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十一皿目 魔界立ディードル魔法学園

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 ほのぼのとつい魔王城にいる時のように穏やかな空気を出しつつも、話を聞く。

 するとどうやらゴンザレスが、迂闊にアゼルの背後で魔法を使おうとしたみたいだ。

 それはちょっと死に急ぎがすぎるぞ? ゴンザレス。

 アゼルの背後で殺気を漏らせば、うっかり反撃されるのも頷ける。

 ただ通り道だから蹴り飛ばしたとかなら叱るんだが、攻撃しようとしたなら話は別だ。

 とはいえ突然初対面の体験学生を攻撃するわけがないので、たぶんそうしないといけない理由があったんだろうな。

 チカチカと星を飛ばしているゴンザレスと真っ青で言葉を失う生徒たちのためにも、ちゃんとしないと。

 俺はアゼル贔屓をしないように、アゼルに謝罪をするよう言い含めた。

「うっ、……悪かった、クソガキ」
「ぐはっ!」

 アゼルはバツが悪そうにしながらも、ゴンザレスに近づき彼をひょいと抱える。

 そして手近な空席にゴンザレスをゴシャッと投げて座らせ、自分も俺の指定した席にちゃんと座った。

 うん、いいこだ。

 これでいいだろ? と言いたげに見えない目元でチラチラと俺を伺う。

 褒められ待ちをしているアゼルに犬耳が見える気がするが、たぶん気のせいだ。

「「「こ……今世紀最弱じゃなくて、最強だったぁぁぁあああぁあぁ……ッ!」」」

 戦慄するクラスメートたちのユニゾンした小さな声なんて、二人揃ってしまった俺たちの耳には入らない。

「よし、授業にもどるぞー。ちゃんと間違えないように、気をつけて書き写すように。いいな?」
「覚えてる場合はどうすりゃいいんだ?」
「うん? そうだな、他のみんなの邪魔にならないように席についてなにかしているといい。余裕が有るなら、できてない子に教えてあげるのもいいな」
「シャ、じゃねぇ。先生見てるぜ」
「誰の邪魔にもならないからいいぞ。……ふふふ。それじゃあかっこよく見えるように頑張ろう」
「(かわいい)」

 アゼルがゴンザレスの背後を取る姿を視認できずがなかった生徒たちを後目に、のんびりと授業に戻る。

 二人揃ってしまったがために、無意識にいつも通りののほほんとした会話を交わしてしまった。

 うーん、俺たちはどこにいても一緒にいるとこうなるな。

 心のどこかでやっぱり俺も恋しかったのか、浮かれた脳では微塵も違和感を感じないまま、ツッコミ不在の呑気な授業は進んでいったのだった。

 ──余談だが。

 ゴンザレスは気絶したままだったが、うっかり意識を刈り取ってしまったアゼルが黙って俺を見つめながら、処理をした。

 手元ノールックで魔法陣を書き写したメモをそっとポケットにねじ込んでいたので、きっと大丈夫だ。

 アゼルは俺や魔王城の家族に手を出さなければ、基本的に温厚な平和主義者の魔王様である。

 なのでこのようにツンの後にはデレる、自慢の旦那さんなのだ。



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