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2章 過去を暴露しよう
021 異世界の夜景
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「羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、羊が4匹………」
僕は全然寝つけない夜を過ごしていた。
夜更かしをしていたわけでも、昼寝をしていたわけでも、体調が悪いわけでもないのに全く寝つけなかった。
羊を数えてもすぐに飽きてしまうので寝つけには効果なしだ。
スマートウォッチには23時半と表示されている。
「どうしようかなぁ。寝れないなあ」
白い天井を見ながら呟く。
明日は数学はないから眠気を誘う授業はない。
ならば今日は眠らずにいてもいい。
オールをすると言っても、どう時間を潰せばいいのだろうか。
僕はこれといって趣味はないし、明日提出する宿題は既に終わっている。
そのとき、僕は異世界の夜景を見たことがないことに気がついた。
6階にテラスがあって夜景が綺麗だと、夜に元気な夜久から聞いた覚えがある。
僕は車椅子に乗ってジャンパーを着て部屋の外に出た。
見回りの職員がいないか警戒しながらエレベーターを降りた。
できるだけ音がしないようにゆっくり車椅子を動かしてテラスへと向かった。
テラスに近づくと人影が見えた。
「誰だろ? 寝れない人が僕以外にもいるのかな」
多分そうだ、と自分で結論づけてもっと近づいていくとそれは見覚えのあった。
黒いロングヘアをポニーテールにしてあって、背丈は160cm前後の少女。
「………夜久?」
夜久だと思われる少女は、ビクンと肩を上下させた。
驚かせてしまったらしい。
「合ってるよね?」
少女は振り向いたが返事をせずに駆け出していこうとした。
慌てて引き止めたが別に用はない。
状況的に引き止めたほうがいいかなと判断したが、なにか言いたいわけではない。
何故引き止めてしまったのだろう。
「なに?」
困惑した表情で夜久が訊ねた。
「なんか用があったんじゃないの?」
「こんな深夜に用があるわけないでしょ」
「そうだけどさ」
声が高く掠れている。
「じゃあ、夜久はなんで来たんだよ?」
「………言う必要ある?」
まさか、泣いていた?
夜久を改めて見ると1つ気づくことがあった。
目が赤い。
ここの近くに灯りはないのに分かるくらいなのだから真っ赤なのだろう。
夜久が怪訝そうに話しかけた。
「話は終わった? 寝たいんだけど」
「いや………目が赤いなあ、と」
「そ、そう?」
明らかに狼狽する夜久。
ここに来た理由は夜遊びに、なんていうおちゃらけたものではないのだと確信する。
「ただ昨日寝るのが遅かったからすぐ寝れなかっただけよ!
コウスケも早く寝なさいね!?
夜久は超特急で去っていった。早口だった。
だが、僕はこの言動によって確信が得られた。
やはり彼女は泣いていたんだろうな、と。
どういう理由かは分からないけど、人に言いたくない理由なのだろうと思った。
夜久が去って1人になったテラスは、黒くて青くて、暗かった。
でも、不思議と 気味は悪くなかった。逆に安心した。
心が腐りかけていると思わされ、自嘲して乾いた笑い声を控え気味に上げた。
「もう寝れないな」
いま帰っても寝られる未来は見えなかった。
異世界の夜景でも見て夜風に当たって、そこで寝落ちしてもいいかなと思い始めた。
もちろん、そんな規則違反をして見つかりでもすれば、ポイントが減ることは間違いないのだが。
車椅子でもテラスに出られる場所を探した。
空を見上げると、キラリと一層輝く星と緑色の月が浮かんでいた。
藍色が壮大すぎて全て飲み込んでしまいそう。
電灯がなかった時代はこんなにも暗いのか。日本の山奥より光がないのでは?
