普通のβだった俺は

りん

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「ごめん。待たせた」

「全然」

「どこ?」

「俺知ってるから」

「そ」

なぜか俺よりこの大学に詳しい凛音についていく。ついやるって言ったから、今日はバンドの練習に集まることになった。授業がない日に大学に来る趣味はない。正直めんどくさい。

「宵紗がやってくれるとは思わなかったな」

「そりゃそうでしょ」

「やっぱ凪くん効果?」

「…さあ?」

「不器用だよね。宵紗」

「そう?」

「うん。かわいい」

「趣味悪いよ。お前」

「そうだよ」

「否定ぐらいしろよ」

「自覚あるからね」

自覚があるだけまだマシなのか?開き直ってる気がする。まともな人間装って中身がやばい人間が一番恐ろしい。凛音はそのタイプ。加害性がないのが救い。



「いや、まじで言ってるんすよね」
「ガチ信じられない」

防音室のドアを開けると、懐かしい元気な声が聞こえる。この後輩は相変わらずおしゃべりなままらしい。まぁ、俺がバンドやるのも、練習来るのも信じられないのは当然。怠惰な俺しか見てこなかっただろうし。

「おいーっす」

「うわ!マジでいるじゃん」

バケモノでも見たのかって反応をされる。

「なに?」

「久しぶりっすね」
「元気してました?」

「うん」
「聞かずとも元気そうだね」

「元気っすよ!」

渚瑳なぎさはいっぱい喋っていいね」

「凛音先輩も!こんにちは」


「颯斗」

「なんだ?」

「やほ」

「ああ。相変わらず黒いな」

「買わないからね」

久しぶりに会った感想が服装が黒いことなのはどうかと思うけど。相変わらずの感性が面白い。


玲翔れいとは?」

「なんか、お兄さんに絡まれて時間ギリかもって」

「社会人だっけ」

「はい。久しぶりに会って絡まれたって」

「ウケる」

「別に集合時間もっと後だし」

玲翔のとこは兄弟仲がいいらしい。というか、玲翔の姉と兄が玲翔を溺愛してるっていうのは有名な話。高校の行事とか大体誰かしら来てた。


「今日って5人すか?」

「昴琉くんも呼んだよ」

「え、昴琉来んの?」

「マジで?」

「それは本当か」

凛音が昴琉が来ると言った途端に3人が詰め寄ってておもろい。まあ俺もそのうちの1人だけど。

「うん。正確には玲翔くんが呼んだんだけど」

「あー、仲いいよな。あそこは」

「ドラムできる自信ないからって」

「あ、玲翔がドラムなんすか?」

「そうだよ」

「夜叉姫じゃないのか」
 
みんな知らなかったらしい。連絡しろよ。グダグダすぎんだろ。

「宵紗が駄目っていうんだもーん」

凛音が全責任を俺に押し付けてくる。まあ、そうなんだけど。

「アイドルだろ」

「たしかに」

「リスク管理だな」

冷静なやつが多くてよかった。あとは昴琉の人望。



「すみません。遅れました」

「お待たせしてごめんなさい」

ドアが開いて玲翔が入って来る。その背後からひょこっと昴琉が顔を出す。一緒に来てたんだ。相変わらずニコイチを見せつけてくる。

「やほ」

「別に遅れてないぞ」

「そうそう」

「急に呼んで悪い」



「久しぶりに集まれて嬉しいです」

昴琉は可愛らしく笑顔を見せる。年下ムーブがうまいんだよな。悠煌さんに育てられたからかな。愛されるのがうまい。

「なー!先輩とかあんま会えないからうれしいっす」

こいつもそう。渚瑳って体育会系って感じ。犬っぽい。

「俺らも久しぶりだよね」

「俺颯斗と会うの久しぶり」

「そうだな」

「そうなんですね。俺も凛音先輩と颯斗先輩とはお久しぶりですよね」

「ねー」

「元気そうでよかった」



「やってくれないのか?」

「うん。俺は見にきただけ」

「そうか」

昴琉は玲翔のドラムを見に来ただけらしい。ほんとに観客モードの昴琉は、かわりにやってあげるとかしないんだよな。



久しぶりに楽器触るな。卒業してから触ってないか。チューニングめんどくさい。音がキモいのもだるい。スタートする前にすでにやる気なくなってきた。

「ねぇ、昴琉」

「はい」

「チューニングして」

「チューナーないんですか?」

「ある。だるい」

昴琉はしょうがないなって顔して俺からギターを受け取る。甘いんだよなー、昴琉。
横から渚瑳が飛び出してくる。

「あー!!ずるい!!」
「俺は頑張ってるのに!!」

「うるせぇ」

「傲慢!自己中!ずるい!」

渚瑳が文句言ってくるけど、悪口のバリエーションがなさすぎてかわいらしい。平和なんだよな、こいつら。

「犬みてぇ」

「ひどいっすよ!なぁ?昴琉」

「よしよし。渚瑳はいい子だもんね」

「うんうん。俺頑張って音合わせた」

「いい子だね。あとでお菓子食べようね」

「まじ?」

「いいですよ」

「やった」

昴琉に泣きついて甘やかされてる。自分より幼い子たちがじゃれ合ってるのは微笑ましい。

「俺は?」

「チューニングしたんで。もう無しです」

「えー、ずるい」

「ずるくねぇし!頑張ったから当然だし!」

俺にはないらしい。まぁ別にいいけどね。
チューニングが終わったのか、昴琉がこっちにギターを差し出す。

「ありがと」

「いいえ」

昴琉に頼めば完璧な状態で渡してくれるからつい頼っちゃう。昴琉は簡単そうにやるけど、俺はそんな簡単にできないから。



「こっちやってよ」

「なんでですか。先輩がやってくださいよ」

「は?やだ。渚瑳がやれって」

「いやっす。こっちやってください」
「俺こっちやるんで」

ムズい方やりたくないし。それに渚瑳の方がうまいから、目立つパートは渚瑳にやらせたい。

「渚瑳の方がうまくやれるじゃん」

「そんなことないっすよ」

「やだ」

「ヤダってなんすか」

俺らがごたついてるところに凛音が来る。

「なにしてんの宵紗」

「パートの押し付け」

「こっち宵紗がやるんだろ?」

「違う。俺こっち」

「だめじゃん。サポートメンバーにギターソロやらせるなって」

「そうっすよ!」
「さすが凛音先輩」

「でしょー?」
「ねえ?宵紗やってよ」

「わかった」

「やった!」

結局凛音には勝てない。これ以上ゴネたところで凛音には敵わないのは知ってる。それに、後輩にこれだけ立てられてるのに逃げるのはダサいからやだ。
俺がやると言ったらこんだけ笑顔になれる渚瑳もすごい。どうやったらこんなに素直に成長すんだ?凪に似てるかも。天然記念物枠。


さすがに久しぶりすぎて思ったようにはいかない。しばらくやってるとさすがに疲れる。
ギターをスタンドに立てて床に寝転ぶ。俺は惰性でやったところで上手くいかないから。

「宵紗くんはお昼寝?」

凛音が目ざとく見つけてこっちに来る。

「うん」

「床で寝たら体痛くなるでしょ」

「慣れてるからだいじょぶ」

「そういう問題じゃないって」

「いーの」

色々心配してくる凛音を無視して瞼を閉じる。周りがうるさくても寝ようと思えば眠れる。さすがにドラムが鳴ってるとこで寝たことはないけど。



しばらくして目を開く。時計を見るとそれなりに分針が動いてて、自分が寝てたのが分かる。上半身を持ち上げると身体にかけられた毛布が目にはいる。こんなのあったっけ。

「…毛布だれ?」

「あ、おはようございます」

「昴琉の?」

「はい」

「昴琉くん車から持ってきてくれたんだよ」

「そうなの?」
「ごめんね」

「いえ、俺が勝手に持ってきただけなので」

おかげで結構気持ちよく眠れた。

「よくドラム鳴ってて寝れますね」

「寝るの得意だからね」

玲翔はちょっと感心した感じで言ってくる。そんなすごいことじゃないだろ。


またちょっと練習して、みんなで合わせて。久しぶりだったけど、結構、いやめっちゃ楽しい。みんなが楽しそうにやるから。聞いてる昴琉が嬉しそうに笑うから。やるって言ってよかったなんて変なことまで思い始めそうになる。




「てか、よくあの人許したよな」

渚瑳が昴琉に買ってもらったクレープを頬張りながら言う。昴琉の高級車に乗せてもらってそれができる度胸はすごいと思う。俺は流石に恐ろしくてできない。許す昴琉も昴琉だ。

「何が?」

「悠煌さんこれ許すんだって」

たしかにそう。ここにいる6人のうち、昴琉以外の5人はみんなαだ。こんなにαが集まることってあんまない気がするけど。俺らが出会った紫紅学園しこうがくえんは入試が結構むずいから、αが多いって噂はある。別にαが優秀ってわけじゃないけど、ヒートがある分Ωは勉強が中断されることもあるからその分不利なことがある。偏差値高い学校はΩは少ないことが多い。

昴琉の番の悠煌さんはとんでもなく嫉妬深くて独占欲つよいのは俺らの中では常識。そんな悠煌さんがαしかいないここに番をぶち込むとは思えない。

「嫌だとは言われましたよ」

運転しながら当たり前だというように昴琉が答える。

「やっぱ?」

「ええ。でも絶対行きますからって押し切ってきました」

「それ大丈夫?」

「はい」


「それでも嫌じゃない?番がαばっかのとこ行くの」

凛音はΩの彼女がいるからか、悠煌さんには共感できるらしい。こいつも独占欲つよいからな。王子様って感じだけど、中身は案外ドロドロしてる。あんま表に出さないけど。

「…そうなのか?」

颯斗はあんまわかってない。まあこいつの彼女αだしな。しかもかなり強いタイプの。弓道部とかで女子からもモテるタイプだとかなんだとか。

「怖いかな」

いくら信頼してても、αの中にΩが行くのは危ない。何があるかわかんないし。急にヒートでも来たら怖いじゃん。凪が行くって言ったら全力で止める。それか俺がついてく。それぐらいには怖い。


「…玲くんが守ってくれるでしょう?」

「あたりまえだ」

激重発言についミラーを見たら、昴琉の顔が怖くて震えそうになる。いつも通り微笑んでるんだけど、目が怖いんだよな、こういうとき。笑ってるのに、光なくて、透き通った色してるのにじっとりしてる感じ。
それを聞いて当たり前っている玲翔もヤバい。共依存気味なんだよな、この2人は。ここが番じゃないの最初は信じられなかった。

「昴琉の玲翔への信頼やばいよな」

渚瑳でもそう思うらしい。いや、同学年で近くで見てきたから、俺らよりよっぽど見せつけられてんのか。やばいとこ。

「俺、玲翔のためなら喜んで死ねる」

「冗談でも言うな。そんなこと」

「冗談じゃないですよ」

「余計いやだ」

「あは、でもそれぐらいには愛してますから」


「…俺らは何見せつけられてんだ?」

「いいじゃん。相思相愛」

「そういう問題?」


「悠煌さん嫉妬しないの?そんなこと言って」

たしかに、あの人怒んないのかな。やっぱ、番からの愛は自分に向いててほしいだろ。

「あの人は俺のことわかってますからね」

俺ら全員首を傾げる。いや、玲翔だけは身じろぎすらしないで当たり前みたいな顔してるかもしれない。でもこいつは基本的に無表情だから参考にならない。

「俺から玲翔を奪ったら俺が潰れるの分かってるから」
「それに、玲翔が絶対に俺に手を出さないのも知ってるし」

「親友に手出すバカがいるかよ」

当然みたいに言える玲翔は凄いと思う。本能って凄いから。俺は薬がないといまだにうまく抑えられない。イライラして耐えられなくなる。ヒートのフェロモンに誘われたら、やっぱり一瞬意識持ってかれるし。

「どうだろうね。でも、玲翔は違うと思ってるよ」

玲翔にこれだけの信頼を寄せる昴琉もそうだ。きっと、幼いときから信頼してきて、玲翔はそれに応え続けたんだろう。背中預ける相棒とか、ちょっと羨ましい。俺は人付き合い下手過ぎてそんなのいないから。


でかい駅に着いて、玲翔と昴琉以外は車を降りる。みんなここからは電車ですぐだから。玲翔は昴琉の家まで乗って、そっから歩いて帰るらしい。昴琉を一人にしたくないからって。愛が深い。

「マジで懐かしかったっす」

「ね」

「また今度」

「ああ、気をつけて帰れよ」

卒業してから会う頻度が下がったとはいえ、そんなに期間が空いたわけでもないのに、会うとやっぱり懐かしくなる。
特に後輩たちがいると俺ら3人だけのときとは違う雰囲気になるし。楽しかったあの時間に戻ったみたいで楽しい。

どうせすぐ大人になって、こうやって仲間で集まってバンドなんてできなくなる。きっといつか振り返って、やってよかったと思うんだろう。俺はそういう人間だ。
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