23 / 25
2章 過去を暴露しよう
022 発熱
しおりを挟む
翌朝、僕はいつも通りビフテキくんに叩き起こされた。
睡眠不足だし寒いので粘ったが、すぐに布団を没収された。
「寒っ。嫌だ、エアコン生活に戻りたい」
この世界には電化製品自体はあるが希少らしく部屋にはない。
だから布団がなくなると耐えられないほど寒いのだ。
地球のありがたみが分かる体験である。
「エアコンとやらがなにか分かりませんが、便利なモノなんでしょうね」
「そう超便利」
ビフテキくんはニヤリと唇の端を上げた。
次の言葉が不穏である。
「ですが、それを使うとあなたみたいに、冬に起きられない人が出没するんでしょうね」
出没ってなに。
クマじゃないんだけど。
「もう起きてくださいね? いつになったら自分で起きられるようになるんですか」
さすがに呆れが感じられるので、そろぞろと起き出した。
そのとき、誰かがノックした。
少女の声がビフテキさんいますか、と聞いた。
「………イーディ? こんな時間に? ドア開けますね」
ビフテキくんの同僚らしき少女が彼にになにかを小声で伝える。
彼は頷いて聞いていたが、彼女が退出するときには、ため息を吐いて最悪とでも言いたげな顔になっていた。
「どうしたんだよ?」
「このフロアの住人が熱を出したんです。
薬とか看護師にお金がかかりますし、労働時間が増えるから正直嫌なんですけど」
熱を出した人に同情したわけではなく、効率を気にする本来のビフテキが顔を現したらしい。
面倒臭い事柄を思ってげんなりしていたのか。
少しはお金と自分の負担以外も考えたほうがいいと思ったが、自分のことを棚に上げて言える身ではないので口を噤む。
「具体的に誰?」
「言っていいかは分かりませんが………どうせ知り合いですからね。夜久さんですよ」
途端に忘れかけていた昨夜のことを思い出してしまった。
やはり他人の事情に首を突っ込みすぎてしまったのか。
どうしよう、どうしようと焦るばかりで解決策なんて浮かばない、そんな眠れない夜を過ごしたのかもしれない。
「どうかしましたか?」
「へ?」
突然ビフテキくんの声が耳に入ってきて咄嗟に反応できなかった。
「あ、いや、夜久大丈夫かな~と」
返し方が不自然すぎたか。
汗出てきたかも。
「そうなんですか」
「え、なに」
ビフテキくんが、上から下まで舐め回すように観察する。
観察されるような心当たりはない。
逆にジロジロと見られるほうの気持ちにもなってほしい。
「………あなたも?」
「は?」
「コウスケさん、体調悪いとかありませんよね?」
「なんでそうなった!?」
心のツッコミが叫びとして放出された。
本当に心当たりはない。
急にどうしたのか。
「今日はいつもより反応が悪いですし、夜久さんと昨夜何かやったのかと愚考しまして………」
ビフテキの“何か”に気持ち悪い響きを感じた僕は全否定する。
ほんとに愚考だよ。
ただ夜にばったり会って少し話しただけなのだ。
「夜久さんが治ってから風邪ひくとか止めてくださいね? 今なら看護師料金はタダだから、さっさと白状してください」
タダだから、と言葉を重ねるビフテキくん。
そもそも本当の本当に、(いもしない)神に誓っても僕は風邪でもなんでもない。寝不足なだけである。
3時間睡眠が祟って体調が悪そうに見えるのなら仕方ないが、これまでの会話からしてでっち上げたいだけだろう。
「いや違うし!」
「頑固ですねえ」
頑固でも何でもない。
僕だけの問題ならまだしも、夜久まで疑われているのだ。
否定するに決まっているだろう。
「今日はそんなに寝てないけど、体調は全然問題ない」
「寝不足ですか。ちゃんと寝てくださいね?」
「ビフテキくんこそちゃんと寝てる? 朝早いでしょ」
僕が6時に起こされるのだから、その30分前、5時半には起きているはずだ。
ビフテキくんは慢性寝不足だと思う。
毎日同じ時間に起床・就寝! とよく言われるけど、それよりも睡眠時間の確保のほうが大切だ。
「僕のことはいいですから。はい」
よくないよ、と反論しようとすると、それを封じるように投げ渡された。
慌てて受け止めるとビフテキくんが謝った。
地球で見覚えのある物体だが、ここでも同じような機能つきなのだろうか。
「えっと………これは」
「そっちの世界のと同じです。そちらでは体温計っていうんでしたっけ」
思った通り体温計だった。
でも、僕は本当に何でもないので不要だが?
「どうやったら信じてくれるかなあ。体温計なんていらないよ?」
「もういいです。遅刻しますし。さっさと準備してください!」
説得するのに面倒臭いと思ったビフテキくんは、すぐに諦め体温計を回収した。
そしてすぐに出て行った。
やはりアレは夜久が使うものだったのではないか。
僕は安堵していた。
睡眠不足だし寒いので粘ったが、すぐに布団を没収された。
「寒っ。嫌だ、エアコン生活に戻りたい」
この世界には電化製品自体はあるが希少らしく部屋にはない。
だから布団がなくなると耐えられないほど寒いのだ。
地球のありがたみが分かる体験である。
「エアコンとやらがなにか分かりませんが、便利なモノなんでしょうね」
「そう超便利」
ビフテキくんはニヤリと唇の端を上げた。
次の言葉が不穏である。
「ですが、それを使うとあなたみたいに、冬に起きられない人が出没するんでしょうね」
出没ってなに。
クマじゃないんだけど。
「もう起きてくださいね? いつになったら自分で起きられるようになるんですか」
さすがに呆れが感じられるので、そろぞろと起き出した。
そのとき、誰かがノックした。
少女の声がビフテキさんいますか、と聞いた。
「………イーディ? こんな時間に? ドア開けますね」
ビフテキくんの同僚らしき少女が彼にになにかを小声で伝える。
彼は頷いて聞いていたが、彼女が退出するときには、ため息を吐いて最悪とでも言いたげな顔になっていた。
「どうしたんだよ?」
「このフロアの住人が熱を出したんです。
薬とか看護師にお金がかかりますし、労働時間が増えるから正直嫌なんですけど」
熱を出した人に同情したわけではなく、効率を気にする本来のビフテキが顔を現したらしい。
面倒臭い事柄を思ってげんなりしていたのか。
少しはお金と自分の負担以外も考えたほうがいいと思ったが、自分のことを棚に上げて言える身ではないので口を噤む。
「具体的に誰?」
「言っていいかは分かりませんが………どうせ知り合いですからね。夜久さんですよ」
途端に忘れかけていた昨夜のことを思い出してしまった。
やはり他人の事情に首を突っ込みすぎてしまったのか。
どうしよう、どうしようと焦るばかりで解決策なんて浮かばない、そんな眠れない夜を過ごしたのかもしれない。
「どうかしましたか?」
「へ?」
突然ビフテキくんの声が耳に入ってきて咄嗟に反応できなかった。
「あ、いや、夜久大丈夫かな~と」
返し方が不自然すぎたか。
汗出てきたかも。
「そうなんですか」
「え、なに」
ビフテキくんが、上から下まで舐め回すように観察する。
観察されるような心当たりはない。
逆にジロジロと見られるほうの気持ちにもなってほしい。
「………あなたも?」
「は?」
「コウスケさん、体調悪いとかありませんよね?」
「なんでそうなった!?」
心のツッコミが叫びとして放出された。
本当に心当たりはない。
急にどうしたのか。
「今日はいつもより反応が悪いですし、夜久さんと昨夜何かやったのかと愚考しまして………」
ビフテキの“何か”に気持ち悪い響きを感じた僕は全否定する。
ほんとに愚考だよ。
ただ夜にばったり会って少し話しただけなのだ。
「夜久さんが治ってから風邪ひくとか止めてくださいね? 今なら看護師料金はタダだから、さっさと白状してください」
タダだから、と言葉を重ねるビフテキくん。
そもそも本当の本当に、(いもしない)神に誓っても僕は風邪でもなんでもない。寝不足なだけである。
3時間睡眠が祟って体調が悪そうに見えるのなら仕方ないが、これまでの会話からしてでっち上げたいだけだろう。
「いや違うし!」
「頑固ですねえ」
頑固でも何でもない。
僕だけの問題ならまだしも、夜久まで疑われているのだ。
否定するに決まっているだろう。
「今日はそんなに寝てないけど、体調は全然問題ない」
「寝不足ですか。ちゃんと寝てくださいね?」
「ビフテキくんこそちゃんと寝てる? 朝早いでしょ」
僕が6時に起こされるのだから、その30分前、5時半には起きているはずだ。
ビフテキくんは慢性寝不足だと思う。
毎日同じ時間に起床・就寝! とよく言われるけど、それよりも睡眠時間の確保のほうが大切だ。
「僕のことはいいですから。はい」
よくないよ、と反論しようとすると、それを封じるように投げ渡された。
慌てて受け止めるとビフテキくんが謝った。
地球で見覚えのある物体だが、ここでも同じような機能つきなのだろうか。
「えっと………これは」
「そっちの世界のと同じです。そちらでは体温計っていうんでしたっけ」
思った通り体温計だった。
でも、僕は本当に何でもないので不要だが?
「どうやったら信じてくれるかなあ。体温計なんていらないよ?」
「もういいです。遅刻しますし。さっさと準備してください!」
説得するのに面倒臭いと思ったビフテキくんは、すぐに諦め体温計を回収した。
そしてすぐに出て行った。
やはりアレは夜久が使うものだったのではないか。
僕は安堵していた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる