門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第39話:魔獣討伐③

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 ――結局、残る三つの群れも簡単に討伐を終えてしまった。
 この中に人型魔獣を率いているボスはおらず、全ての群れをオーガウィザードが率いていた。
 しかし、そうなると本命はさらに奥の方にいる事になる。

「まあ、予想通りではあるがな」

 最前線に出てくるようなボスもいるにはいるが、そちらの方が稀である。
 普通であれば後方で指揮を執り、近くまでやって来た者のみを相手にする。
 人型魔獣のSランクがどの程度の実力を持っているのか、俺はそこを気にしながら森の奥へと進んでいく。
 だが、群れを発見したらなるべくは殲滅するようにしている。
 デンがいるとはいえ、殲滅と防衛では勝手が違ってくるからな。
 少しでもデンや自警団の負担を減らしておかなければならないのだ。

「これで、六つ目!」
『グゲギャガガッ!』

 結構な数の魔獣を倒してなお、森の奥には無数の気配が残っている。デンにはああ言ったが、これは結構骨の折れる作業になりそうだ。
 そんな事を考えていると、群れから離れたところに別の気配を感知した。

「……この感じ、オーガではないか?」

 だが、現在のこの森には人型魔獣以外はいないはず。オーガ以外の人型魔獣という事だろうか。
 そうこうしていると、一つの群れが謎の気配の方へ移動を開始した。

「まあ、行ってみたらわかるか」

 謎ではあるが、群れがそちらに向かっているのであれば結局は向かうのだ。気配だけでわからなければ、実際にこの目で確かめればいいだけの話である。
 というわけで、俺は謎の気配を目指して全力疾走を開始した。

 だが、残念な事に謎の気配を確認するよりも先に魔獣の群れがこちらに流れてきてしまった。
 やはりと言うべきか、予想通りにオーガウィザードが率いる群れである。
 戦い慣れてきたこともあり、数は最初の群れと変わらないのだが時間は半分も掛からなかった。
 一息ついてから謎の気配へ向けて歩き出す。
 警戒を解いてはいけない、この気配がイレギュラーな魔獣であれば、一瞬の隙が命に関わるからな。

「…………なんだ、あれは?」

 人の頭ほどの大きさがある白く、楕円形の塊。
 魔獣ではないと思うが、それ以前に生き物にも見えない。
 だが、謎の気配は確かに白い塊から発せられている。

「触らぬ神に祟りなし……なんだがなぁ」

 不思議と放っておく事ができない。
 見た目だけで推測するなら、何かの卵のように見えなくもない。
 魔獣が卵から生まれるなんて聞いた事はないし、実際に空間に亀裂が走って魔獣が生まれ落ちた瞬間を目にしている。
 ならば、これは魔獣以外の何かの卵ということになるが……。

「荷物になるが、持っていくか」

 普段からぶら下げている腰布を目いっぱい広げて卵を押し込む。
 他の物が何一つ入れられなくなってしまったが、動物の卵とかだった場合に魔獣に喰われるのは後味が悪すぎる。

「ウラナワ村には動物を飼っている人もいなかったし、ちょっとした心の安らぎになるんじゃないかな」

 軽い気持ちで卵を収納した俺は、立ち上がると再び気配察知を行う。
 すると、予想外の事が起きていて思案してしまう。

「……奥の群れが、こっちに来ている?」

 もしかすると、卵を回収を指示したのが群れのボスだったのかもしれない。ならば、この行動も納得ができる。

「先ほどの群れが卵を持ち帰れなかったから、ボス自らが動いたって事か」

 予想外だが、俺からすると楽ができると笑んでしまう。
 卵の気配を消す事はできないので、あちらは迷わずこっちに来るだろう。
 となれば、俺は迎え撃つだけだ。

「不安があるとすれば……いや、今は気にしていられないか」

 目を閉じて不安を振り払おうとイメージを固めていく。
 オーガ種の最上位が現れると仮定して、オーガファイターやオーガウィザードの戦い方を上位互換に変換し、頭の中で戦う。
 体が自然に動くとはいえ、わずかな動きの乱れが致命傷につながらないとも限らないのだ。
 やれる事を全てやり、ボスに備えておく。

「………………来たか」

 現れたのは、斥候部隊であろうオーガとオーガファイターが合計七匹。

「貴様らは、何度も倒している」

 魔獣に知恵がないのは周知の事実。それが低ランクであればなおさらだ。
 考えなしに突っ込んできた七匹の魔獣を三度の剣閃で両断し、刀身に付いた血を払う。
 斥候部隊が瞬殺された事に気づいたのか、群れは一瞬だけ足を止めたのだが、しばらくして再び近づいてくる。
 だが、ただ近づいてきたわけではなく、森の奥の方から氷と炎の塊が飛来してきた。

「まあ、そうなるよな!」

 ボスがオーガウィザードを率いているのは当然の事であり、魔法が来るのは予想済み。
 全ての魔法を切り払い、再び様子を窺う。

「……来ないなら、こちらから行こうか!」

 このままでは的になるだけと判断し、俺は群れめがけて駆け出していく。
 1分もしないうちに群れを視界に収めたのだが、その最後方に明らかにボスであろう巨躯を確認することができた。

「なるほど。あいつは――オーガロード!」

 予想通り、群れを率いていたのはSランク魔獣だったようだ。
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