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第四章
【閑話】半魚人
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これは、ユキがまだ12才の冒険者になる前のお話し。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お~い! バックスが1m越えのシャーブッカをやっつけたぞ!」
大きな声を出しながら、元気に走っているのはお調子者のマヤールだ。
その奥で満面の笑みでピースサインをバッカスがしている。
暑い日が続くと、サクラビの子供たちは近くの湖まで行って、泳ぐか。その奥にあるモンスターが出る方の湖で戦闘をするかの日常を送っていた。
シャーブッカと言うのは、この湖の主流のモンスター。魚の姿をしているが頭には固いコブ。固い鱗。そして固いヒレを持っている。
小さければ30cmほどだが、大きとなれば3mを越える。体当たりか、尾での叩きしかない為、子供でも倒せるほどのモンスターだった。
現代の子供たちが魚釣りで、釣った魚の大きさを競いあうように、サクラビの子供達は倒したモンスターの大きさを毎年競いあっていた。
「ユキ。ついに敗けを認める時が来たんじゃないか?」
「ユキも凄いけどバックスもやるからな!」
「ユキだって本気を出せばもっと大きいのいけるよ!」
ユキの周りの子供達は、誰が一番凄いのか? に興味津々だ。
「ただの1mでしょ? 見てなよ。かるーく越えるから!」
そう言うと、ユキはいつものように湖に飛び込みモンスターを探す。
ちょっと大きいくらいじゃビックリさせられない。狙うなら2mは越えたい。
ユキも1mクラスは何度も倒しているが、2mとなると1度もなかった。
さすがに2mを越えてくると、《ただの体当たり》では済まない。
骨が折れるだけならまだ良いが、死ぬことだってある。
今の大人達も同じことをして遊んできた。だから骨折はしても死ぬまではやらないだろうと、この遊びを黙認している。
それでもユキが2mのシャーブッカを狙うのは、子供ながらのプライドだった。
小さいモンスターには目もくれず、潜水をしながらしばらく泳いでいるが、そこそこのサイズなら見つかるが、2mとなると見つからない。
中央の深い所まで潜ってみよう。と、水深3mほど行ってみると遂に見つけた。
ユキの武器は両親に貰った小刀。武器屋らしく切れ味は折り紙つきだ。
正面には絶対に行かないように。
そして、尾での叩きにも注意しながらサイド攻撃を続ける。
いくら切れ味が良いと言っても、相手は2mを越えるのだ。そうそう致命傷を与えられず、水面に戻って空気を肺に入れる。
近くまで泳いできている子供達は、
「でっかくね!」
「あんなの無理だろ!」
「やめた方がいいって!」
と、ユキに言葉をかけるが「大丈夫! コツはつかんだから!」と、聞き耳を持たずに再度シャーブッカに挑みに行く。
『私の力では、たいしたダメージは与えられない。どうしたら?』と、考えながらもなかなか良い案は出てこない。
サクラビには、戦闘を教えてくれる大人はいない。冒険者になるなら自分で強くならなければならない。
『力がないなら、その代わりは?』
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
『あっ!』
唯一ユキが持っているスキル【俊敏】
これを手にだけ意識して、突きの速度を早めればいけかもと考える。
何度も攻撃を繰り返して痛めた鱗に、今後は斬りつけではなく、俊敏を使った突きの連擊を浴びせる。
ブスッ。ブスッ。ブシュ! ブスッ!
と、鱗を突き破りダメージを与えることに成功し、その後は突きを繰り返した。
やっとの思いで、2m級のシャーブッカを倒して水面に出ると、周りからの祝福を受けた。
「ユキは半魚人だよ! 水中の動きとんでもなかったもん!」
そう叫んだのは、お調子者のマヤールだ。
子供と言うのは恐ろしいことに意味は分からなくても、耳に残った言葉を発してしまう。
「ユキ、半魚人じゃーん!」
「半魚人だな!」
「ユキちゃんって半魚人だったんだー!」
この日から湖に行く度に、《半魚人》と呼ばれる事になる。
この時はユキも半魚人の意味が解らず、褒められていると思っていた為、素直に受け入れたが4年が経ったある日に、図鑑で半魚人を知る。
勿論、その後にマヤールがビンタをされたのは言うまでもないだろ
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「お~い! バックスが1m越えのシャーブッカをやっつけたぞ!」
大きな声を出しながら、元気に走っているのはお調子者のマヤールだ。
その奥で満面の笑みでピースサインをバッカスがしている。
暑い日が続くと、サクラビの子供たちは近くの湖まで行って、泳ぐか。その奥にあるモンスターが出る方の湖で戦闘をするかの日常を送っていた。
シャーブッカと言うのは、この湖の主流のモンスター。魚の姿をしているが頭には固いコブ。固い鱗。そして固いヒレを持っている。
小さければ30cmほどだが、大きとなれば3mを越える。体当たりか、尾での叩きしかない為、子供でも倒せるほどのモンスターだった。
現代の子供たちが魚釣りで、釣った魚の大きさを競いあうように、サクラビの子供達は倒したモンスターの大きさを毎年競いあっていた。
「ユキ。ついに敗けを認める時が来たんじゃないか?」
「ユキも凄いけどバックスもやるからな!」
「ユキだって本気を出せばもっと大きいのいけるよ!」
ユキの周りの子供達は、誰が一番凄いのか? に興味津々だ。
「ただの1mでしょ? 見てなよ。かるーく越えるから!」
そう言うと、ユキはいつものように湖に飛び込みモンスターを探す。
ちょっと大きいくらいじゃビックリさせられない。狙うなら2mは越えたい。
ユキも1mクラスは何度も倒しているが、2mとなると1度もなかった。
さすがに2mを越えてくると、《ただの体当たり》では済まない。
骨が折れるだけならまだ良いが、死ぬことだってある。
今の大人達も同じことをして遊んできた。だから骨折はしても死ぬまではやらないだろうと、この遊びを黙認している。
それでもユキが2mのシャーブッカを狙うのは、子供ながらのプライドだった。
小さいモンスターには目もくれず、潜水をしながらしばらく泳いでいるが、そこそこのサイズなら見つかるが、2mとなると見つからない。
中央の深い所まで潜ってみよう。と、水深3mほど行ってみると遂に見つけた。
ユキの武器は両親に貰った小刀。武器屋らしく切れ味は折り紙つきだ。
正面には絶対に行かないように。
そして、尾での叩きにも注意しながらサイド攻撃を続ける。
いくら切れ味が良いと言っても、相手は2mを越えるのだ。そうそう致命傷を与えられず、水面に戻って空気を肺に入れる。
近くまで泳いできている子供達は、
「でっかくね!」
「あんなの無理だろ!」
「やめた方がいいって!」
と、ユキに言葉をかけるが「大丈夫! コツはつかんだから!」と、聞き耳を持たずに再度シャーブッカに挑みに行く。
『私の力では、たいしたダメージは与えられない。どうしたら?』と、考えながらもなかなか良い案は出てこない。
サクラビには、戦闘を教えてくれる大人はいない。冒険者になるなら自分で強くならなければならない。
『力がないなら、その代わりは?』
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
『あっ!』
唯一ユキが持っているスキル【俊敏】
これを手にだけ意識して、突きの速度を早めればいけかもと考える。
何度も攻撃を繰り返して痛めた鱗に、今後は斬りつけではなく、俊敏を使った突きの連擊を浴びせる。
ブスッ。ブスッ。ブシュ! ブスッ!
と、鱗を突き破りダメージを与えることに成功し、その後は突きを繰り返した。
やっとの思いで、2m級のシャーブッカを倒して水面に出ると、周りからの祝福を受けた。
「ユキは半魚人だよ! 水中の動きとんでもなかったもん!」
そう叫んだのは、お調子者のマヤールだ。
子供と言うのは恐ろしいことに意味は分からなくても、耳に残った言葉を発してしまう。
「ユキ、半魚人じゃーん!」
「半魚人だな!」
「ユキちゃんって半魚人だったんだー!」
この日から湖に行く度に、《半魚人》と呼ばれる事になる。
この時はユキも半魚人の意味が解らず、褒められていると思っていた為、素直に受け入れたが4年が経ったある日に、図鑑で半魚人を知る。
勿論、その後にマヤールがビンタをされたのは言うまでもないだろ
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