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第1章:異世界転生
天川の料理と二つの袋
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その後は必要な物資を買い集めてゼルジュラーダを歩き回っていると、あっという間に夜になってしまった。
食事はどうするべきかと悩んだ結果、一度外に出て俺がエルフの森で手に入れた肉を焼いて食べることになった。
「どうして都市のお店で食べないの?」
レイチェルの疑問はもっともである。
しかしリリアーナがどうしてもでか兎やでか豚の肉を食べたいと言ってきかないので仕方がないのだ。
「大丈夫、アマカワが焼いたお肉は絶品だからね!」
「……はあ」
まあ、そんな反応になるよな。
俺も都市の料理の味付けには納得できない部分があったので、今日くらいはいいかと了承したんだけどな。
「それじゃあ、今日はでか豚の肉をいくつかの香辛料で焼いていくか」
「やったー!」
「だが、これから野営もしていかないといけないからあまり量は焼けないからな」
「うんうん、分かってるわよ!」
喜んでいるリリアーナと無言で俺が料理をしている姿を見つめているレイチェル。
対照的な二人に見守られて作った料理は、ただでか豚の肉を焼いただけのものだ。
「……これが、本当に美味しいの?」
「肉の質だけは保証するよ。エルフの森で大きく肥えた動物の肉だからな」
「味付けも最高よ! ゼルジュラーダ一と言われるレストランの味付けよりも美味しいんだから!」
「おいおい、あんまりハードルを上げないでくれよ」
「……いただきます」
恐る恐るでか豚の肉を口にしたレイチェルを、俺はじーっと見つめていた。
「…………うわあ」
「く、口に合わなかったか?」
「ううん、とても美味しいわ! こ、こんなに美味しいお肉を食べたことなんて、今までなかった!」
「そうでしょう! レイチェルは森で暮らしていた時の食事ってどうしていたの?」
「基本的には動物たちが集めてくれた木の実や果物を食べていたわ。それと、森を荒らすような魔獣を駆除しながらお肉は食べていたの」
「それって、生肉ってことか?」
「そうね。私はその、人の姿になっても料理は苦手だから」
少し恥ずかしそうにそう教えてくれたレイチェルは……うん、とてもかわいいな。
……な、なんだよ、リリアーナ。そんな目で俺を見るな!
「……レイチェル、アマカワは私のものだからね?」
「……へっ?」
「……でも、アマカワさんとリリアーナさんは付き合っているわけではないんですよね?」
「……あのー?」
「つ、付き合ってはいないけど、パーティメンバーよ! これからずっと一緒に暮らしていくのよ?」
「……パーティって、そうなのか?」
「でしたら、私がちゃんとお付き合いを宣言してもいいということですね?」
「……俺の意見はどうなるんだ?」
そんな感じで楽しく? 食事を終えた俺たちは、その足でギャレミナさんのお店へと向かった。
「……ねえ、アマカワさん。本当にここを行くの?」
「そうだよな。俺も昨日、初めて来た時は正直リリアーナに騙されているんじゃないかと思ったよ」
「えっ! そ、そうだったの!?」
「冗談だよ、冗談」
「……もう!」
「ひーひひひっ! お主ら、人の店の前で何もイチャイチャしているんじゃ?」
「ひいいいっ!」
買い出しにでも出ていたのか、突然ギャレミナさんから声を掛けられたことでレイチェルが悲鳴をあげながら俺の腕にしがみついてきた。
その様子を見てリリアーナが体をわなわなと震わせているが、これは不可抗力なので許してやってほしい。
「それで、炎袋と氷袋の錬金は出来上がっているんですか?」
「ひひひ、ちゃんと出来上がっているから、そう急ぐものではない。ほれ、中に入らんかい」
扉を開けて中へ促してくるギャレミナさんを見て、リリアーナは何故だか驚きの表情を浮かべていた。
うーん、ギャレミナさんが自ら人を中に入れること自体が珍しいことなのかも。
……もしかして、アレッサさんの時みたいに目を付けられたのかな?
「失礼します」
とは言っても、入り口で時間を潰すのももったいないのでそのまま中へと入っていく。
俺がどんどんと中に入ってしまったので、レイチェルの側にはリリアーナがついている。
なんだかんだで、この二人は仲良くなっているのだ。
「ひひひ、久しぶりにいい仕事をさせてもらったよ」
「そうなんですか、それはよかった」
「ほれ、これが炎袋で、こっちが氷袋じゃよ」
俺は差し出された二つの袋を見て首を傾げてしまう。
「……こんなに大きかったか?」
「錬金をするには、それだけではできないのさ。必要な魔法陣を描いた布と融合させることで、初めて錬金はできるんだよ」
「そうなのか。それで、使い方とかはあるのか? それにどの程度の威力が出るとか」
そこで俺は袋の使い方を教えてもらった。
とは言っても簡単で、袋の口を対象に向けて底の部分を押し込むだけだ。
袋が大きくなったのは、その分威力を追及してくれたからという理由もあったようだ。
「実際の威力に関しては、実際に外で試してみたらいいじゃろう」
「それは、ここでは試せない威力だって理解でいいのか?」
「ひひひ、そう取ってもらって構わんよ」
「……分かりました、ありがとうございます」
「そうそう、そこの小娘に一つ聞いておきたいことがあるんじゃがいいかね?」
用事が終わり外に出ようとしたのだが、ギャレミナさんからそう言われて指差されたのは――
「……わ、私、ですか?」
レイチェルはリリアーナにしがみつきながら後退りを始めていた。
食事はどうするべきかと悩んだ結果、一度外に出て俺がエルフの森で手に入れた肉を焼いて食べることになった。
「どうして都市のお店で食べないの?」
レイチェルの疑問はもっともである。
しかしリリアーナがどうしてもでか兎やでか豚の肉を食べたいと言ってきかないので仕方がないのだ。
「大丈夫、アマカワが焼いたお肉は絶品だからね!」
「……はあ」
まあ、そんな反応になるよな。
俺も都市の料理の味付けには納得できない部分があったので、今日くらいはいいかと了承したんだけどな。
「それじゃあ、今日はでか豚の肉をいくつかの香辛料で焼いていくか」
「やったー!」
「だが、これから野営もしていかないといけないからあまり量は焼けないからな」
「うんうん、分かってるわよ!」
喜んでいるリリアーナと無言で俺が料理をしている姿を見つめているレイチェル。
対照的な二人に見守られて作った料理は、ただでか豚の肉を焼いただけのものだ。
「……これが、本当に美味しいの?」
「肉の質だけは保証するよ。エルフの森で大きく肥えた動物の肉だからな」
「味付けも最高よ! ゼルジュラーダ一と言われるレストランの味付けよりも美味しいんだから!」
「おいおい、あんまりハードルを上げないでくれよ」
「……いただきます」
恐る恐るでか豚の肉を口にしたレイチェルを、俺はじーっと見つめていた。
「…………うわあ」
「く、口に合わなかったか?」
「ううん、とても美味しいわ! こ、こんなに美味しいお肉を食べたことなんて、今までなかった!」
「そうでしょう! レイチェルは森で暮らしていた時の食事ってどうしていたの?」
「基本的には動物たちが集めてくれた木の実や果物を食べていたわ。それと、森を荒らすような魔獣を駆除しながらお肉は食べていたの」
「それって、生肉ってことか?」
「そうね。私はその、人の姿になっても料理は苦手だから」
少し恥ずかしそうにそう教えてくれたレイチェルは……うん、とてもかわいいな。
……な、なんだよ、リリアーナ。そんな目で俺を見るな!
「……レイチェル、アマカワは私のものだからね?」
「……へっ?」
「……でも、アマカワさんとリリアーナさんは付き合っているわけではないんですよね?」
「……あのー?」
「つ、付き合ってはいないけど、パーティメンバーよ! これからずっと一緒に暮らしていくのよ?」
「……パーティって、そうなのか?」
「でしたら、私がちゃんとお付き合いを宣言してもいいということですね?」
「……俺の意見はどうなるんだ?」
そんな感じで楽しく? 食事を終えた俺たちは、その足でギャレミナさんのお店へと向かった。
「……ねえ、アマカワさん。本当にここを行くの?」
「そうだよな。俺も昨日、初めて来た時は正直リリアーナに騙されているんじゃないかと思ったよ」
「えっ! そ、そうだったの!?」
「冗談だよ、冗談」
「……もう!」
「ひーひひひっ! お主ら、人の店の前で何もイチャイチャしているんじゃ?」
「ひいいいっ!」
買い出しにでも出ていたのか、突然ギャレミナさんから声を掛けられたことでレイチェルが悲鳴をあげながら俺の腕にしがみついてきた。
その様子を見てリリアーナが体をわなわなと震わせているが、これは不可抗力なので許してやってほしい。
「それで、炎袋と氷袋の錬金は出来上がっているんですか?」
「ひひひ、ちゃんと出来上がっているから、そう急ぐものではない。ほれ、中に入らんかい」
扉を開けて中へ促してくるギャレミナさんを見て、リリアーナは何故だか驚きの表情を浮かべていた。
うーん、ギャレミナさんが自ら人を中に入れること自体が珍しいことなのかも。
……もしかして、アレッサさんの時みたいに目を付けられたのかな?
「失礼します」
とは言っても、入り口で時間を潰すのももったいないのでそのまま中へと入っていく。
俺がどんどんと中に入ってしまったので、レイチェルの側にはリリアーナがついている。
なんだかんだで、この二人は仲良くなっているのだ。
「ひひひ、久しぶりにいい仕事をさせてもらったよ」
「そうなんですか、それはよかった」
「ほれ、これが炎袋で、こっちが氷袋じゃよ」
俺は差し出された二つの袋を見て首を傾げてしまう。
「……こんなに大きかったか?」
「錬金をするには、それだけではできないのさ。必要な魔法陣を描いた布と融合させることで、初めて錬金はできるんだよ」
「そうなのか。それで、使い方とかはあるのか? それにどの程度の威力が出るとか」
そこで俺は袋の使い方を教えてもらった。
とは言っても簡単で、袋の口を対象に向けて底の部分を押し込むだけだ。
袋が大きくなったのは、その分威力を追及してくれたからという理由もあったようだ。
「実際の威力に関しては、実際に外で試してみたらいいじゃろう」
「それは、ここでは試せない威力だって理解でいいのか?」
「ひひひ、そう取ってもらって構わんよ」
「……分かりました、ありがとうございます」
「そうそう、そこの小娘に一つ聞いておきたいことがあるんじゃがいいかね?」
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レイチェルはリリアーナにしがみつきながら後退りを始めていた。
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