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第8話:奇跡の美容液で自社(自分)ブランディング! ついでに氷の公爵の呪いもピーリング治療します
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「……重い。なぜ俺が、こんな得体の知れないスライムの体液を運ばされている……」 「そう言わずに! 騎士の皆様も、リハビリだと思って頑張ってください!」
雪の森からの帰路。 唖然として固まっていた公爵様と騎士たちを拝み倒し……というか半ば強引に手伝わせ、私たちは大量の美容液の瓶を城へと運び込んだ。
自室のスマート・スパに持ち込んだ私は、さっそく最終的な商品開発に取り掛かった。
スライムの体液から抽出した、純度100%の天然コラーゲンとヒアルロン酸。
そこに、地下室の貯蔵庫から見つけておいた殺菌・消炎作用のあるドライハーブ(カモミールやラベンダーの近縁種だと思う……)をすり潰して煮出し、エキスを配合していく。
「天然成分だけじゃ防腐剤がないから、日持ちしないわね。……よし、『水魔法』で瓶の内部を完全な真空・無菌状態にしてシーリング!」
カチッ、カチッ、と魔法で密閉していく。
かくして、わずか数時間で辺境発の極上スキンケアアイテム――クリスタル・ボタニカル・セラム(高純度美容液)と、余ったハーブの搾りカスを土魔法で固めた薬用ピーリング石鹸が完成した!
「さて、新しいプロダクトを市場に投入する前に、まずは自社での厳しいテストが必要よね」
私はさっそく服を脱ぎ、全自動温水風呂でしっかりと毛穴を開かせた。
そして完成したばかりの薬用ピーリング石鹸をたっぷりと泡立て、優しく顔と体を包み込むように洗っていく。
「んんっ……! 泡のきめ細かさが尋常じゃなーい!」
古い角質がスルスルと落ちていくのを感じながらお湯で流し、お風呂上がりの肌に、本命のクリスタル・ボタニカル・セラムをたっぷりと塗り込む。
「……っ!? なにこれ、すごい浸透力……!」
塗ったそばから、スライム由来の極上保湿成分が、砂漠のように乾燥していた私の肌にグングンと吸い込まれていく。
ベタつきは一切なく、内側から押し返すような圧倒的な弾力と潤いが生まれた。 仕上げに土魔法で薄い泥パック(ミネラル補給ね!)をして、そのまま魔法のウォーターベッドへダイブする。
「明日の朝が、楽しみ……」
極上のスキンケアと最高の睡眠。美容における最強のコンボをキメて、私は深い眠りについた。
* * *
翌朝。
コンコン、と執務室の扉をノックして、私が入室した瞬間。
「シャルロッテか。昨日のスライム騒動の件だが――」
書類から顔を上げた公爵アレクセイは、言葉を失い、持っていた羽ペンをポトリと床に落とした。
「おはようございます、公爵様! 朝早くからお仕事お疲れ様です!」
私が満面の笑みで挨拶をするとアレクセイは目を大きく見開き、信じられないものを見るように私を凝視したまま、完全にフリーズしてしまった。
無理もない。
鏡を見て、私自身が一番驚いたのだから。
カサカサに粉を吹いていた肌はゆで卵のようにツルンと剥け、内側から発光しているかのような白さと透明感を取り戻していた。
頬には自然な血色が浮かび、指で押せば弾き返されそうなほどのハリと、光を反射するみずみずしさが生まれている。
元々、悪役令嬢シャルロッテは「王太子を虜にするほどの絶世の美女」という設定だったのだ。
そのポテンシャルが、極上の美容液と良質な睡眠によって120%引き出され、圧倒的な美貌となって完全復活を遂げていた。
彼から見れば、王都で着飾っていたどんな令嬢よりも、いや、この世のものとは思えないほど圧倒的に美しく映ったのだろう。
アレクセイが激しく動揺した様子で、視線を彷徨わせる。氷の公爵の耳が、ほんのりと赤く染まっているのを私は見逃さなかった。
(よし! プロダクトの絶対的なエビデンスは示せたわね! ここからが一気呵成の営業トークよ!)
「ふふっ、お気づきですか? これが昨日採取したスライムの成分で作ったクリスタル・ボタニカル・セラムの力です! 実は今日、公爵様にお願いがありまして」
「お、お願い……だと? まさか、また金貨を要求する気か……?」
警戒して一歩後ずさるアレクセイに、私はズイッと歩み寄った。
「昨日負傷した騎士の皆様の火傷に、この美容液と石鹸を使わせてください。スライムの酸による火傷なら、同じスライムの強力な再生能力で細胞分裂を促せば、ポーションよりも早く、しかも痕を残さず綺麗に治せます!」
「……いつもながら何を言っているのか分らんが……騎士たちの、治療?」
「はい! 労働力の損失は、辺境の経済にとって致命的ですからね」
(それにここで騎士たちの火傷を完治させれば、彼らは全員私の熱烈なリピーター兼、優良な労働力として絶対の忠誠を誓ってくれるはず!)
