、魔法行使の負担が体を蝕んでいやがる!
「お前、何をやってるんだよ!」
「……どっちにしても、ドラゴンを倒せなかったら、私も死んじゃうんだもの。これくらいの無茶は、想定内だよ」
苦しいだろうに、無理やり笑みを浮かべてくれるリリアーナには何も言えないよ。
……これは、勝てるかもではいけないな。絶対に、勝たなければならない!
「残るスキルポイント4……これを、戦闘に特化したスキル習得に使う」
すでに目星を付けている。
俺はいつの間にかに現れていたナイフ術の発展スキル――ポイントを全て使うことになるが、ナイフ術・中スキルを習得した。
「さて、何が変わるのかは実戦で試してみるか」
立ち上がった俺はドラゴンを見据える。
ナイフの質によって補正値が変わるナイフ術だが、上位互換と思われるナイフ術・中ともなればその補正にさらなる補正が加わると俺は読んでいる。
そうでなくてもステータスが上がることに変わりはないはずだが。
「とりあえず行くか――どわあっ!」
そして走り出そうと力一杯に一歩を踏み出したのだが、瞬歩スキルを使っていないにもかかわらず一瞬でドラゴンの懐に潜り込むことができた。
『——ゴワッ!?』
「これは、ヤバいだろう!」
驚きながらも俺はナイフを振り抜く。
今までも鱗を斬り裂いて肉を断つことはできていたが、これもナイフ術・中の効果なのだろうか。
刀身の長さよりもさらに深く肉を断っている。
『ゴガアアアアアアァァッ!』
「まだまだああああぁぁっ!」
脚力が上がったということは、膂力だって上がっている。
ナイフを振る速度もさらに加速してドラゴンをめった切りにしていく。
反撃する隙を与えることもなく、地面はドラゴンの血で赤黒く染まっていくが、まだまだ止まらない。
「ドラゴンの生命力、高過ぎだろうがああああああぁぁっ!」
さすがに疲れてきたが、まだ止められない。
こいつが無力化されるまでは絶対にな!
『ゴゴゴ……ゴガアアアアアアァァッ!』
「なあっ! こいつ、自滅覚悟のブレスかよ!」
現状、今の俺にはブレスを防ぐ手段は皆無。
それでも対処のしようはある――ブレスを吐き出させなければいいのだ。
「重力制御!」
『ゴグガガガガッ!?』
うおっ! ……こ、これは、きついなあっ!
ドラゴンに密着していたために俺は重力二倍の範囲内に立っている。
これならいくらドラゴンであっても身動きできなくなるのは分かるが、それは本人が巨体だからだ。
俺もきつくはあるが、ナイフ術・中の補正があれば動けないわけではない!
「こ、こなくそおおおおおおぉぉっ!」
肉体に鞭打ち何とか重力二倍の範囲外へと移動した。
俺はドラゴンから離れるのを急いでいた。というのも、ドラゴンのブレスが関係していたのだ。
『ゴギャギャ、ギャギャアアアアアアッ!』
吐き出そうとしていたブレスがドラゴンの口内で暴走、そして――
――ドゴオオオオオオオオンッ!
内側から大爆発を起こした。
ドラゴンを中心に大きなクレーターが作られ、衝撃波が周囲を襲い近くの大木がなぎ倒されていく。
俺はというとリリアーナの近くに着地して衝撃波や飛んでくる石や木々からリリアーナを守っている。
「…………風は、止んだか?」
「…………そ、そうみたいね」
俺はリリアーナから腕をほどき振り返る。
すると、クレーターの中心で動かなくなったドラゴンが横たわっていた。
「……勝った、のか?」
「……そうみたいね」
「立って大丈夫なのか?」
「アマカワのおかげで、だいぶ横になっていたからね。それよりも……」
口を閉ざしてドラゴンへと視線を向けるリリアーナ。
正直、倒せたのはギリギリだ。ナイフ術・中を習得できなければ、倒れていたのはドラゴンではなく俺たちだっただろう。
……マジでスキルポイントを残していてよかったわ。
『……て』
「ん? 何か言ったか、リリアーナ?」
「何も言ってないけど?」
……気のせいか?
『……けて』
「いや、気のせいじゃない。この辺りに誰かいる!」
「で、でも、さっきの爆発でこれだけ荒れているのよ、他の冒険者がいるわけないわ!」
普通ならそう考えるはずだが、俺には確かに聞こえたんだ。
『たす、けて』
「……ちょっと待て。まさか、このドラゴンかあ!?」
俺はドラゴンに顔を向けると、確かに目と目が合った気がした。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる