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第三話 概ね普通の先輩後輩
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普段から習慣的なトレーニングをしているのか、無駄に引き締まった体をしている三初を憎たらしく思う。
スーツの上からじゃ俺よりひょろく見えるくせに、脱げば凄いんですってか。
俺のほうが厚みも肩幅もあんだよ。
なのに簡単に組み敷きやがって、こっちはお前のデケェアレで犯されて体ギシギシ言ってんのに涼しい顔すんなド鬼畜野郎。
申し訳なさそうにするか俺に敬意を払いやがれ。もしくは死ね。
あからさまに不貞腐れると、三初は愉快そうに口角を上げて俺の鼻頭をきつく摘む。
前フリのない嫌がらせになにすんだと唸れば、返事もなく手が離された。いつも思うが自由過ぎるんだよ、コイツ。しかもだいたい誰にでもこうだ。
それが許されるのは仕事ができるからだったり、イケメンだからだったり、要領が良くて抜群のタイミングで塩を送るからだろう。なんつーか目がいい。
負けず嫌いが疼いて、じっと観察する。
敵を打ち負かすにはまず知らねば。
少し湿ったハニーブラウンの髪。ちょっと美味そう。蜂蜜、いや濡れてるとメープルだな。メープルっぽい。
そして普通より少し色素の薄い瞳。
二重でまつ毛長いのと、目尻までの山がスっとしている。
甘い色味の生き物なのにクールに見えるのはこの目と、男に違いないが綺麗な顔立ちのせいだろう。美形はなにかと得だ。
三初はこの顔面偏差値のおかげで、社内の女子社員には密かに人気がある。
中身が歯に衣着せぬ物言いと横暴で自由すぎる暴君だから、遠巻きにヒソヒソキャーキャー言われるぐらいだけどな。
バレンタインにチョコを直接はあまり渡されないが、デスクには知らない間に山と積まれるタイプである。
……はっ! つーことは、俺もイケメンに生まれてたら年一はチョコがタダで食べ放題だったのかよ……!
イケメンに嫉妬はあまりしなかったが、そう思うと顔のいいやつを恨みたい気分になった。甘いものは正義だ。唯一の裏切らない癒し。
チクショウ。なんでコイツがモテて俺はモテねぇんだ? 性格だけなら勝ってると思う。たいていの人類がコイツより節度を持って生きてるだろ。
そういう意味なら下から数えたほうが早いような男だ。
……性格以外は敗北してるとか、わかりきったことは言うんじゃねェぞ。
いいや、諦めるのはまだ早い。
うんうんと唸りながら三初の弱点を考えている俺を本人が〝またミラクルアホ回路絶好調なんだろうなぁ〟と眺めていることなんて、ちっとも気がつかない俺である。
「三初、お前学校のテストの平均点いくつだった?」
「サバ読み発言の次はテストですか。あー……あんまそういうの気にしたことないですね」
「文系基本何点だ」
「モノによりますけど、だいたいいつも九十いくらとか。暗記はできますが、作文がね……教師によって違うんだよなぁ」
「理系は」
「百?」
「得意科目」
「数学。てか学校のテストで九十以下とったことない」
「もういい、道徳の授業だけ受け直して来い。テメェとは仲良くなれねぇ!」
「ふっ、先輩の平均点は?」
「…………五十」
「うっわ。絶対赤点回避のためにキレながらすっげぇ勉強してそれでしょ」
黙れ。見てきたように当てンじゃねぇよ。これだから頭のイイやつとは仲良くなれないんだ!
ちなみに冬賀の頭は普通なのに要領がよくて、赤点を取ったことがない。
そして教えるのが壊滅的に下手くそだったから、俺の役には立たなかった。
閑話休題。
フンッ、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。
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