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第五章

タカの思い出

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『お前らには才能がある!  さすが俺の子だ!』

 それが父さんの口癖だった。

 僕とアンザは、子供の頃から同年代に比べて運動神経が良かった。そして冒険者としての知識も多かった。それは父さんのおかげだろと思う。今は果物屋を営んでいる父さんが、一流の冒険者に育てたくれた。

 暇さえあれば山や川に連れていってもらい、遊びの中で多くを学んだ。

 運動神経は父から、性格は母から受け継いだ。
 おっとりした、愛情に溢れた母。
 ただ、極度の人見知りだった⋯⋯。

 父さんは酔っぱらう度に『母さんと話せるまで本当に大半だった』と、言っていた。

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 年月も経ち、そんな僕は当然のように冒険者になり、翌年にはアンザも冒険者になった。
 ギルド依頼を着実にこなし、Cランクになったその日に、珍しく父さんから真面目な話しがあると二人とも呼ばれた。

『お前も大概だが、アンザは母さん並みだ⋯⋯。アンザを連れて旅に出ろ。ここにいちゃ二人とも人見知りのままだ。それでは、周りから頼られる冒険者にはなれない。だから色んな人と交流し一流の冒険者になってこい!』

 僕達は自分でも人見知りだとは気づいていたが、この時の父さんの顔を見るに、思っていた以上にマズイいのだと理解した⋯⋯。


「「旅立ちの挨拶なんてハードルが高すぎる」」
 と、断ったが、
『手紙を書け!』と、怒られ旅立ちを決意した。


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 あれから、色んな所を回ったがどこに行っても僕達は変わらなかった⋯⋯。

「はぁ~⋯⋯」

 と、ため息をつきながら夜のバーで二人で項垂れていた。
 僕には女性が、アンザには男性が定期的に話しかけては来るが、誰もが真剣に冒険者としての僕達を求めていなかった⋯⋯

「ねぇ!貴方達二人パーティーなんだってな。此方も二人だ。今日からは四人パーティーって事で宜しく頼むよ!」

 不意に声をかけられ、勝手に話しを進めてくる。この人こそがマイコさんだった。

「おいおい、急に見知らぬ人に絡むなよ。相手の個とを考えくれよな」

「町で話題になってた、人見知りの美男美女パーティーってこの人の事だろう?  むさ苦しい男との二人旅より、私は美男美女を含めたパーティーがいいのだ!」

 自信に満ちたその姿が、僕達にはとても眩しくて、二つ返事でマイコさんのパーティーに加わった。



 パーティーに加わるうえで約束事が二つ出来た。

 一つ、【兄弟だとバレないようにすること】
 兄弟だとバレれば、ナンパしてくる輩が近づいて来るから。

 一つ、【それぞれがキャラ設定を全うすること】
 演じることで、目線が変わり、人見知りも治るから。

 後からヒデ君に教えてもらったことだけど、キャラ設定は、マイコさんがそういうプレーをしたかったからで、理由は口実だってこと⋯⋯。


 ただそれでも、人見知りは完全にはなってないけれど、僕達は人と話すことが出来るようになったし、結果オーライってやつかな!
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