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第一章

薬草の代わり

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 片道10時間もあるので無駄話しをする時間も多く、最近受けたクエストや、効率の良いクエスト、二度と受けたくないクエストetc⋯⋯

 あれ、仕事の話しか出来ない。こりゃ、モテねーわけだ。ユキにすらこれじゃ、今後女性とデートなんてシチュエーションになってもつまらない男のレッテルを貼られてしまう。今後はプライベートの会話を増やすためにも遊びに出掛けた方がいいなと思う。

「そーいえば、外でのクエストや討伐をするとき薬草持っていくじゃん。あれかさばるから何か工夫を発明できたら、ボロ儲けだよな(笑)」

「えっ? まだ、薬草使ってるんですか? もしかしてバカ?」
 うっわ。バカにバカって言われたショック。

「ユキは薬草使ってないの?」

「薬草使ってるのってEランクまでですよ(笑)
 Dランククエスト以上だと薬草では回復量は足りないですし、手間ですからね。普通はポーションを使いますよ」

「ポーション? あるの!?」

「いや、アイテム屋に普通に置いてあるじゃないですか。薬草の隣に⋯⋯」

 いつも行くアイテム屋を思い出す。そんなものあったけかな⋯⋯田舎の野菜売り場のように棚にバラバラと置いてあるアイテムの中で、薬草しか見てなかったから他の物の記憶が薄い。

 ん、あれか? 細瓶に入った水色の液体。

 薬草を買う度に、勧めてきたやつか。日本人特有のまずは拒否の精神が裏目に出た。『ご一緒にポテトもいかがですか?』と言われれば何となく断る。

「確かに良く薬草を買うときに勧められたわ。でも20kもするじゃん。薬草の5倍だよ。高くない?」

「ヒデさん。ポーションは一気に一瓶使えば、薬草の効果の10倍ですよ。少しずつ使っても約束よりコストいいですし。」

 マジかよ! 店のおっちゃんもっとグイグイオススメしてくれよ⋯⋯説明されてたら間違いなく買うわ。

「ちなみに、ナカイトにも売ってる?」

「⋯⋯どこにでも売ってますよ。ヒデさんは、私がいないとダメですね(笑)何も知らないし、気持ち悪いし。」

 何も知らないのは認めよう。一緒にいてくれれば知識も付く。それは助かる。
 でも、気持ち悪いのは関係ないだろ。精神攻撃は反則だぞ。時間差でイラッてきちゃうもん。

「確かに一緒にいてくれた方が助かるな。でもそれなら他の奴に頼むよ」
「えっ?何でですか?」

 まさか気づいてないだと⋯⋯

「そりゃそうだろ。口で勝てなくなるとスキル使ってるのか知らんけど、ビンタしてくるじゃん。バカでビンタする奴と一緒に痛いってやつは、それこそ痛いやつだぜ」

 お、なかなか上手いことを言えたな。
 いよ、座布団一枚! とはいかず、代わりにビンタを貰えた。

 クソッタレ!
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