転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未

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48話

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「イッテきマース!」
「気を付けてねー!」

ベルは屋上の『天空の薬草園』から、元気よく飛び立った。
背中の羽がキラキラと光の粒子を撒き散らし、風に乗ってぐんぐんと高度を上げていく。

生まれたばかりのベルにとって見るもの全てが新鮮だった。
青い空、白い雲、そして眼下に広がる深い緑の森。 そして一際目立つ塔こそが、主が支配する領域だ。

「マスター、イイ石。リナ、トモダチ。……ウレシイ!」

ベルは空中でくるりと宙返りをした。 召喚される前の記憶は曖昧だ。暗くて何もない場所にいたような気がする。
けれど今は違う。役目がある。仲間がいる。それがベルにはたまらなく誇らしかった。

(ニンゲンのムラ……アッチ!)

ベルは主から送られたイメージを頼りに、森の外縁部を目指して飛び始めた。
[飛行]スキルのあるベルにとって、空の移動は快適そのものだ。木々の枝葉を縫うように、滑らかに風を切って進んでいく。

その時だった。
眼下の森の中で、何かが動いているのが見えた。

「ナニカイル?」

ベルは興味を引かれ、速度を落として高度を下げた。 そこには奇妙で愉快な光景が広がっていた。

「プヨヨ~ン」
「プヨッ、プヨッ」

緑色のプルプルした生き物たちが、一列に並んで行進している。
体の中に苔や石ころを取り込んで、一生懸命に運んでいるのだ。

「アレは……スライム! ナカマ!」

さらにその近くでは犬のような顔をした小柄な魔物たちが、カンカンと岩を叩いている。

「キャン!(良い石だ!)」
「キャンキャン!(運べ運べ!)」

ヘルメットを被ったコボルトたちだ。
彼らはみんな主のために働いている。 その様子が健気で、そして何より楽しそうに見えてベルはつい寄り道をしたくなった。

「ヤッホー! コンニチハ!」

ベルはスライムたちの目の前に、ヒュン! と降り立った。

「プヨッ!?」

先頭を歩いていたスライムが驚いて、ボヨンと跳ね上がった。 
後ろのスライムがそれにぶつかり、ドミノ倒しのようにプルプルと重なっていく。

「アハハ! オモシロイ!」

ベルはクスクスと笑いながら、スライムの周りをくるくると飛び回った。

「プヨ?(新しい仲間?)」
「ウン! ワタシ、ベル! 任務中ナノ!」

ベルが得意げに胸を張ると、スライムたちは「おお~」と感心したように震えた。 
コボルトたちも作業の手を止めて、空飛ぶ小さな妖精を物珍しそうに見上げている。

「ネエネエ、ナニしてるノ?」

ベルはコボルトの頭の上に着地して、ヘルメットをコンコンと叩いた。

「キャン?(俺、採掘。主のために、キラキラ、掘ってる)」 
「キラキラ? ワタシのハネと、ドッチがキラキラ?」

ベルがパタパタと羽を羽ばたかせると、鱗粉がキラキラと舞い散りコボルトの鼻先をくすぐった。

「くしゅんっ!」

コボルトが大きなくしゃみをすると、ベルは「キャハハ!」と笑って空中に逃げた。

「オニごっこ! ツカマエてミテ!」

ベルは森の中をジグザグに飛び回る。 
仕事中だったはずのスライムやコボルトたちも愛らしい新入りに魅了されたのか、休憩がてらなのか、ベルを目で追ったり手を伸ばしたりして相手をしてくれた。

スライムの背中でトランポリンのように跳ねたり、コボルトが振るうツルハシのリズムに合わせて歌ったり。 
ほんの少しの時間だったが、ベルは「ナカマ」たちとの触れ合いを心から楽しんだ。

(……アッ!)

ひとしきり遊んだところで、ベルはハッと思い出した。

「イケナイ! オツカイのトチュウだった!」

主からの命令は『村へ行ってスライムから話を聞くこと』だ。 遊んでいる場合じゃない。

「ゴメンネ! ワタシ、イクね! バイバイ!」

ベルは名残惜しそうに手を振ると、再び空高く舞い上がった。

「プヨヨ~(行ってらっしゃい)」 
「キャン!(頑張れよー)」

下から仲間たちの声が聞こえる。 ベルは嬉しくなってもう一度くるりと宙返りをすると、今度こそ一直線に村の方角へと加速した。

(ミンナのために、ガンバル!)

