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第二章:『永久の庭』
一
しおりを挟む昼の往診中に懐かしい顔と出会った。
「先生。久しぶり」
まだ若い、とはいえ立派に大人の雰囲気を漂わせた女剣士は気安く片手をあげて言うと、心配そうに付け加えた。
「……覚えてる?」
「あぁ、また恐ろしいことを口走ってくれるな。君がそうして人の顔色を伺うときは、いつも何か面倒ごとを抱えているときだった……」
エルフの青年が皮肉混じりに言って軽く息を吹き出すや、女剣士はぱっと笑顔になった。
「久しぶりだな、インベル。元気そうで何よりだ」
「あはっ、先生っ!」
インベルと呼ばれた女剣士はそう言って少女のように青年の胸に飛び込んだ。エルフの長身からすれば成人した女性であれ少女同然だが、このときはそんな見た目以上に子供っぽく映えていた。
しばらく抱擁を交わしたのち、青年が言った。
「"ミオ"にも変化はないか?」
「もちろん。といっても、普段はぐっすり眠ってるみたいで、よく判らないんだけど」
インベルは腰の長剣の柄を触りながらそう返すと、青年は穏やかに続けた。
「何事もなければ、それでいい。それが落ち着いている、ということだ」
「うん」
それからようやく、青年はその隣にある汚い布袋……もといフードをかぶった小人に目をやる。
周囲の村人は気付く気配がないが、生まれつき魔力の高いエルフの青年の目は誤魔化せない。
中身は小鬼だ。
青年の配慮を先んじて、すかさずインベルが割って入った。
「あっ……先生、コイツは……あー、ちょっと訳アリってやつで……ぜんぜん! 危害はないから!」
「なに、君が連れてるくらいだ。私は何の心配もしていない——が、村人は別だな。……少し待っててくれるか? あと二軒で、今日の分が終わるんだ。積もる話はそれから、家でするとしよう」
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