異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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第3章:外の世界

ダンジョン前にて

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 換金所ではすでにアルバスが扉を閉めており、ジレラ夫妻と共に廻達の到着を待っていた。
 普段と変わらない衣装のアルバスとボッヘルだが、リリーナだけは冒険者仕様の服装をしており違和感がある。
 そして、双剣のリリーナと呼ばれていたからだろう、左右の腰には一本ずつ剣が差されていた。

「遅くなりました!」
「うふふ、大丈夫ですよ」
「こっちも閉めたばかりだからな」

 廻の言葉にリリーナとアルバスが返してくれる。
 周囲に冒険者の姿はなく、すでに宿屋で一杯飲んでいるのだろう。
 ニーナには悪いと思いつつ、廻は経営者の部屋マスタールームからアルバス達を見守ろうと心に決めていた。

「リリーナさんは、絶対に無茶だけはしないでくださいね。無茶は全部アルバスさんに任せてしまえばいいですから」
「まあ、双剣のリリーナならジーエフのモンスターくらいはどうってことないだろう」
「ブランクと言うものがありますよ!」
「うふふ、心配してくれてありがとうございます。ですが、せっかくのダンジョンですし、私も久しぶりに楽しもうと思っていますよ」

 笑顔のリリーナとは異なり、ボッヘルは心配なのだろう表情が硬い。

「ほ、本当に無理だけはしないでくれよ? 俺はリリーナがいなかったら、生きている意味なんてないと思っているんだからな!」
「大丈夫ですよ。ボッヘルは心配性なんだから」

 そして、ここでも何故だか甘い雰囲気を醸し出そうとする二人を見て、廻が咳払いで空気を引き戻す。

「ゴホン! ……それじゃあ、ダンジョンに向かいましょう!」
「小僧と貴族小僧はダンジョンの入口で待っているはずだ」

 アルバスの言葉を受けて、廻達はダンジョンへと歩き出す。
 そこには予定通りロンドとトーリが二人で待っており、お互いに気まずそうにしていた。

「二人とも、お待たせ! ……どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
「問題ない」

 首を傾げる廻を尻目に、アルバスはアークスから看板を受け取って肩に担ぐ。
 隻腕のアルバスが看板を持ってしまうと、モンスターと戦えないのではないかとボッヘルは困惑顔だ。

「基本は小僧と貴族小僧、そしてリリーナで戦ってもらう。一五階層の安全地帯セーフポイントまでなら、三人で進むのも問題はないだろうからな」
「ぼ、僕も戦うのか!」

 驚きの声を上げたのはトーリである。
 祈祷師として常に後衛で行動していたのだから、戦うと言われるとどうしても前衛のような行動をしなければいけないのかと考えてしまった。
 だが、アルバスは仕方がないといった表情で説明を始める。

「あほか。貴族小僧が前衛みたいに戦うわけがないだろう。お前の役目はいつも通りに支援魔法を二人に施すことだ。だが、そのタイミングはお前に一任するから、間違えないようにしっかりとやるんだな」
「フェロー様が指示をくれるんじゃないんですか?」
「お前は朱髪小僧と魔法師とパーティを組んでいるんだろう。だったら、自分の判断で魔法を使うくらいお手のものじゃないのか?」
「……い、いつもは入る前と、入ってからは効果が切れそうになると重ね掛けをしていました。タイミングを見計らって魔法を使うなんてことは、正直していませんでした」

 速度向上と耐久向上、その全てをダンジョンに潜る前や安全地帯で使っており、それ以外の時には効果が切れそうになると魔力がもったいないが重ね掛けをして支援を継続させていた。
 これは、魔力よりも自分達の命の安全を優先した結果だったのだが、アルバスはなるべくタイミングを見て魔法を使うように指示を出す。

「命を大事にするのは当然だ。だが、いざという時に魔力が切れていました、では話にならんからな。今の内にタイミングを見て魔法を発動できるように訓練するんだ」
「は、はい!」

 先ほどまでの気まずい雰囲気はどこへやら、トーリは気合を込めて返事する。
 一方のロンドは苦笑を浮かべてトーリを見ていた。

「……な、なんだよ」
「いえ。最初の頃からは変わったなと思いまして」
「ぼ、僕だって、あの時は悪いと思っているんだ。……その、ロンドにも、悪いと思っている」

 トーリの表情を見て、単にロンドへ謝りたかったのだと分かった廻の表情は自然と笑みを浮かべる。
 最初はロンドとトーリの組み合わせを心配していたのだが、これならば問題なく送り出せると安堵もしていた。

「私はどうしたらよろしいですか?」

 ニコニコと笑みを絶やさずにアルバスに質問したリリーナ。
 ロンドも前衛なので、アルバスの指示を待っている。

「……あー、まあ、好きにしたらいいんじゃないか?」
「「……えっ?」」
「ちょっとアルバスさん! なんでそこだけ投げやりになってるんですか!」

 リリーナとロンドはきょとんとしており、反論の声を上げたのは廻だった。

「小僧の実力は駆け出しと言っても、ジーエフにいるランドン以外のモンスターなら問題なく倒せるレベルにきている。リリーナはブランクがあるとはいえ、元冒険者ランキング27位だから、正直心配はしていない。むしろ、俺は荷物運びで十分だと思っているからな」
「うふふ、ありがとうございます」
「それって褒め言葉なんですか? ただ、アルバスさんが楽をしたいだけじゃないんですか?」
「てめえはどうして毎回絡んでくるんだ?」
「思ったことを口にしているだけですよー!」
「えっと、二人とも、落ち着きませんか? 今からダンジョンに潜るんですよ?」

 ロンドがいつものことだという風に二人の間に立ち宥めている。
 さすがの廻も命のやり取りを行うダンジョン探索を前にして喧嘩をするつもりはなく、すぐに引き下がる。

「アルバスさんがちゃんと働いているか、見させていただきますからね!」
「おうおう、見てろ見てろ。だが、今回は荷物運びだけになると思うがなー」
「……はぁ」

 引き下がったかと思えば、すぐに言葉の応酬を繰り返す。
 最終的に、宥めるのが面倒臭くなったロンドが引き下がるのが毎度のことだ。

「……なあ、ロンド君。あれはいいのか?」
「まあ、いつものことですから」
「いつものことって、メグル様はともかくフェロー様もか?」
「そうですよ」
「ちょっとトーリ君! 今軽くけなしたわね!」
「き、聞こえていたんですか」
「否定しないのね!」

 ヒステリックになりそうな廻にはアークスとボッヘルが声を掛け、探索組はようやく落ち着きを取り戻す。
 前衛をロンドとリリーナ、中央にトーリが並び、後方にアルバスがつく。
 双剣の柄を撫でるリリーナは、ダンジョンを心底楽しむつもりでいる。

「ロンド君には悪いけど、私がモンスターを倒しちゃいますよ」
「僕は構いません。むしろ、リリーナさんの動きから盗めるものを盗みたいと思います」
「小僧はリリーナが打ち漏らしたモンスターを倒してくれ。……まあ、無いとは思うがな」
「……これ、僕が行く意味ありますか?」
「支援魔法を使うタイミングを計る練習だ。同じことを何度も言わせるなよ」
「……はあ」

 頭を掻きながら呟くトーリの肩を、ロンドが苦笑を浮かべて軽く叩く。
 アルバスの決めたことだから仕方がない、と思うことにしたトーリはロッドを軽く握り直す。

「さて、それじゃあ行くぞ」

 アルバスの声を聞いた三人は表情を引き締める。
 ダンジョンに潜って行くその背中を、廻は心配そうに見つめていた。
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