【休載中】マジエ王国育成計画

ルリコ

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1章 召喚先でも仲良く

002 誘拐紛いの異世界召喚

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 強い日光を感じて目が覚めた。

 うっそうとした木々が周囲を囲むように群生している。
 雲1つなく広がっている青空のもと涼しく心地よい風が吹いている。

 ああ気持ちい~! 最高だな~。

 ………ちょっと待ってほしい。
 僕はそもそも病院を出たところだった。
 リラックスしている場合ではない。

 なんで森林の中にいるのだ。
 手が届くところに僕が乗っていた車椅子を見つけて、それに乗った。


「もしもし。誰か迷子の方はいらっしゃいませんか~?」

 絶賛迷子の高校生はこちらです。
 警察ならこちらまでお願いします。

 何処どこから声がしているのか分からないので、試しに車椅子を動かしてみた。
 するとだんだん声がはっきり聞こえてきたので、方向は合っているようだ。

「反応がないですね。口は塞がっていないという話でしたが」

 それは、「足は使えないけどね!」という意味? 嫌味なの?

「いましたね、声は聞こえているでしょう? 何か言ったらどうなんですか?」
 
 目の前に少年が現れた。
 金髪緑眼という絶対日本人じゃないおうべいじんだろ! とツッコみたくなる外見である。

「僕はビフテキといいます。よろしくお願いします」

 取り敢えずこの少年はビフテキとかいうらしい。

「さて僕にどのような用件が? 警察じゃないようですが?」
「えーっと………用件の前によろしいでしょうか?」
「なんだい?」

 欧米少年は僕より多くの情報を持っている。
 その情報を包み隠さず開示させたい。
 圧をかけて顔に笑みを浮かべながらも目は笑っていない………これで合ってるか?

「お名前を………伺っても?」
「知らずに話しかけていたということはないだろうね?」
「知ってますよ。確認のためですって」

 彼は両手を後ろに回した。

「僕はコウスケ。よろしく」
「はい、コウスケさんですね。分かりました」
「色々知りたいことがある。いいな?」
「………はい。僕が分かることなら」

 取りたかった言質を貰えたので一旦息を吐く。
 無意識に張り詰めていた緊張を解き、先程までの演技を止めた。

「ここは?」
「マジエ王国です」

 真顔で告げられた国名は生憎聞いたことがなかった。

「………は?」
「コウスケさんがいた世界………えーと地球と言いましたね? そこにある国ではありません。
 地球のサブカルチャーにあると聞きましたが、異世界というのはご存じですか?」
「知っている」
「なら話は早いですね。コウスケさん、あなたは異世界召喚されたんですよ」
「召喚?」

 やっぱりコイツ厨二病あたおか
 話についていけない。

「そうです」

 しかし、これが宗教だった場合面倒になる。
 宗教というのは過激である。
 「それを信じない者は例外なく潰す」なんてことは地球の歴史にもあるし、フィクションの作品に登場することもある。

「召喚の理由はですね」
「うん」
「ご安心ください。世界を救えなんて頼みません」
「………?」
「召喚理由はあなたの性格矯正です」
「は?」

 性格矯正が理由の召喚なんかあるか~い、と笑い飛ばしたかった。
 でもできなかった。
 彼は本気みたいだから。

「2ヶ月半ほど前あなたは交通事故に遭い足が動かなくなりましたね。そして今日に至るまでずっと入院していました。
 その入院中、あなたは両親に暴言を吐いたり、友人のメールを既読スルーしたりしていました。
 それだけでなく病院を抜け出しましたね?」

「待てよ、いったん」

 頭が追いつかず話を中断させた。

 なんで。なんで知ってるんだ?

 初対面の欧米少年に軽蔑の視線を浴びせられ、僕はぐるぐる堂々巡りしてしまう。

「続けても?」

「………整理する時間をくれるなら」

「それぐらいは。
 それらの悪い行いを見かねられた女王陛下は、あなたを召喚することに決められました。
 丁度あなたが病院外に出てくれたので召喚したというわけです」

 僕が悪いことをしたのは事実だ。
 反省しているし言い訳をする気もない。
 だが、なぜ異世界の君主に咎められ、問答無用で誘拐紛いのことを受けねばならない?

「意味が、わからない」

 もうお手上げだ。

「これでも丁寧に説明しましたよ」
「あのねえ、僕は異世界という存在自体受け入れきれないんだよ」

 彼は疑問符を浮かべて、突拍子もないことを言った。

「でも概念はあるんですよね?」
「………そういうことか」

 腑に落ちた。
 落ちてしまった。

「どういう意味ですか」
「ここの物語は現実にあるかもしれない設定なんだろ」
「………まあだいたい」
「地球のは違うんだよ」

 と日本の小説について説こうとしたとき、巨体が旋回しながら近づくのが見えた。

「あれに乗ります」
「え?」

 彼は車椅子を忽然と消してから指をパチンと鳴らした。

 あれは………もしかしてフィクションのお約束の最強のあの魔物………では………?

「コウスケさん気が付きましたか? あれはドラゴンです」
「フィクションで見たことがあるけども。高価じゃないの?」
「陛下から借り受けたのです」





 僕は宮殿に来た。
 塔の先端が虹色の雲に隠れて見えない。
 真っ白で背景の空や池と対照的で映える。

 宮殿では少女たちがカウンターで忙しそうに取り次いでいるのが見える。
 “見える”と表現するのは車椅子のため外で待機しているからだ。
 待っていると70代に見える男性とともにビフテキくんが戻ってきた。

「お待たせしました。
 こちらは公爵家ドン三男お気楽5属性を使える天才魔法師のヘビン・アベニア=コナー様です。
 重力魔法で謁見室まで運んでいただきます」

 ビフテキくんの紹介の言葉が宮廷小説風に変換させられる。
 なにが言いたいかと言うと、絶対に逆らってはならず目に止まるようなことをしないよう心がけなくてはならないということだ。
 ドラゴンに乗っていたときに魔法について教えてくれたのを思い出しながら挨拶する。

「お初にお目にかかります、コウスケといいます」

 ラノベによると、初対面の格上の御仁ごじんにはこう挨拶するんだとか。
 声が震えなかったか不安である。

 目を丸くしたコナーさんは、笑い始めた。
 あれ失敗した………!?

「ふぉっふぉっふぉ。そんな深刻な顔をせんくともよいぞ。面白かっただけじゃ」

 そんな言葉を信じる阿呆がどこにいる。

「これまで会ってきた異世界人の中で、貴族話方で話してくるやつはいなかったからの。さてはお主、そういうのが好きなのであろう」
「は、はいっ」

 答えないのは逆に無礼!

「畏まらんくてもよい。魔法に慣れない者は大変だから、お主は目を瞑っておれ」

 魔法を使うところを見たかったが仕方ない。大人しく従った。

「重力魔法、発動」

 コナーさんの声がさっきとどことなく違った。
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