「……それと、もう一つ」
私はさらに距離を詰め、アレクセイの顔――右半分を覆う、赤黒く禍々しい『火傷の痕』を真っ直ぐに見つめた。
「……俺の顔が、醜いか」
アレクセイが自嘲するように目を伏せ、傷を隠そうとする。
「呪い」と恐れられ、周囲から忌み嫌われてきた彼のコンプレックスの象徴。
だが、美容部員の目から見れば、そんなものはただの肌トラブルに過ぎない。
「醜い? とんでもない! むしろ、商品の効能を実践するいい機会ですよ!」
「……は?」
「公爵様、その傷……魔獣の呪いなんてオカルトなものじゃありませんよ。強力すぎる外部からの魔力が皮膚組織に癒着して、極度のターンオーバー異常と血行不良による鬱血を引き起こしているだけです」
「た、たーんおーばー……?」
聞き慣れない単語に困惑する彼をよそに、私はポンと手を打った。
「つまり、古い角質が剥がれ落ちずに分厚く固まっている状態です! 私の作った薬用ピーリング石鹸で表面の古い角質を優しく溶かし、直後にこの美容液で細胞の再生を促せば……絶対に治ります!」
「……馬鹿な。 この傷は高位の神官でも浄化できなかった呪いだぞ。 それを、ただの石鹸とスライムの体液で……」
「神官は肌の構造を理解して祈っているんですか? 違いますよね! 美容は科学であり、論理的かつ物理的なアプローチです! 騙されたと思って、一度私にフェイシャルエステをさせてください!」
私はアレクセイが反論する隙を与えず、彼の手首をガシッと掴んだ。
「さあさあ、VIPルーム……ていうか私の部屋の全自動スパへご案内いたしますわ! 騎士の皆様への福利厚生の一環として、まずはトップである公爵様自らが、この奇跡のプロダクトの効果を実感してくださいませ!」
「お、おい! 引っ張るな! 俺はまだやるとは言って――うわぁぁっ!」
絶世の美貌を取り戻した私の強引すぎる腕力と、有無を言わせぬ営業の圧に引きずられ、氷の公爵は情けない声を上げながら、再び全自動スパへの強制連行を受け入れるのだった。
雪の森からの帰路。 唖然として固まっていた公爵様と騎士たちを拝み倒し……というか半ば強引に手伝わせ、私たちは大量の美容液の瓶を城へと運び込んだ。
自室のスマート・スパに持ち込んだ私は、さっそく最終的な商品開発に取り掛かった。
スライムの体液から抽出した、純度100%の天然コラーゲンとヒアルロン酸。
そこに、地下室の貯蔵庫から見つけておいた殺菌・消炎作用のあるドライハーブ(カモミールやラベンダーの近縁種だと思う……)をすり潰して煮出し、エキスを配合していく。
「天然成分だけじゃ防腐剤がないから、日持ちしないわね。……よし、『水魔法』で瓶の内部を完全な真空・無菌状態にしてシーリング!」
カチッ、カチッ、と魔法で密閉していく。
かくして、わずか数時間で辺境発の極上スキンケアアイテム――クリスタル・ボタニカル・セラム(高純度美容液)と、余ったハーブの搾りカスを土魔法で固めた薬用ピーリング石鹸が完成した!
