21 / 107
第一章:不当解雇
第20話:デンとの会話
しおりを挟む
模擬戦を終えた後、宴はさらに盛り上がった。
ギレインから酒を勧められたが、移動と戦闘、さらに模擬戦まで行ったので疲れてしまった。
「今日は儂らの屋敷にお泊りなさい。明日にはギレイン殿の家まで案内いたします」
というわけで、俺は宴の主役ではあるものの先に休ませてもらう事にした。
デンはどうしようかと思っていたが、俺と目が合った途端にゆっくりと立ち上がると、そのまま影に入ってしまった。
子供たちを落とさないよう、ゆっくりと立ち上がる辺り、こいつは本当に魔獣なのかと疑問に思ってしまう。
「後で覚えておれよ?」
子供たちの相手が相当大変だったみたいなので、なるべく早くにストレス発散をさせてあげないとな。
屋敷まではレジーナさんに案内してもらい、客間を使わせてもらう。
「この度は、移住を決意していただき、本当にありがとうございます。ウラナワ村は何もないところですが、きっと気に入ってもらえると思いますよ」
その言葉には、とても深い感謝が込められているように思えた。
レジーナさんが離れたのを確認すると、俺は宴に集まっていた村民の事を思い出していた。
若い人がいないわけではないが、パッと見ただけでも比率で言えば高齢の方が多いのは一目瞭然だった。
子供たちもいるにはいるが、幼児ばかりでギースやミリルと同年代の子供は見かけなかった。
この状況を見ると、リムルが言っていたように今はいいが、ギースとミリルの世代、さらに次の世代と時代が進んでいくと、ウラナワ村は滅んでしまうかもしれない。
「デンは、ウラナワ村の事をどう思った?」
……返事がない。
「デン?」
『……こんな時には、声を掛けるのだな』
「子供たちとの事、まだ怒っているのか?」
『本当に大変だったのだぞ! 我の美しい毛並みに涎や鼻水がついたり、引っ張られたり……我は入念な毛繕いを所望するぞ!』
「はいはい、わかったよ。明日はそれをしてやるから、俺の質問に答えてくれ」
それで機嫌が直ってくれるなら、安いものだ。
「それで、どう思う?」
『ふむ……周囲に魔獣の気配は多いが、何故か向かってくるような事はないのう』
それは俺も考えていた。
魔獣キラーのおかげで、魔獣の気配には敏感になっている。
とても離れているわけでもなく、近いわけでもない。なんとも、良い塩梅のところに陣取っているのだ。
『おそらく、誘い出そうと思っているのだろう』
「そこを群れで叩くって事か。……人間みたいな思考をしている魔獣たちだな」
『それがサクラハナ国の魔獣の特性なのか、それともウラナワ村周辺の魔獣だけがそうなのかは、わからないがな』
ライバーナ付近の魔獣、オニビはそのような知恵を持っているようには見えなかった。
となると、ウラナワ村周辺の魔獣だけが知恵を持っていると考えるべきだろう。
魔獣を討伐して生計を立てているだけあり、多くの魔獣を狩ることで、この辺りの魔獣だけが進化を繰り返し、知恵を得るに至ったのだ。
「そうなると、もしウラナワ村が滅んでしまったら、サクラハナ国も危険に陥る可能性があるな」
ジーラギ国と同じで、サクラハナ国も小国だとリムルは言っていた。
似たような村が他にあれば話は別だが、そうでなければウラナワ村周辺の進化した魔獣がサクラハナ国に溢れかえり、一気に蹂躙される恐れも出てくる。
「……ここに来られて、よかったかもしれないな」
『だが、お主が表立って戦えば、ジーラギ国と同じ事になってしまうぞ?』
「わかってるよ。ウラナワ村の人たちは、魔獣キラーというスキルを毛嫌いしていないし、もしかしたら魔獣の進化条件についても知っているかもしれない。なら、一緒に戦っていければ、一緒に強くなる事もできるはずだろう?」
ジーラギ国とサクラハナ国。
似ているところはあるものの、大事な部分では違っている。
一緒に強くなれれば、魔獣の進化に追いつくことも可能なのだから。
『だが、ここの自警団隊長は、まあまあの実力しか持っていないのだな』
「お前が言うなよ」
『だが、事実であろう。このままでは、今の世代ですら魔獣に殺されて、滅ぶ可能性もあるぞ?』
デンの指摘は、正直なところ俺も感じていた。
俺の実力はジラギースでは中の下なのだが、そんな俺に自警団の隊長であるギレインは負けたのだ。
現状を心配してしまうのも、仕方ないかもしれない。
「まあ、サクラハナ国の現状が、ジーラギ国と同じとは限らないからな」
『発展途上だとでも言いたいのか? ……まあ、可能性はあるがな』
世界が全く同じ速度で進化しているとは限らない。
サクラハナ国はサクラハナ国の速度で進んでいけばいいのだ。
「それじゃあ、もう寝るか」
『うむ。我は疲れた。明日の毛繕い、忘れるでないぞ』
「わかってるって」
デンからの返事が聞こえなくなった事を確認し、俺も布団の中でまぶたを閉じる。
……俺は、新しい人生を、生きていくんだな。
