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三章 勇者と偽勇者と恩人勇者。

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 そうして昨日の敵は今日の友。

 素直じゃない魔族とは相性がいいのか、ユリスとなんだか打ち解けた俺は「お詫びにケトマゴの家にあるサイズの合う服をどれでもあげる!」と言われて、今に至る。

 実はこのあと、アゼルとデートへ行く約束をしているのだ。

 昨日は騒動の名残もあり回復に時間をかけた。今日は元気ハツラツ。むしろウキウキ。二日前までものはいいようだったデートが、今日はれっきとしたデートである。

 スウェンマリナでデートをしないと、ライゼンさんからの任務に失敗だからな。

 そんな大義名分を振りかざし、ちょっとだけ寄り道。

 滞在日数が一日増え、今日はデートをしてから魔王城に帰る予定となっている。
 正直、俺は浮かれているぞ。フワフワだ。きっと頑張れば空だって飛べるさ。


「まったく……お前がまさかアレが一張羅で、それをものの見事に引き裂かれて帰ってくるなんてね……だからいざデートって時にこうなるんだよ」


 俺の裸体を測り終わったユリスが、ウォークインクローゼットに入って服を漁りながら呆れた様子で言う。

 それについて行き漁る様子をながめながら、痒くもないのに頬を掻いた。

 そう言われると俺の面倒を見ることになったユリスに申し訳ない気がする。


「着の身着のまま冒険にでて、あれよあれよと今に至るからな。自分の持ち物はほとんどないんだ」

「まぁ血を提供してるとはいえ、家畜ってヒモだからね」

「あう……それは俺も気にしている……一応今はお菓子屋さんをして小遣い稼ぎをしてはいるぞ。入り物はちゃんと自腹を切りたいからな。みじん切りしたい」

「いや今の嫌味なんだけど! ってか人間が魔界でお金稼げるわけないはずなのになに軟禁されながら普通に開業してんのさ! ムカつくことにベタ惚れされてんだから養われてなよっ!」

「ベタ惚、いや、なら余計俺も頑張りたい」

「はぁ~……ほんッとうにお前って無償で優しくされるの慣れてないんだね」

「ち、違う。俺はただ、されるよりしたい性格なんだ。本当は俺が養いたい。もし今後仕事を貰えるなら、アイツはポケットマネーで好きなことをしつつのんびりと書類でも捌いて空いた時間は趣味にでも使ってくれれば……」

「なんでお前無駄に旦那力高いの?」

「うひっ」


 なんだか美化されているので本当はワガママな俺の理想の同棲生活を語ると、信じられないものを見るような目つきでスパンコールのついた蝶ネクタイを投げつけられた。

 痛い。額にヒットしたぞ。




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