異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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移住に向けて

問題

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 廻はニーナの手伝いに精を出した後、その足で経営者の部屋マスタールームへと移動した。移住についてニャルバンと確認をする為だ。
 カナタ達はまだ完全にジーエフに移住したわけではなく、戻ってきたタイミングで完全に移住が完了する。
 今回のアークスが移住第一号だったのだ。

「おかえりなさいだにゃ!」
「ニャルバーン、移住ってすぐにできるものなのー?」

 すぐに質問を口にした廻に対してニャルバンは冷たい水を用意しながら返答する。

「移住申請の用紙を発行するから、それに名前を明記してもらえば完了するにゃ!」
「えっ、意外と簡単なんだね。順位の関係もあるからすぐにはできないと思ってたんだけど」
「都市の経営者から許可をもらっていればそれだけで完了できるのにゃ。移住する人は許可をもらっているのにゃ?」

 そこまで聞いて廻は首を横に振った。

「聞いてないわ」
「そうなのかにゃ? だったら聞いてきた方がいいにゃ」
「もし許可が出てなかったらどうなるの?」

 いざこざが苦手な廻は許可が出ていない場合の対応が気になってしまった。

「最悪、相手側の都市から面倒な条件を付けられたりするのにゃ」
「ジギルさんが言ってたやつかぁ。えぇー、嫌だよー。過去にはどんな条件があったのかな?」
「総収入の半分を毎月よこせとか、レアモンスターをよこせとかだにゃ」
「……絶対嫌なんだけど! 何それ、潰れちゃうじゃないの!」
「どれも断らせる為の条件なのにゃ。だーれもそんな条件飲まなかったのにゃ」
「それって、許可が出てなかったら誰も移住できなかったってこと?」

 もしそうなってしまえば喜んでいた自分がバカみたい思えてしまうのと、せっかくここまで来てくれたアークスに申し訳がないと思ってしまった。

「相手の都市がジーエフよりも下の順位だったら問題ないんだけど……ジーエフはまだ1010位だから厳しいはずなのにゃ」
「そっかぁ。でも、アークスさんが許可をもらっていれば問題ないわけだし、ちょっと聞いてくるね!」
「水だけでも飲んでいくにゃ」

 冷えた水を一気に飲み干した廻は頭を押さえながら経営者の部屋を後にした。

 ※※※※

 アークスがいるであろうロンドの家に向かった廻。
 今のジーエフだとダンジョン意外に行くところもないのでいるだろうと思っていたが、予想通り二人で何気ない会話をしながら時間を潰していた。

「あれ、メグル様どうしたんですか?」
「ちょっとアークスさんに確認したいことがあったんだ」
「俺に、ですか?」

 廻はニャルバンから聞かされた移住の許可について話を振ってみたのだが──

「あー、そのー……許可はもらえてません」

 そして、アークスからの答えに固まってしまう。

「えっ、アークスさん、そうなんですか?」
「……はい。何度も申請はしたんですが許可を出してくれなくて、こちらに迷惑を掛けたくはなかったんですが、どうしても移住をしたくて……」

 最後の方は尻すぼみになってしまった言葉に、廻は気を取り直して口を開く。

「……そっかぁ。まあ、そうなったならしょうがないよね」
「……えっ?」
「アークスさんが暮らしていた都市の情報を教えてくれないかな? 色々と対策を練らなきゃいけないからさ」

 頭の中をすぐに切り替えた廻に対して、アークスは唖然としたまま固まっており、その横でロンドは笑みを浮かべていた。

「あ、あの、メグル様?」
「んっ? どうしたの?」
「その、迷惑じゃ、ないんですか?」
「迷惑って、誰が?」
「えっと、俺がですけど」
「なんで?」
「……えっ?」
「……えっ?」

 会話にならない二人を見て、ついにロンドが声を出して笑ってしまった。

「ぷ、ぷふふ、あははははっ!」
「ちょっとロンド君! 笑ってないで説明してよ!」
「いや、その、おかしくって!」
「ヤニッシュさん、何がおかしいんですか?」

 困惑する二人に対して笑い声をようやく納めたロンドが説明を始めた。

「話が通じているようで通じてないからおかしかったんです」
「だって、迷惑なわけないじゃない。せっかくここまで来てくれてるのに」
「でも、ちゃんと許可をもらってきてなかったし、あっちの経営者様が何かを言ってきたら……」
「だから対策を立てるんですよ。アークスさんには感謝しかありませんから安心してください!」
「感謝、ですか?」
「そうだよ。アークスさんは問題を持ち込んだって思ってるかもしれないけどそうじゃないんだ。私が望んだ人材が来てくれたんだから、何かあれば私が対処するのは当然のことでしょう?」

 アークスは廻のことを見誤っていた。
 宿屋で話をした時にも変わった人だとは思っていたが、それ以上に廻は変わり者であり、また惹かれる存在だった。
 こんなにも簡単に問題を受け止め、さらに解決に向けて動く経営者はそうそういないだろう。
 アークスもまた、経営者としての廻の行動に驚かされるばかりだった。

「それで、どこの都市から来たの?」
「えっと、俺がいたところはオレノオキニイリって都市です」
「…………えっ? アークスさんのお気に入りの都市だったの?」
「いや、じゃなくて、都市の名前がオレノオキニイリなんです」
「だから、そんなに素敵な名前の都市の名前を教えてほしいんだけど?」

 再び噛み合わない二人の会話。
 頼りのロンドも今回に関しては首を傾げるばかりだ。

「……都市の名前がお気に入りってわけじゃなくて! 都市自体の名前がって名前なんです!」

 アークスが怒鳴り口調で、さらにはオレノオキニイリの部分を強調して口にする。
 ロンドと一緒になって首を傾げていた廻だったが、アークスの言い回しを聞いてようやく合点がいった。

「……あ……あー……ああああぁぁっ! オレノオキニイリ! まさかのオレノオキニイリですか!」
「えっ、なんですか? 何が起こっているんですか?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……よ、ようやく、伝わっ……た」

 怒鳴り声を上げたせいで呼吸が荒くなっているアークスだったが、呼吸が整い冷静になると顔を青ざめてしまう。
 それもそのはず。アークスは経営者である廻に怒鳴り声を上げたのだから。
 当の廻はというと、いつものことなので気にすることなく話を進めようとする。
 そこでもロンドがアークスへのフォローを買って出てくれた。

「これくらいで怒る人じゃないから気にしないでいいですよ」
「……あ、あぁ」

 少しずつ慣れてきたのか、アークスの困惑顔も徐々に収まり廻を見つめていた。

「そ、それで、メグル様はどうしてオレノオキニイリを知っているんですか?」
「順位1000位でキリが良かったから、まずは1000位を目指そうってことで知ってたんだ」
「そうでしたか。それで、ジーエフは何位なんですか?」
「最近の更新で1010位までは上がってたよ。次のランキング更新で上に行けたらいいんだけどなぁ……んっ?」

 そこで言葉を切った廻は腕を組み思案し始めた。
 何事かとロンドとアークスは顔を見合わせている。
 数秒が過ぎた後、廻が口を開いた。

「──次のランキング更新でオレノオキニイリを抜いたらいいんじゃないの?」

 その提案は、あまりにも突拍子のないものだった。
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