小さな妖精は大きな使命感を胸に、森を駆け抜けていった。



♢   ♢   ♢

[現在の拠点状況] 拠点名: (未設定・円形の塔) 
階層: 16階建て + 屋上 
DP: 1,600 
訪問者: 1名(リナ) 
召喚中: 
総司令官: [R] ヒーロー・ゴブリン・ジェネラル (Lv.20) 
狩猟部隊長: [R] ヒーロー・エンシェント・ダイアウルフ (Lv.15)
突撃隊長: [R] オーク・デストロイヤー (Lv.15) 
防衛部隊長: [R] スケルトン・バウォーク (Lv.15) 
偵察部隊長: [N] ヴァンパイアバット (Lv.8) 
遊撃・伝令: [R] ベル (Lv.1)
(他、多数) 
侵入者: なし 
その他: ベルが資源回収部隊(スライム・コボルト)と交流し、村へ向かった。

♢   ♢   ♢



スライムたちと別れ、ベルは再び森の上空を飛んでいた。 
村まではもう少し距離がある。

「ランラン♪」

鼻歌交じりで飛んでいると、突然、下草がガサガサと揺れた。 
殺気──生まれたばかりのベルでも肌で感じるほどの敵意が、下から突き刺さる。

「!?」
「グルルルゥ……!」

茂みから飛び出してきたのは黒い毛並みを持つ狼だった。 
[N] シャドウウルフに似ているが知性の光がない野生の魔物だ。 しかも一匹ではない。二匹、三匹……。

[N] ワイルド・ドッグ × 3

彼らは木々を蹴って高く跳躍し、空中のベルに喰らいつこうと牙を剥いた。

「キャッ!? テキ!?」

ベルは空中で急停止し、慌てて小さな手をかざした。 
屋上で練習したイメージを思い出す。風よ、刃となれ!

「エいっ! [ウィンドカッター]!」

ヒュンッ!!

ベルの手から放たれた不可視の風の刃が先頭のワイルド・ドッグを直撃した。 
スパン! と乾いた音がして、魔物の首が空中で跳ね飛ぶ。

「ヤッタ! タオシタ!」

ベルは初めての実戦での勝利に目を輝かせた。 
自分の力が通じる。それが嬉しくて、彼女は空中でガッツポーズをした。

だが──それが油断だった。

「ガウッ!!」
「エ?」

ベルの背後。木の枝に潜んでいたもう一匹のワイルド・ドッグが死角から音もなく飛びかかっていたのだ。 
魔法を撃った直後の硬直。背後への警戒不足。 戦闘経験の無さが致命的な隙を生んだ。

鋭い牙が、ベルの小さな体に迫る。

(アッ……!)

避けられない。ベルがギュッと目を閉じた、その瞬間。

ヒュオッ────ドスッ!!

風を切る鋭い音が響き、何かがワイルド・ドッグの眉間を貫いた。

「ギャンッ!?」

ベルに届く寸前にワイルド・ドッグは横殴りに吹き飛ばされ、幹に縫い付けられた。 
胴体には、一本の矢が深々と突き刺さっている。

「エ?」

ベルが驚いて目を開けると、茂みから緑色のマントを羽織った影が音もなく姿を現した。 
手には弓。鋭い瞳。[N] ゴブリン・レンジャーだ。

探索部隊の斥候の彼は弓を下ろすと、震えるベルに向かって、無言で「大丈夫か?」と問うように片手を挙げた。
さらにその後ろから、重厚な足音と共に圧倒的な威圧感が近づいてくる。

「グルァ(敵は排除したか?)」

現れたのは、全身を鎧で包んだ屈強な戦士たち。
[N] ホブゴブリン・ファイター × 2

そして更に背後から、彼らを率いる深紅のマントを羽織った巨躯の指揮官。 
腰には装飾の施された[将軍の魔剣]を帯びる歴戦の勇者。
[R] ヒーロー・ゴブリン・ジェネラルだ。探索任務中のゴブリン部隊が偶然居合わせたのだ。

「アナタたちは……!」

ベルは彼らから漂う気配を感じ取った。
怖い顔をしているけれど、違う。あの野生の狼たちとは違う。 主と同じ「におい」がする。

「ナカマ!ナカマ!」

ベルが降りていくと、ジェネラルが興味深そうにベルを見つめた。

「グルル……(お前は新入りか。魔法の威力は良いが、脇が甘いぞ)」

ジェネラルは呆れたように鼻を鳴らしたが、目には未熟な同僚を気遣う色が浮かんでいる。
レンジャーがベルの近くに寄り、「次は気をつけろ」と言うようにジェスチャーを取る。

「アリガトウ! タスカッタ!」

ベルがお礼を言うと、ゴブリンたちは「気にするな」とばかりに武器を掲げた。 
言葉は完全には通じないかもしれない。でも、同じ主に仕える者同士の絆が、そこには確かにあった。

「ワタシ、ムラにイクの! オツカイ!」 
「グルァ……(そうか。では行け。ここは我々が制圧する)」

ジェネラルがマントを翻し、剣で先を促す。 
ベルは彼らに向かって大きく手を振ると、今度こそ油断しないように周囲を警戒しながら再び空へと舞い上がった。

(ナカマ、ツヨイ! カッコイイ! ……ワタシも、モットがんばる!)

頼もしい援軍に背中を押され、ベルは村を目指して一直線に飛んでいった。
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