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第九話 先輩後輩ごった煮戦線
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しおりを挟む──そんな調子で、俺と竹本の新生コンビは早くも三日目を乗り切っていた。
しかし乗り切っただけで、うまくできてはいない。
反響の理由として、幾人かの有名ミーチューバーたちがおもしろおかしくサイトで先行公開していたトポスのアレンジレシピを紹介したせいだということは、判明した。これがインフルエンサーとのコラボレシピだからだろう。
ありがたいが、タイミングの悪さが俺向けでよくない。やっぱ俺ァ呪われてんのか?
おかげで客の数に対してスタッフが足りていないため、わかっていてもなにかとままならないばかりなのだ。
そもそも行列を捌けないと、結果的に売り上げが伸びない。
トポスもアイスも単価が安いからよ。
行列には集客効果があるが、並ぶのはめんどうだと敬遠されることもある。早い回転率でなおできる行列でなければ素直に喜べない。
加えてSNS映えのためにトッピングもこだわっているので、提供には多少時間がかかった。
かかると言ってもかき氷よりは遅くて、パフェよりは早い程度である。しかし慣れない三人じゃ多少もたつく。
忙しいせいか、接客担当二人もサービスのクオリティが下がっていると思う。
並んだ上でぞんざいに扱われては、顧客の心象はよくない。リピーターを減らす。商品自体の印象にも繋がる。雑なスタッフの作る商品は雑なクオリティだと、人の脳はバイアスをかける。
となるとたまにクレームがくるが、あの二人はクレーム対応のやり方が壊滅的なので怒り倍増。本気で悪気なさそうなのがまた指導しづらいぜ。
見かねて俺が出ても、俺自身客あしらいが下手なので解決に時間がかかる。
それについては朝礼と終礼で話しているものの、どうも二人とも腑に落ちていない様子でやはり指導に困った。
確かまだ大学生だったか。
若い男女の二人だ。
俺は後輩、特に職場の年下にはおしなべて苦手意識を持たれやすい。
上下関係は高校までの男盛りな運動部くらいで、世代もタイプも馴染みのない部下の相手はそもそも俺だって苦手だ。
それにここは会社ではないし、バイトたちは一応喫茶部門で仕事をしていた人間で、こうして客前に立って販売する業務に関しては俺のほうが素人だろう。
見てわかるほど接客に不慣れな俺が上司面でガミガミ言っても説得力がない。
一回り年下のヤツらビビらせてトラウマ作りたくもねぇし、なるべく抑えて、言い方も俺なりに工夫して話してみている。
「それがどんぐらい効いてんのかとか、わかりゃしねぇしなぁ……」
風呂から上がった俺は、ボフッ、とホテルのベッドに大の字で倒れ込み、渋い顔で天井を見上げる。
リーダーとして更新されるデータと戦い、本社と母体の間に挟まる竹本には、問題を起こしているわけじゃないスタッフの小さな気がかりなんかで、余計な心配を増やしてやりたくない。
今夜だって疲れたから癒されてくるとか抜かし、意気揚々と出かけて行った。
なので今、このホテルの部屋には俺一人っきりだ。
「…………」
モゾモゾと転がり、丸くなる。
沈黙するスマホを点けて、もう一度消す。
いや、別に。
なにも寂しくなんてなってねぇよ?
そもそもお互い忙しいから出張中でも連絡取らないようにしようって、俺が決めたんだ。密かに。うん。
「…………」
もう一度スマホを点けて、メッセージがない画面を見つめて、消す。
まぁ、なんだ……密かに決めたのは、アイツが送ってくるなら返事を返すのはやぶさかでもねぇっていう、そういうアレだ。
だけど三初は「今暇?」なんて用はなくても構いたくなる恋人心理にかまけた理由では、出張中の彼氏にだってメッセージを送らないタイプだろう。
普段も、基本的には業務連絡。
たまに謎の写真が送られてきたりはする。
「……写真か。変な写真がありゃ、それを見せるっつー口実が……じゃねぇ。ない。ないないない。アホか俺は」
ブンブンと手を振り、スマホをポイッと投げた。
こんなの俺らしくねぇ。
別に赤くなんてなってない。超絶ノーマルな顔色だろうが、あぁん?
「ぁぁ~…………くそ」
二人で過ごす時間が減って、たった二週間前後。
全く会わずに、たった三日ほど。
こんなもん、ただ毎日顔を合わせて日常を過ごしていた弊害で、ギャップにやられているだけに決まっている。
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