門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第20話:デンとの会話

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 模擬戦を終えた後、宴はさらに盛り上がった。
 ギレインから酒を勧められたが、移動と戦闘、さらに模擬戦まで行ったので疲れてしまった。

「今日は儂らの屋敷にお泊りなさい。明日にはギレイン殿の家まで案内いたします」

 というわけで、俺は宴の主役ではあるものの先に休ませてもらう事にした。
 デンはどうしようかと思っていたが、俺と目が合った途端にゆっくりと立ち上がると、そのまま影に入ってしまった。
 子供たちを落とさないよう、ゆっくりと立ち上がる辺り、こいつは本当に魔獣なのかと疑問に思ってしまう。

「後で覚えておれよ?」

 子供たちの相手が相当大変だったみたいなので、なるべく早くにストレス発散をさせてあげないとな。

 屋敷まではレジーナさんに案内してもらい、客間を使わせてもらう。

「この度は、移住を決意していただき、本当にありがとうございます。ウラナワ村は何もないところですが、きっと気に入ってもらえると思いますよ」

 その言葉には、とても深い感謝が込められているように思えた。
 レジーナさんが離れたのを確認すると、俺は宴に集まっていた村民の事を思い出していた。
 若い人がいないわけではないが、パッと見ただけでも比率で言えば高齢の方が多いのは一目瞭然だった。
 子供たちもいるにはいるが、幼児ばかりでギースやミリルと同年代の子供は見かけなかった。
 この状況を見ると、リムルが言っていたように今はいいが、ギースとミリルの世代、さらに次の世代と時代が進んでいくと、ウラナワ村は滅んでしまうかもしれない。

「デンは、ウラナワ村の事をどう思った?」

 ……返事がない。

「デン?」
『……こんな時には、声を掛けるのだな』
「子供たちとの事、まだ怒っているのか?」
『本当に大変だったのだぞ! 我の美しい毛並みに涎や鼻水がついたり、引っ張られたり……我は入念な毛繕いを所望するぞ!』
「はいはい、わかったよ。明日はそれをしてやるから、俺の質問に答えてくれ」

 それで機嫌が直ってくれるなら、安いものだ。

「それで、どう思う?」
『ふむ……周囲に魔獣の気配は多いが、何故か向かってくるような事はないのう』

 それは俺も考えていた。
 魔獣キラーのおかげで、魔獣の気配には敏感になっている。
 とても離れているわけでもなく、近いわけでもない。なんとも、良い塩梅のところに陣取っているのだ。

『おそらく、誘い出そうと思っているのだろう』
「そこを群れで叩くって事か。……人間みたいな思考をしている魔獣たちだな」
『それがサクラハナ国の魔獣の特性なのか、それともウラナワ村周辺の魔獣だけがそうなのかは、わからないがな』

 ライバーナ付近の魔獣、オニビはそのような知恵を持っているようには見えなかった。
 となると、ウラナワ村周辺の魔獣だけが知恵を持っていると考えるべきだろう。
 魔獣を討伐して生計を立てているだけあり、多くの魔獣を狩ることで、この辺りの魔獣だけが進化を繰り返し、知恵を得るに至ったのだ。

「そうなると、もしウラナワ村が滅んでしまったら、サクラハナ国も危険に陥る可能性があるな」

 ジーラギ国と同じで、サクラハナ国も小国だとリムルは言っていた。
 似たような村が他にあれば話は別だが、そうでなければウラナワ村周辺の進化した魔獣がサクラハナ国に溢れかえり、一気に蹂躙される恐れも出てくる。

「……ここに来られて、よかったかもしれないな」
『だが、お主が表立って戦えば、ジーラギ国と同じ事になってしまうぞ?』
「わかってるよ。ウラナワ村の人たちは、魔獣キラーというスキルを毛嫌いしていないし、もしかしたら魔獣の進化条件についても知っているかもしれない。なら、一緒に戦っていければ、一緒に強くなる事もできるはずだろう?」

 ジーラギ国とサクラハナ国。
 似ているところはあるものの、大事な部分では違っている。
 一緒に強くなれれば、魔獣の進化に追いつくことも可能なのだから。

『だが、ここの自警団隊長は、まあまあの実力しか持っていないのだな』
「お前が言うなよ」
『だが、事実であろう。このままでは、今の世代ですら魔獣に殺されて、滅ぶ可能性もあるぞ?』

 デンの指摘は、正直なところ俺も感じていた。
 俺の実力はジラギースでは中の下なのだが、そんな俺に自警団の隊長であるギレインは負けたのだ。
 現状を心配してしまうのも、仕方ないかもしれない。

「まあ、サクラハナ国の現状が、ジーラギ国と同じとは限らないからな」
『発展途上だとでも言いたいのか? ……まあ、可能性はあるがな』

 世界が全く同じ速度で進化しているとは限らない。
 サクラハナ国はサクラハナ国の速度で進んでいけばいいのだ。

「それじゃあ、もう寝るか」
『うむ。我は疲れた。明日の毛繕い、忘れるでないぞ』
「わかってるって」

 デンからの返事が聞こえなくなった事を確認し、俺も布団の中でまぶたを閉じる。
 ……俺は、新しい人生を、生きていくんだな。
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