「さて、新しいプロダクトを市場に投入する前に、まずは自社での厳しいテストが必要よね」
私はさっそく服を脱ぎ、全自動温水風呂でしっかりと毛穴を開かせた。
そして完成したばかりの薬用ピーリング石鹸をたっぷりと泡立て、優しく顔と体を包み込むように洗っていく。
「んんっ……! 泡のきめ細かさが尋常じゃなーい!」
古い角質がスルスルと落ちていくのを感じながらお湯で流し、お風呂上がりの肌に、本命のクリスタル・ボタニカル・セラムをたっぷりと塗り込む。
「……っ!? なにこれ、すごい浸透力……!」
塗ったそばから、スライム由来の極上保湿成分が、砂漠のように乾燥していた私の肌にグングンと吸い込まれていく。
ベタつきは一切なく、内側から押し返すような圧倒的な弾力と潤いが生まれた。 仕上げに土魔法で薄い泥パック(ミネラル補給ね!)をして、そのまま魔法のウォーターベッドへダイブする。
「明日の朝が、楽しみ……」
極上のスキンケアと最高の睡眠。美容における最強のコンボをキメて、私は深い眠りについた。
* * *
翌朝。
コンコン、と執務室の扉をノックして、私が入室した瞬間。
「シャルロッテか。昨日のスライム騒動の件だが――」
書類から顔を上げた公爵アレクセイは、言葉を失い、持っていた羽ペンをポトリと床に落とした。
「おはようございます、公爵様! 朝早くからお仕事お疲れ様です!」
私が満面の笑みで挨拶をするとアレクセイは目を大きく見開き、信じられないものを見るように私を凝視したまま、完全にフリーズしてしまった。
無理もない。
鏡を見て、私自身が一番驚いたのだから。
カサカサに粉を吹いていた肌はゆで卵のようにツルンと剥け、内側から発光しているかのような白さと透明感を取り戻していた。
頬には自然な血色が浮かび、指で押せば弾き返されそうなほどのハリと、光を反射するみずみずしさが生まれている。
元々、悪役令嬢シャルロッテは「王太子を虜にするほどの絶世の美女」という設定だったのだ。
そのポテンシャルが、極上の美容液と良質な睡眠によって120%引き出され、圧倒的な美貌となって完全復活を遂げていた。
彼から見れば、王都で着飾っていたどんな令嬢よりも、いや、この世のものとは思えないほど圧倒的に美しく映ったのだろう。
アレクセイが激しく動揺した様子で、視線を彷徨わせる。氷の公爵の耳が、ほんのりと赤く染まっているのを私は見逃さなかった。
(よし! プロダクトの絶対的なエビデンスは示せたわね! ここからが一気呵成の営業トークよ!)
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「お、お願い……だと? まさか、また金貨を要求する気か……?」
警戒して一歩後ずさるアレクセイに、私はズイッと歩み寄った。
「昨日負傷した騎士の皆様の火傷に、この美容液と石鹸を使わせてください。スライムの酸による火傷なら、同じスライムの強力な再生能力で細胞分裂を促せば、ポーションよりも早く、しかも痕を残さず綺麗に治せます!」
「……いつもながら何を言っているのか分らんが……騎士たちの、治療?」
「はい! 労働力の損失は、辺境の経済にとって致命的ですからね」
(それにここで騎士たちの火傷を完治させれば、彼らは全員私の熱烈なリピーター兼、優良な労働力として絶対の忠誠を誓ってくれるはず!)
「……それと、もう一つ」
私はさらに距離を詰め、アレクセイの顔――右半分を覆う、赤黒く禍々しい『火傷の痕』を真っ直ぐに見つめた。
「……俺の顔が、醜いか」
アレクセイが自嘲するように目を伏せ、傷を隠そうとする。
「呪い」と恐れられ、周囲から忌み嫌われてきた彼のコンプレックスの象徴。
だが、美容部員の目から見れば、そんなものはただの肌トラブルに過ぎない。
「醜い? とんでもない! むしろ、商品の効能を実践するいい機会ですよ!」
「……は?」
「公爵様、その傷……魔獣の呪いなんてオカルトなものじゃありませんよ。強力すぎる外部からの魔力が皮膚組織に癒着して、極度のターンオーバー異常と血行不良による鬱血を引き起こしているだけです」
「た、たーんおーばー……?」
聞き慣れない単語に困惑する彼をよそに、私はポンと手を打った。
「つまり、古い角質が剥がれ落ちずに分厚く固まっている状態です! 私の作った薬用ピーリング石鹸で表面の古い角質を優しく溶かし、直後にこの美容液で細胞の再生を促せば……絶対に治ります!」
「……馬鹿な。 この傷は高位の神官でも浄化できなかった呪いだぞ。 それを、ただの石鹸とスライムの体液で……」
「神官は肌の構造を理解して祈っているんですか? 違いますよね! 美容は科学であり、論理的かつ物理的なアプローチです! 騙されたと思って、一度私にフェイシャルエステをさせてください!」
私はアレクセイが反論する隙を与えず、彼の手首をガシッと掴んだ。
「さあさあ、VIPルーム……ていうか私の部屋の全自動スパへご案内いたしますわ! 騎士の皆様への福利厚生の一環として、まずはトップである公爵様自らが、この奇跡のプロダクトの効果を実感してくださいませ!」
「お、おい! 引っ張るな! 俺はまだやるとは言って――うわぁぁっ!」
絶世の美貌を取り戻した私の強引すぎる腕力と、有無を言わせぬ営業の圧に引きずられ、氷の公爵は情けない声を上げながら、再び全自動スパへの強制連行を受け入れるのだった。
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