どこぞの文明国のように夜まで起きている人はいないようで音もなかった。
プラネタリウムか。いやこれは本物の空だ。
戻ったらきっと一生見られない。
ただ自転や公転を繰り返しているだけの宇宙に、これだけ感動させられる日が来ようとは。
そして、緑の月、というのはフィクションでもあまり目にしない。大抵赤いのだ。
だが、僕は燃え盛るような月よりも、心が微睡む月のほうが好きだ。
もうこのまま寝てしまおうと目を瞑ったとき、掠れた歌が耳に入った。
あたりを見渡すと、1階の広場に女性が佇んでいるのが分かった。
彼女は、僕の知らない言葉で悲痛な思いを吐き出していた。
言葉は分からない。
しかし、気持ちが揺さぶれる。
後から、なぜ異世界人の女性が、深夜にしかもリカメンテ育成場で歌っているのかと疑問に思った。
ただこのときは、漠然とした不安を抱いていた。
僕は全然寝つけない夜を過ごしていた。
夜更かしをしていたわけでも、昼寝をしていたわけでも、体調が悪いわけでもないのに全く寝つけなかった。
羊を数えてもすぐに飽きてしまうので寝つけには効果なしだ。
スマートウォッチには23時半と表示されている。
「どうしようかなぁ。寝れないなあ」
白い天井を見ながら呟く。
明日は数学はないから眠気を誘う授業はない。
ならば今日は眠らずにいてもいい。
オールをすると言っても、どう時間を潰せばいいのだろうか。
僕はこれといって趣味はないし、明日提出する宿題は既に終わっている。
そのとき、僕は異世界の夜景を見たことがないことに気がついた。
6階にテラスがあって夜景が綺麗だと、夜に元気な夜久から聞いた覚えがある。
僕は車椅子に乗ってジャンパーを着て部屋の外に出た。
見回りの職員がいないか警戒しながらエレベーターを降りた。
できるだけ音がしないようにゆっくり車椅子を動かしてテラスへと向かった。
テラスに近づくと人影が見えた。
「誰だろ? 寝れない人が僕以外にもいるのかな」
多分そうだ、と自分で結論づけてもっと近づいていくとそれは見覚えのあった。
黒いロングヘアをポニーテールにしてあって、背丈は160cm前後の少女。
「………夜久?」
夜久だと思われる少女は、ビクンと肩を上下させた。
驚かせてしまったらしい。
「合ってるよね?」
少女は振り向いたが返事をせずに駆け出していこうとした。
慌てて引き止めたが別に用はない。
状況的に引き止めたほうがいいかなと判断したが、なにか言いたいわけではない。
何故引き止めてしまったのだろう。
「なに?」
困惑した表情で夜久が訊ねた。
「なんか用があったんじゃないの?」
「こんな深夜に用があるわけないでしょ」
「そうだけどさ」
声が高く掠れている。
「じゃあ、夜久はなんで来たんだよ?」
「………言う必要ある?」
まさか、泣いていた?
夜久を改めて見ると1つ気づくことがあった。
目が赤い。
ここの近くに灯りはないのに分かるくらいなのだから真っ赤なのだろう。
夜久が怪訝そうに話しかけた。
「話は終わった? 寝たいんだけど」
「いや………目が赤いなあ、と」
「そ、そう?」
明らかに狼狽する夜久。
ここに来た理由は夜遊びに、なんていうおちゃらけたものではないのだと確信する。
「ただ昨日寝るのが遅かったからすぐ寝れなかっただけよ!
コウスケも早く寝なさいね!?
夜久は超特急で去っていった。早口だった。
だが、僕はこの言動によって確信が得られた。
やはり彼女は泣いていたんだろうな、と。
どういう理由かは分からないけど、人に言いたくない理由なのだろうと思った。
夜久が去って1人になったテラスは、黒くて青くて、暗かった。
でも、不思議と 気味は悪くなかった。逆に安心した。
心が腐りかけていると思わされ、自嘲して乾いた笑い声を控え気味に上げた。
「もう寝れないな」
いま帰っても寝られる未来は見えなかった。
異世界の夜景でも見て夜風に当たって、そこで寝落ちしてもいいかなと思い始めた。
もちろん、そんな規則違反をして見つかりでもすれば、ポイントが減ることは間違いないのだが。
車椅子でもテラスに出られる場所を探した。
空を見上げると、キラリと一層輝く星と緑色の月が浮かんでいた。
藍色が壮大すぎて全て飲み込んでしまいそう。
電灯がなかった時代はこんなにも暗いのか。日本の山奥より光がないのでは?
どこぞの文明国のように夜まで起きている人はいないようで音もなかった。
プラネタリウムか。いやこれは本物の空だ。
戻ったらきっと一生見られない。
ただ自転や公転を繰り返しているだけの宇宙に、これだけ感動させられる日が来ようとは。
そして、緑の月、というのはフィクションでもあまり目にしない。大抵赤いのだ。
だが、僕は燃え盛るような月よりも、心が微睡む月のほうが好きだ。
もうこのまま寝てしまおうと目を瞑ったとき、掠れた歌が耳に入った。
あたりを見渡すと、1階の広場に女性が佇んでいるのが分かった。
彼女は、僕の知らない言葉で悲痛な思いを吐き出していた。
言葉は分からない。
しかし、気持ちが揺さぶれる。
後から、なぜ異世界人の女性が、深夜にしかもリカメンテ育成場で歌っているのかと疑問に思った。
ただこのときは、漠然とした不安を抱いていた。
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