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第三話 概ね普通の先輩後輩
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しかしながら三初は人間性を犠牲にしたのかそれほど頭も要領もいいくせに、絶対に自分にと言われた仕事以外はしない。
業務外のコミュニケーションや世辞やオブラート、社会人としてってやつも必要最低限にしか使わない。持ってんのによ。
初めて会った時はもう少し全ての人間に対して完璧な猫を被っていた……ような気がする。いや、初めから全開だったかも。わかりにくいからよくわかんねぇ。
プライベートは知らんけど、出山車以外のやつとつるんでるのも見たことねぇな……実は友達いないのか?
でもそれって、変な話だ。
俺は顔が怖いし態度も悪いし不器用だからそれほど交友関係は広くないが、それなりに付き合いはある。
俺より断然好かれそうな生き物なのに、人を遠ざける三初はよくわかんねぇ。
そう思うと少しだけ、こんな関係になったというのに自分が遠ざけられるのは嫌だな、と思った。深い意味はなく。
好き勝手踏み込むくせに自分はお断りとかムカつくってだけだけどよ。
「──ん?」
もそ、と寝返りをうって三初側に体を向ける。ラブホの広いだけのベッドでも我が家のごとく悠々と寝そべる三初。
元々、コイツの考えていることが、ちゃんとわかったことはなかったな。
人間嫌いなのかと思ったけれど、俺には構ってくる。別に俺が特別とかそんなんじゃねぇ。気まぐれなだけで、自主的に他人に絡んでる時もあったと思う。
心を開かれている気はしないのだ。ことこいつに関しては、言葉が意味を持たない。
行動でお察しとも言うが、行動すらひねくれた動きをする。
「……なんでガン見?」
「や、頭透けて見えっかなってよ」
「透けて見えませんけど先輩の頭は空っぽですよね」
あぁッ? チッ、暴言はこの際無視だ。
うつ伏せに肘をつく三初を見上げるような体勢だから見下されているようで少し気に食わないが、それもよしとする。
会社でいる時に比べると、近ごろ俺と二人の時の三初は、割と素だと思うのだ。
本人もそう言っていた気がする。
素、とか思うのは、三初がわざと周囲と距離を取ってるっていう、俺の仮定を正解とした場合だぜ?
三初の素。というか、本心。
こうして俺の中に侵食してきたのはあの日がきっかけだが、俺をからかってばかりなのは昔からだ。
その原動力がなんなのか。
もしかしたら、元々俺には自然体だったのかもしれない。
それって……もしかすると。
(……、……マジか)
三初の弱点を考えていたはずなのに、気がついたらそんなことを思っていた。
ストン、と納得がいく。
考えないようにしてたけど──ちゃんと考えれば、俺を連れ回すことも、俺を抱いたことも、理由はそのあたりにあるのだろう。
スっと手を伸ばして、腕の隙間から三初の胸に控えめに触れてみる。
「っ、……は……?」
俺から触れることなんか本当に稀だからか、三初はビクッと微かに震えて目を丸くした。
お。珍しい。
コイツの予想外の行動で意表をつけたっぽくて、なかなかいい気分じゃねえか。
今日の三初はレア行動が多いな。まぁ二人きりで普通に出かけるなんて、今までなかったし。
それでも散々弄ばれて負けっぱなしだった俺は、機嫌が良くなる。ニヤリと笑ってしまうのは仕方のないことだ。
「先輩……?」
「なんだよ、触られただけでドキドキしてんじゃねぇか。そんなに好きか?」
「──ッ……!? は、嘘、誰が、なに」
指の腹でスリスリと肌をなでつつ、仕返しも兼ねたセリフをお見舞いしてやった。
胸板が結構ある。やっぱりちくしょうめ。
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