誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

文字の大きさ
57 / 454
第三話 概ね普通の先輩後輩

22



 普段から習慣的なトレーニングをしているのか、無駄に引き締まった体をしている三初を憎たらしく思う。

 スーツの上からじゃ俺よりひょろく見えるくせに、脱げば凄いんですってか。

 俺のほうが厚みも肩幅もあんだよ。
 なのに簡単に組み敷きやがって、こっちはお前のデケェアレで犯されて体ギシギシ言ってんのに涼しい顔すんなド鬼畜野郎。

 申し訳なさそうにするか俺に敬意を払いやがれ。もしくは死ね。

 あからさまに不貞腐れると、三初は愉快そうに口角を上げて俺の鼻頭をきつく摘む。

 前フリのない嫌がらせになにすんだと唸れば、返事もなく手が離された。いつも思うが自由過ぎるんだよ、コイツ。しかもだいたい誰にでもこうだ。

 それが許されるのは仕事ができるからだったり、イケメンだからだったり、要領が良くて抜群のタイミングで塩を送るからだろう。なんつーか目がいい。

 負けず嫌いが疼いて、じっと観察する。
 敵を打ち負かすにはまず知らねば。

 少し湿ったハニーブラウンの髪。ちょっと美味そう。蜂蜜、いや濡れてるとメープルだな。メープルっぽい。

 そして普通より少し色素の薄い瞳。
 二重でまつ毛長いのと、目尻までの山がスっとしている。

 甘い色味の生き物なのにクールに見えるのはこの目と、男に違いないが綺麗な顔立ちのせいだろう。美形はなにかと得だ。

 三初はこの顔面偏差値のおかげで、社内の女子社員には密かに人気がある。

 中身が歯に衣着せぬ物言いと横暴で自由すぎる暴君だから、遠巻きにヒソヒソキャーキャー言われるぐらいだけどな。

 バレンタインにチョコを直接はあまり渡されないが、デスクには知らない間に山と積まれるタイプである。

 ……はっ! つーことは、俺もイケメンに生まれてたら年一はチョコがタダで食べ放題だったのかよ……!

 イケメンに嫉妬はあまりしなかったが、そう思うと顔のいいやつを恨みたい気分になった。甘いものは正義だ。唯一の裏切らない癒し。

 チクショウ。なんでコイツがモテて俺はモテねぇんだ? 性格だけなら勝ってると思う。たいていの人類がコイツより節度を持って生きてるだろ。

 そういう意味なら下から数えたほうが早いような男だ。
 ……性格以外は敗北してるとか、わかりきったことは言うんじゃねェぞ。

 いいや、諦めるのはまだ早い。
 うんうんと唸りながら三初の弱点を考えている俺を本人が〝またミラクルアホ回路絶好調なんだろうなぁ〟と眺めていることなんて、ちっとも気がつかない俺である。


「三初、お前学校のテストの平均点いくつだった?」

「サバ読み発言の次はテストですか。あー……あんまそういうの気にしたことないですね」

「文系基本何点だ」

「モノによりますけど、だいたいいつも九十いくらとか。暗記はできますが、作文がね……教師によって違うんだよなぁ」

「理系は」

「百?」

「得意科目」

「数学。てか学校のテストで九十以下とったことない」

「もういい、道徳の授業だけ受け直して来い。テメェとは仲良くなれねぇ!」

「ふっ、先輩の平均点は?」

「…………五十」

「うっわ。絶対赤点回避のためにキレながらすっげぇ勉強してそれでしょ」


 黙れ。見てきたように当てンじゃねぇよ。これだから頭のイイやつとは仲良くなれないんだ!

 ちなみに冬賀の頭は普通なのに要領がよくて、赤点を取ったことがない。
 そして教えるのが壊滅的に下手くそだったから、俺の役には立たなかった。

 閑話休題。
 フンッ、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。




感想 137

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。