ギレインから酒を勧められたが、移動と戦闘、さらに模擬戦まで行ったので疲れてしまった。
「今日は儂らの屋敷にお泊りなさい。明日にはギレイン殿の家まで案内いたします」
というわけで、俺は宴の主役ではあるものの先に休ませてもらう事にした。
デンはどうしようかと思っていたが、俺と目が合った途端にゆっくりと立ち上がると、そのまま影に入ってしまった。
子供たちを落とさないよう、ゆっくりと立ち上がる辺り、こいつは本当に魔獣なのかと疑問に思ってしまう。
「後で覚えておれよ?」
子供たちの相手が相当大変だったみたいなので、なるべく早くにストレス発散をさせてあげないとな。
屋敷まではレジーナさんに案内してもらい、客間を使わせてもらう。
「この度は、移住を決意していただき、本当にありがとうございます。ウラナワ村は何もないところですが、きっと気に入ってもらえると思いますよ」
その言葉には、とても深い感謝が込められているように思えた。
レジーナさんが離れたのを確認すると、俺は宴に集まっていた村民の事を思い出していた。
若い人がいないわけではないが、パッと見ただけでも比率で言えば高齢の方が多いのは一目瞭然だった。
子供たちもいるにはいるが、幼児ばかりでギースやミリルと同年代の子供は見かけなかった。
この状況を見ると、リムルが言っていたように今はいいが、ギースとミリルの世代、さらに次の世代と時代が進んでいくと、ウラナワ村は滅んでしまうかもしれない。
「デンは、ウラナワ村の事をどう思った?」
……返事がない。
「デン?」
『……こんな時には、声を掛けるのだな』
「子供たちとの事、まだ怒っているのか?」
『本当に大変だったのだぞ! 我の美しい毛並みに涎や鼻水がついたり、引っ張られたり……我は入念な毛繕いを所望するぞ!』
「はいはい、わかったよ。明日はそれをしてやるから、俺の質問に答えてくれ」
それで機嫌が直ってくれるなら、安いものだ。
「それで、どう思う?」
『ふむ……周囲に魔獣の気配は多いが、何故か向かってくるような事はないのう』
それは俺も考えていた。
魔獣キラーのおかげで、魔獣の気配には敏感になっている。
とても離れているわけでもなく、近いわけでもない。なんとも、良い塩梅のところに陣取っているのだ。
『おそらく、誘い出そうと思っているのだろう』
「そこを群れで叩くって事か。……人間みたいな思考をしている魔獣たちだな」
『それがサクラハナ国の魔獣の特性なのか、それともウラナワ村周辺の魔獣だけがそうなのかは、わからないがな』
ライバーナ付近の魔獣、オニビはそのような知恵を持っているようには見えなかった。
となると、ウラナワ村周辺の魔獣だけが知恵を持っていると考えるべきだろう。
魔獣を討伐して生計を立てているだけあり、多くの魔獣を狩ることで、この辺りの魔獣だけが進化を繰り返し、知恵を得るに至ったのだ。
「そうなると、もしウラナワ村が滅んでしまったら、サクラハナ国も危険に陥る可能性があるな」
ジーラギ国と同じで、サクラハナ国も小国だとリムルは言っていた。
似たような村が他にあれば話は別だが、そうでなければウラナワ村周辺の進化した魔獣がサクラハナ国に溢れかえり、一気に蹂躙される恐れも出てくる。
「……ここに来られて、よかったかもしれないな」
『だが、お主が表立って戦えば、ジーラギ国と同じ事になってしまうぞ?』
「わかってるよ。ウラナワ村の人たちは、魔獣キラーというスキルを毛嫌いしていないし、もしかしたら魔獣の進化条件についても知っているかもしれない。なら、一緒に戦っていければ、一緒に強くなる事もできるはずだろう?」
ジーラギ国とサクラハナ国。
似ているところはあるものの、大事な部分では違っている。
一緒に強くなれれば、魔獣の進化に追いつくことも可能なのだから。
『だが、ここの自警団隊長は、まあまあの実力しか持っていないのだな』
「お前が言うなよ」
『だが、事実であろう。このままでは、今の世代ですら魔獣に殺されて、滅ぶ可能性もあるぞ?』
デンの指摘は、正直なところ俺も感じていた。
俺の実力はジラギースでは中の下なのだが、そんな俺に自警団の隊長であるギレインは負けたのだ。
現状を心配してしまうのも、仕方ないかもしれない。
「まあ、サクラハナ国の現状が、ジーラギ国と同じとは限らないからな」
『発展途上だとでも言いたいのか? ……まあ、可能性はあるがな』
世界が全く同じ速度で進化しているとは限らない。
サクラハナ国はサクラハナ国の速度で進んでいけばいいのだ。
「それじゃあ、もう寝るか」
『うむ。我は疲れた。明日の毛繕い、忘れるでないぞ』
「わかってるって」
デンからの返事が聞こえなくなった事を確認し、俺も布団の中でまぶたを閉じる。
……俺は、新しい人生を、生きていくんだな。
40
あなたにおすすめの小説
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる