Killers Must Die

42神 零

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英国上陸篇

09:銃声

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 廃棄された地下鉄の中にある反逆軍リベリオン本拠地、そのさらに地下へと続く場所に零児らはある人物と対立する。

 名を''ヨグ=ソトース''。反逆軍リベリオン前団長でありながら、この組織を引っ張ってきた父親のような存在である。どういう経緯でこうなったのかは不明だが、現段階の彼に人としての理性というものが失われ、今となってはただ視界に写るもの全てを破壊しようとする、凶暴な悪魔となってこの場所で束縛されていた。

 全身黒色の鎧に覆われ、ヘルムの隙間から彼のものであろう透明な液体…ヨダレを吹き出しながら野良犬が如く、牙をむき出して零児に襲いかかろうとするも鎖によって拘束され、その身動きが自由に取れなかった。が、その引っ張る力が凄まじいというのに変わりないようで、引っ張る度に柱からパキッと今にも崩れそうな嫌な音を立てている。



「…こりゃ確かに、ちょーっとキツそうな相手だな」



 敵意を剥き出しにしているヨグ=ソトースを前に、零児は苦笑いしながらゆっくりと階段を下りていく。一歩一歩近付くごとにヨグ=ソトースの行動が激しくなり、今にも零児の血肉を喰らわんと前のめりになる。

 そしてその直後、ハスターが感じていた嫌な予感が的中する。ヨグ=ソトースを拘束していた鎖と柱に限界が来たのだろう、大きく亀裂が走ると轟音と土煙を立てながら柱が崩壊を始めた。

 やっとの思いで片腕が自由になったヨグ=ソトースはその勢いに乗って、もう片方の鎖を理不尽な力で引きちぎり、柱を壊すと両腕を地面に付けて、四足獣が如く体勢を取ると、無理に膝を曲げて脚の鎖も引きちぎった。

 完全に自由の身となった瞬間、ヨグ=ソトースは背を低くしながら人が発するとは思えないほどの咆哮を上げ、零児やハスターに狙いを定め、地面を蹴って襲い掛かる。本当に理性や記憶が無いようで、かつての仲間だったハスターや構成員などお構い無しだ。



「ハ、ハスターさん!!」



 二足ではなく四足で、それでいて自動車のような速度で接近してくるヨグ=ソトース。近付く度に荒々しい足音が響き渡る中、構成員らはハスターを守るような形で展開。ハスターは未だにこの現実を受け切れていないようで、落胆している様子だった。

 そんな様子を見た零児は「やれやれ、仕方ない」と肩を竦ませると、仕事用のガスマスクを着用し、大剣型のアンブラを片手に接近してくるヨグ=ソトースを迎え撃つ体勢を取ると、ハスターの前に庇う形で現れ、牙のような刃を振るって突っ込んでくるヨグ=ソトースを受け止めた。



「零児…!!」

「ボサっとしてんなら、こっから出ていきな!!」



 大剣でヨグ=ソトースの大きな手のひらを受け止めると零児の影から巨大な蛇型のアンブラが顔を出し、二本しかない牙を剥き出しながら口を開いてヨグ=ソトースに噛み付く。自身より巨躯を持つ蛇型アンブラに対し、ヨグ=ソトースは身動きが取れず、元のドームへと押し戻されると地面に叩きつけられた。

 黒い影が水のように渦を巻き、水しぶきのようなものが飛び散ると鎖型に変換したアンブラがヨグ=ソトースの体を拘束する。その様子を見ていたハスターは我に返り、零児の背中を見つめる。



「正直、お前らの過去なんざどうでもいい。けどな、契約は契約だ。そんくらい守れねぇ奴は殺し屋でもなんでもねぇし、胸糞も悪い。そこまで俺は腐っちゃいねぇよ」

「零児…」

「それに、報酬はお前の知る限りの情報だ。ここで死なれちゃ困るってもんだぜ…。こいつをぶっ殺したら全部洗いざらい話してもらおうか!!」



 大剣を構えると身を低くして地面を蹴って一気に距離を詰める零児。残された土煙と強い突風がハスター含む構成員らを飲み込むも、零児はそれを無視して大剣を縦に振り下ろして攻撃を仕掛ける。

 対するヨグ=ソトースもアンブラが仕掛けたであろう鎖を無理矢理引きちぎり、再び自由になったところで腕に纏った鎖ごと零児に振り下ろした。その行動を予想していたのか、零児は大剣を上手く使って鎖を弾き返し、距離を詰めると大剣から大槍に変換すると頭部目掛けて突き出した。

 が、ヨグ=ソトースは避ける素振りもなく、むしろ大槍を潰す形で頭を前に突き出して振り下ろした。ごつくて黒いヘルムと真っ黒な大槍が衝突すると間から火花が散り、大槍が真っ二つに折れて地面に突き刺さり、元の影の中へと戻って行った。

 反動で後ずさりする零児にヨグ=ソトースは腕を振り上げて追撃を仕掛ける。が、零児は影を足場に、スライディングする形で攻撃を回避して距離を取ろうと一旦離れるも、暴れ狂うヨグ=ソトースが攻撃しながら距離を詰めていく。



「ちっ…こりゃ厄介な相手になりそうだな」



 猛攻を回避しながら零児は苦笑いをして舌打ちをする。全く隙のない攻撃の中、零児はダメもとで拳銃を構え、回避しながらも引き金を引いて反撃に出る。だが、いくら零児が改造した拳銃や弾丸だとしてもヨグ=ソトースが持つ分厚い鎧には歯が立たず、少し凹むだけに終わってしまう。

 しかし、そんなことぐらい零児だって理解していた。理解しているからこそ笑っている。零児が今笑っているということは何か策略があるということだろう。



「アンブラ!!」

『オゥ!!』



 凹みを確認した零児は影の中に手を伸ばし、何かを取り出そうと手を動かす。その隙にヨグ=ソトースは指先から鋭くて短く、太い爪を展開させると零児に向かって振り下ろした。

 強力な一撃で土煙が舞い、同時に周辺から赤黒い血液が血飛沫となって飛び散って地面を赤く染め上げる。煙が包み込まれ、ハスターは零児の名を叫ぶも土煙が晴れるとクレーターの中央で片腕のみでヨグ=ソトースの爪を受け止め、もう片手にはどこから取り出したであろうショットガンが握り締められていた。

 ショットガンのタイプはポンプアクション付きで、形状としてはモスバーグM500と酷似しており、零児はそのショットガンを片手に凹んだ箇所を銃口で押し当て、そのまま引き金を引いた。拳銃やスナイパーライフルとは違う、ショットガン特有の銃声が響くと弾丸が散弾となって飛び散り、凹みの部分に直撃するとヨグ=ソトースが吹っ飛び、後退りすると鎧の箇所が飛び散った。

 とはいえ、破壊出来たのは一箇所のみで致命傷を与えられず、むしろ傷を付けられたことに苛立ってるのか、ヨグ=ソトースは腕を振り上げて、纏った鎖を零児に向かって投げ付け、そのまま押し潰そうとする。零児はニヤリと笑い、上体を逸らして回避。標的を失った鎖は地面に勢いよく打ち付けられ、土煙と地割れを発生させるだけに終わる。



「ったく…わざわざそっちから手錠を外してくれるなんてよ…ありがてぇ話だぜ!!」



 次々と飛んでくる鎖を避け続けながらニヤリと笑う零児。片腕を潰され、残った腕のみでショットガンを構えて発砲して、避けきれない鎖を弾き返して上手くやり過ごす。そんな零児に対し、アンブラはゆっくりではあるものの、零児の失った腕目掛けて影を覆い始め、再生を試みる。

 一瞬にして再生する力がないようで、ゆっくりと時間をかけなければ元に戻すのが難しいらしい。さすがに零児とは言えど神様でも神の使いでもないため、こればかりは仕方がない。

 そんなことさせるかと言わんばかりにヨグ=ソトースは零児が放つショットガンの弾丸を受けながら、両腕を大きく上げて振り下ろす。鋭い爪が備わった腕は地面にめり込むとヨグ=ソトースの周囲に巨大な鎖が出現し、地面からこの闘技場の天井まで突き刺さると霊長類のように登り始め、そこから急降下攻撃を仕掛ける。

 速度、威力共に申し分ない攻撃に零児は何を思ったのかショットガンを自分の後ろに構えるとそのまま発砲した。ただ構えになってない適当な射撃なため、反動によって零児は吹き飛び、無理矢理距離を開けて体勢をとる。



「んなアホな…!?」

「射撃反動を利用して回避に展開した!?」



 予想外の行動に、その場にいた構成員らとハスターは目を見開く。人としての異常とも呼べる身体能力に、攻撃を予測する反射神経、そして常人では思い付かないようなめちゃくちゃとも言える戦法に固唾を飲んだ。

 失った腕を再生させながらも、零児は弾切れを起こしたショットガンを適当に放り投げ影の中から巨大な斧の形をした武器を抜き出すと、重量を無視した軽快な身のこなしで鎖を避け、その勢いのまま一刀両断する。真っ二つに割れた鎖は機能を失い、ヨグ=ソトースもイラついている様子で咆哮を上げた。

 その隙に今度は大槍に変換させると体を捻らせ、勢いのまま投げ付けた。狙いは鎧が剥がれた胴体で、大槍の切っ先と肉が露出した胴体が接触すると血を吹き出し、肉体を貫通させるとヨグ=ソトースを吹き飛ばした。体を貫かれ、背中から大槍の切っ先が飛び出ると背後にあった壁に衝突し、突き刺さったままで身動きが取れない。

 こんなものと言わんばかりにヨグ=ソトースは突き刺さった大槍の柄を握ろうとするも影という存在であるため触れても空を切るだけに終わる。そんな無駄な抵抗を繰り返すヨグ=ソトースだが、零児は容赦なく追撃を開始する。

 足を踏み込むと自身の影の中から棘だらけの巨大砲台が生み出され、砲口が身動きの取れないヨグ=ソトースに向けられるとエネルギーを吸収し始め、直後に巨大なレーザー光線となって撃ち抜いた。実在する拳銃とは違い、吸収から砲撃まで掛かった時間が僅か2秒。加えて弾速も凄まじく、発射してからコンマ1秒でヨグ=ソトースを撃ち抜き、大きな爆発を引き起こした。

 敵に回したくない。そんな様子を見て、ハスターは一人思い、思わず苦笑いを浮かべた。当然構成員らも同じく、零児を見るなり開いた口が塞がらない状態で爆発によって生まれた土煙を見て固まってしまう。



「…なるほど、訂正しとくか。厄介な相手になりそうだ、じゃない。こりゃ厄介な相手だ」



 見えない土煙の中、零児は何かの気配を感じたのか大きく溜息を付く。突き刺さるような視線と人によっては失神するであろう殺意が向けられる中、土煙の向こうから鎖が何本も降り掛かり、零児を貫こうと襲いかかって来た。

 煙が晴れるとそこにはジャラジャラと金属を重なり合わせながら鎖を纏ったヨグ=ソトースの姿があった。どうもあの攻撃を受ける直前に、自身の能力であろう''鎖''を身に纏い、より強固な盾を形成して身を守ったのだろう。

 だが、完全に守り切れなかったようで体を纏う鎧の右腕部分が焼き焦げて使い物にならなくなり、真っ黒になった鎧の破片が地面に落下すると灰となって消えていく。中から出てきたのはタトゥーと亀裂の入った筋肉質の太い腕が露出された。

 自分自身の鎧が砕けたことと人間としての理性が戻ろうとしてるのか、首を上にあげて苦痛のような咆哮を上げるヨグ=ソトース。その声量は凄まじく、自身を中心に爆発のような衝撃波を放ち、地面から数多くの鎖を発射させる。

 無論、衝撃波に飲み込まれた零児は吹き飛ばされないように影の壁を形成し、失った腕を再生させた。ハスター達も巻き添えに、腕で顔を庇う形でその場を凌ぐ。



「ギャーギャーギャーギャー騒ぎやがって…ガキか、こいつは」



 不協和音とも呼べる咆哮に少し苛立つ零児は再生した腕を使い、ショットガンに弾丸を入れてポンプアクションを引き起こしてリロードする。ただ気になるのは扱ってる弾丸が普通の形状ではないということ。遠くにいたハスターは何を込めているのか分からなかったが、明らかにリロードしてる手順が異なっていたり、形状が違うというのは分かっていたが、何を入れたのかは完全に把握しきれていない。

 そんな視線を気にせず、零児は再生した右腕に拳銃を、左手にはショットガンと二丁の銃を手に持つとショットガンを突き出しながら前進した。同時にヨグ=ソトースも左腕を大きく振るって鎖をぶん投げて零児に襲い掛かる。右腕が使えなくなった分、鎖の量が増しており、回避がより困難になっている中、零児はスライディングしてショットガンの引き金を引く。

 大きな銃声と共に反動が全身にのしかかると、零児はすぐに拳銃に切り替え、銃口を向けると引き金を引いた。狙いはヨグ=ソトース…ではなく、''ショットガンから発射された大量の金貨のコイン''だった。



「コイン…!?」



 キラキラと黄金に輝くコインにハスターは口を開く中、「BOMB」と刻まれた赤い弾丸が宙を舞うコインを弾いて跳弾となり、不規則な弾道を描くとヨグ=ソトースの背中に直撃した。背中を撃ち抜かれ、痛がる様子を見せるヨグ=ソトースの開かれた股をくぐり抜けると、零児は背後を取って立ち上がり、影の大槍を構えて攻撃を仕掛けようとする。

 だが、ここでヨグ=ソトースの攻撃。痛がるような動作をしながらも、ヨグ=ソトースの背中にある触手のような鎖が地面に突き刺さると零児の前に飛び出して襲い掛かる。

 零児は手に持つ大槍を回転させながら弾き返し、ヨグ=ソトースの周囲を走り回る形で回避しながら隙を伺う。鎖がある以上近付くことすら困難なこの状況に、零児は苦虫を潰すような表情をする。

 しかし、それもヨグ=ソトースも同じだった。初めて見る人間だと言うのに、自分の攻撃が当たらないことに動揺しているのか、鎖による攻撃が増す一方で直接的な肉弾戦を仕掛けようとはしてこない。刺し詰め様子見というものだろうか。



『拉致が明かねェな!!どーすんのこれ!?』

「黙ってろ、舌噛むぞ」



 スライディングで避けたところ、手に持つ大槍を投げ付けて攻撃するも、ヨグ=ソトースが纏う鎧と鎖の妨害で弾かれ、無意味に終わる。そこへ零児は持っていたショットガンを手放すとポーチからあるものを取り出してピンを抜き、投擲した。

 投げたものは手榴弾のようなもので、カランコロンと地面に着弾すると転がり、ヨグ=ソトースの足元に止まると爆発を引き起こした。ただし、普通の爆発とは異なり、青い電撃のようなものがドーム状に広がって、ヨグ=ソトースの全身に感電し始めたのだ。

 意志の思うがままに操れる鎖とはいえ、元は鉄だということに変わりないようで、電流が鎖を通じて四肢に伝わって強烈な電撃がヨグ=ソトースに襲い掛かる。効果はあるようでビリビリと痙攣を起こし、苦しむような声を上げたまま身動きが取れない状態だった。



(電撃手榴弾…!?あんなのどこから仕入れたんだ!?)



 見たことも聞いたことも無い武器に、ハスターは目を見開いて口を開く。それはそうだろう、本来爆発で周囲の相手を吹き飛ばすのと同時に熱で焼き殺すのが目的の手榴弾が電撃で代用されるものなど歴史上に存在しないのだから。

 もちろん、電撃を放つ手榴弾などこの世に存在しない。となると、これも零児の手作りとしか説明がつかない。電撃を放つ手榴弾もそうだが、何よりもそのトンデモ兵器を作っては運用する、零児が何よりも恐ろしかった。

 勝つ為ならば手段を選ばない。例えそれが自分の命が失われようとしてもだ。現に零児は効果があったことに歓喜しているのか、ニヤリと怪しい笑みを浮かべ、地面を蹴ると動けないヨグ=ソトースに接近する。

 手に持つのは巨大な大剣でもなく、あらゆるものを貫く大槍でもなく、鉄を紙のように切断してしまう切れ味を誇る大鎌でもない。あるものはあらゆるものを粉砕してしまうような、禍々しいハンマーだった。

 そのハンマーを、零児は勢いのままグルグルと回転させると良いタイミングで手を離した。遠心力で飛んで行ったハンマーは風を切り、立ち塞がる鎖を砕きながら進むと未だに麻痺しているヨグ=ソトースへと突っ込んでいく。

 未だに痺れているヨグ=ソトースは身体を無理矢理に動かし、両手を広げて受け止めようと体勢を取るも、先程の槍と同じ原理のためか手に触れた瞬間、手のひらが透けて抜けると胴体へと飛び、実体化したのか大きな音を立てて鎧を粉砕した。かなりのダメージを受けたのか、ボロボロと崩れ落ちる鎧の破片の中、ヨグ=ソトースは吹き飛ばされるも、痺れの効果が切れたのか両手を地面につけて抉りとり、勢いを殺すと止まりだし、ヘルムの間から血のような赤い液体を吐き出すように垂れ流した。

 だが、ここで手を緩めるほど零児は甘くない。一度足を止め、影から''ハニー・ビー''と勝手に命名された改造スナイパーライフルを構えると、何発か引き金を引いた。ドズンと大きく太い銃声が何回か戦場に響き、うなだれているヨグ=ソトースに直撃すると胸の、人間で言う心臓部分に命中し、弾丸が肉体を抉った。さらに血を吹き出し、後ろへと仰け反るヨグ=ソトースだったが、どういう訳か今度は背中から焼けるようなオレンジ色の爆発を起こして文字通り''穴''が完成した。



「爆発…だと…?」



 辺りにばら撒かれる血と内臓、肉の破片を見つめながら零児は笑う。この展開については予想通りというより、自分が仕掛けたものらしく、どこか余裕のある態度で拳銃に切り替えた。

 これは仮説だが、零児が放った''BOMB''と刻まれた弾丸がハニー・ビーの弾丸が体内でぶつかり合い、その衝撃で爆発を引き起こしたのだろう。何がどうとは言え、ショットガン(''ランペイジ・ホース''と勝手に命名されたもの)の弾丸であるコインを跳弾代わりの壁に代用したり、自身の武器とはいえ撃ち出された箇所からどこに着弾したのか分からないというのに、それをあっさりと正確に撃ち抜いてしまった零児の射撃技術は''異常''としか言いようがない。



(…出来れば敵に回したくない)



 どれほどの戦闘能力があるのか不明だが、少なくともこの反逆軍ぐんだんを束ねる長であるハスターでさえ、心底そう願っていた。決して最強なんかではない、零児の考えていることは常人のそれを越えているため戦術の共通点や規則性など見えず、増してや異常なまでの射撃技術、トドメには多種多様の攻撃を可能としている影による具現化能力。

 勝てる勝てないの話ではない。相手にしたら終わり。零児に狙われた者は死しか待っていない。

 実際、ハスターは過去に「東京には''死神''と呼ばれる殺し屋の素顔を見たことがある人間なんていない」という噂を耳にした。なんでも、ガスマスクをしているわけではなく、からである。

 死んでしまえば人間など、口や鼻、目、耳などが付いた肉の塊にしかない。当たり前だが死人が起き上がるわけでもなく、喋るはずもない。だから誰も見た事がないのだ、零児という人間の素顔を。

 話が脱線したが、何故この話をしているのか。それは零児の足元にあるものが転がっていたのをハスターは見えたからである。

 ガスマスクだ。零児が仕事の時に、常時付けていたハーフガスマスクが、そこら辺に転がっていたのだ。そして肝心の零児だが、ハスターから見て背中姿しか写ってないため素顔そのものは見えなかった。

 ただ…ハスターは悪寒を感じた。覗けない、というより''覗いてはいけない''。脳内にある本能が先程からそう告げているように錯覚し、目を逸らそうとしても見てしまう。

 冷たくて嫌な汗が流れる。正直なところ、そこら辺にいる悪魔や本能だけで暴れ回るヨグ=ソトースより、零児の方が恐ろしくてしょうがない。もし、このタイミングで横槍など入れたら、いくら味方でも殺されるんじゃないかと感じてしまうほどの漂う殺気に、ハスター含む反逆軍リベリオン構成員は固唾を飲んだ。

 だが、残念と言うべきか。人間としての感情や理性、自我を失ったヨグ=ソトースには恐怖という感情はない。地面を握り締め、ドバドバと出てくる血を流しながらもこれまで以上ない大咆哮を上げると四足獣が如く、地面を蹴って零児に突っ込んでいく。

 体に大きな穴が空いているにも関わらず、その勢いは衰えず、周囲に血や内臓を撒き散らしても零児の排除を試みる。なんの考えもなく、ただ己の持つ巨体のみを活かした突進攻撃。ヨグ=ソトースにとって、今の状態ではこれが自身の限界らしい。

 地面を揺らし、地響きを鳴らしながら向かってくる巨体に対し、零児は手に持つ改造拳銃''リーパー''を構えるとその場から動かない。何か策略があるのかどうかは分からない、ただ奇妙なことに…零児は口でブツブツと何かを唱えるように呟いている。

 当然だが、地鳴りの音も相まって遠くでその様子を観察していたハスターは、彼が何を言ってるのか聞き取れない。念仏のように唱え続ける零児は迫ってくるヨグ=ソトースの前に銃口を向けたまま動かず、詠唱を続けた。



「お、おい!!あいつ死ぬ気か!?」

「やべぇぞ!!俺たちも援護した方が___」

「…いや、その必要はねぇみてぇだ」



 見てる側でも心臓に悪い展開に、ハスター率いる構成員らが零児の援護のため、動き出そうとしたものの、ハスターは手を挙げてそれを遮り、固唾を飲んそして互いの距離が詰まるところで異変が起きた。この場にある全ての影から棘だらけの鎖が伸び、接近してくるヨグ=ソトースの四肢と首に巻きついて拘束を始めたのだ。

 勢いのあまり転倒しかけるヨグ=ソトースは苦しそうに鎖を振りほどこうと暴れるが、ビクともしないどころか影そのもので作られた鎖故に触れることすら叶わず、ただ一方的に零児の思うがままにされる。対する零児にも異変が発生し、彼の構える銃口先から黒い逆五芒星の魔法陣が出現すると前後へ大小様々な円形と複雑な文字が並んで展開した。

 そして銃口から黒い何かが入り込むと、零児はそのまま引き金を引いた。が、出てきたのは対悪魔用の銀弾ではなく、牙が付いた大きめの弾丸だった。

 威力や弾速、射撃音もどれも桁違いで、堕落者ネフィリムとなって身体能力の恩恵を受けた零児でさえも反動のあまり、腕が外れて体ごと後ろへ飛んでいってしまう。だが、その分見合った威力を誇るのか、鎖で動けないヨグ=ソトースに直撃すると鎧と中の肉が抉り取られ、黒い爆発を起こした。

 血と内臓、土煙と死臭がこの場を覆い、後からやってくる衝撃波が周囲を薙ぎ払ってあらゆるものを破壊する。衝撃波によって生まれた突風に、ハスターは腕を交差させて身を屈んで体勢を取るものの、周囲にいた構成員らは吹き飛ばされて壁に激突してしまう。

 あまりの破壊力に呆然とする中、零児が生きてるのかどうかすら分からない状況に、すぐ様確認を取ろうとするハスターは、階段を降りてドーム状の闘技場へと乗り込む。未だに黒い煙が腫れる様子はなく、零児どころかヨグ=ソトースの死亡確認が出来ない。

 もしかしたら、ヨグ=ソトースはともかく零児も死んでいる可能性がある。そんな嫌な予感がして、ハスターは背中に付けていた鉄パイプで作った大槍を構えてはクルクルと回し、緑色の風を纏わせると黒い煙を払った。



「っ…!!」



 煙は吹き飛ばされ、視界が一気に晴れて広がるとハスターは目を見開いて言葉を失った。目の前には首のないヨグ=ソトースがハスターに向き直り、その大きな手のひらを広げると掴みあげてきたのだ。

 生物としてもう死んでいる状態だというにも関わらず、桁外れな生命力を持つヨグ=ソトースにハスターは反応が遅れ、手のひらに飲み込まれるとがっちりと体を締めあげられて拘束されてしまう。少しづつだが確実に力が入っているらしく、ハスターからメキメキと嫌な音が聞こえてくる。



「がっ…あ、ぁ…!!」



 目玉が飛び出してもおかしくない圧迫に押されるハスターは苦虫を潰したような顔をしながら抵抗するも、魔人である彼でも目の前にいる悪魔には無意味らしく、特に気にしてないような物言いで締め続けるヨグ=ソトース。

 このままでは本当に殺されてしまう。相手がいくら瀕死とはいえ、残された余力は人を殺すことすら容易いらしく、体のありとあらゆる部分が破損しても、その力は緩むことは無かった。



「あ、兄貴!!」

「支援しろ!!このままだと兄貴が…!!」



 最悪の状況に、構成員らが動く。背中に背負っていたアサルトライフルを構えると同じように降りていき、ヨグ=ソトースを囲む形で陣形を取ると射撃を開始した。

 連続で響く発砲音と共に撃ち出された弾丸はハスターを握り潰そうとするヨグ=ソトースに直撃するも効果がなく、ましてや眼中に無いようでハスターの抹殺に集中する。じわじわとやってくる死に、ハスターは屈することなく足掻き、足掻き、足掻き続ける。例えそれが無意味だとしても、自分は憎きヨルハを殺すまで死ねないと、その強い意志を示す。

 だが現実とは非情なり。いくら抵抗したところでヨグ=ソトースにかなわない。足掻くにも効果がなく、一方的な殺意が向けられるだけに終わる。




_もはやここまでか。




 彼は諦めてしまった。せめてもの構成員らだけは助けてやりたかったのだろう、目から涙が溢れ出る。最期の最期まで迫り来る死に対する恐怖ではなく、仲間を想うその気持ちが上回って余計に悲しくなる。

 そしてハスターは目を閉じた。いずれやって来る自身の死を受け入れるように…














「お取り込み中、悪いが勝手に殺さないでくれるか?」



 その時だった。どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてきたのは。

 閉じていた目を開けるとヨグ=ソトースの影から巨大な獣の顎が飛び出し、ハスターを掴んでいる腕を除く全ての部分を噛み砕いた。食われたらヨグ=ソトースは為す術もなく、また訳が分からない状態で影に飲み込まれてしまい、飛び散った血や内臓を残して消え失せた。

 当然、腕だけ残ったものは重力に任せて地面へ落下し、ハスターを解放。しばらく動けそうにないハスターは無理矢理立ち上がろうとしたが、上手く立てず、後からやってきた構成員らの肩を貸してもらい、やっとの思いで立ち上がった。

 骨の何本かは逝ったものの、魔人の効果なのだろう立てるだけのことはあるようだが、重症に変わりない。息を整え、ブクブクと影の中から現れる黒い男、零児を見つめて静かに鼻で笑った。



「やれやれ…。殺されたら困るってのに…」

「は、はは…死ぬかと思ったぜ…」

『あ?んだこりゃ…?』



 互いに苦笑いしてる中、獣の牙もといアンブラは口をもごもごと動かすとペッと何かを吐き出した。

 それは赤い球体で黒い線が縦に一本、蛇のような目玉のように広がるとぎょろぎょろと不気味に動き始める。その動きが合図だったのかどうか定かではないが、ハスターを握っていた腕やそこらへんに散らばった血や肉片を吸収し始めた。

 何か嫌な予感がするハスターは冷や汗を流し固唾を飲んだ。その嫌な予感は的中し、血や肉を一箇所に集まると少しづつだがあの化物の形に戻りつつあった。



「まさか…再生…!?」



 言うなれば再生。ここまでの生命力があればもはや生き物としての概念を越えている何かとしか言い様がない。

 ただ再生には時間がかかるらしく、もごもごと血肉が繋がっているものの完全に元の姿に戻せていない箇所もいくつか確認できる。再生に少し焦っている様子もあり、どのみちこの状況を打開しない限りヨグ=ソトースは復活してしまう。

 それを止めようと動くハスターだったが、零児は手を挙げて遮り、落ちていたガスマスクを拾うと口元に付けてハスターを見つめるだけで攻撃する様子もない。



「れ、零児!?お前何を…!?」

『お、おいおいレイちゃん!?さすがにこれまずいんじゃないの!?』

「急かすんじゃねぇよ。よく見な」



 この状況に焦る一人と一匹だったが、零児は何か分かっているのか、どこか余裕を感じる。そして集まって再生していく肉塊に違和感を覚えたハスターとアンブラは口を開き呆然とする。

 形が少しづつ…元の人の形に戻っていく。かつて悪魔として暴走していたあの醜い姿とは違い、ちゃんとした人の姿で零児たちの前に現れたのだ。

 ただ、完璧に戻ったという訳では無いようで、集められた肉片が足りなかったのか生首だけが形作られ、宙に浮いたまま目を開いてハスターと構成員らを見つめる。



『…すまなかったな、ハスター』



 そして口が開いた。最初に言い放った言葉はハスターに向けての謝罪。

 それだけ短い言葉とは言え関係なく、ハスターは目から涙を流した。ずっと前から聞き、久々に耳にした優しい声に、ハスターは涙を流しながら歩み寄る。



「兄貴…」

『お前らには苦労をかけた。俺は正気を保てず、悪魔となってお前らを殺してしまった。いくら体が悪魔になったとしても自身の手で殺してしまったのは事実…この罪はあの世で償うとしよう』



 久々の再会にハスターは生首もといヨグ=ソトースに手をかけようとするが、再び零児に止められた。何かと思い零児を見つめると、一丁の拳銃を握った腕が伸びていることに気付く。

 何故こんなことするのかわからないハスターだったが、ふと零児の顔を見ると顎を突き出して何かを指示している。

 …いや、訂正しよう。ハスターは零児が銃を手渡そうとしてきた瞬間、零児は何がしたいのかわかっていた。

 どうやら零児は''ハスター自身の手でトドメを刺してやれ''と言いたい様子だった。零児の目は本気そのもの、冗談とかそういうのではないのは明らか。

 けど、ハスターには出来なかった。魔人とはいえ、悪魔とはいえ、両者とも元を辿れば人間。人間だからこそ躊躇したり、戸惑ったり、悲しんだりする。

 そしてハスターの感情は''迷い''。本当に今ここでヨグ=ソトースを殺してもいいのだろうかという''躊躇い''だった。

 世間から魔賊と称され恐れられている彼らは悪魔を殺せても人そのものは殺せない。殺した経験なんてなく、心に今から死ぬ人間の同情をしてしまい、そう簡単に決断など出来ない。

 自分はどうすればいいのか分からない状態だった。今ここでヨグ=ソトースを殺せば、彼は救われるのかもしれない。頭の中ではそう分かっているが、体や心がそうとも言えず、どうしても決断が緩んでしまう。



「…なに、悩むことはねぇ。あいつを見てみろよ」



 そんな苦渋の決断に迫られている中、ハスターは零児に肩を叩かれ、ふと顔を見上げる。零児が見る方向、そこには生首だけ浮いているヨグ=ソトースが目を瞑っている姿が見えた。

 …彼は待っているのだろう。ハスターにトドメを刺される、その瞬間を。

 自分の愛する仲間を殺してしまい、自分の最期は自分の愛する仲間に殺される。それがヨグ=ソトースに出来る、せめてものの罪滅ぼしなのだろう。

 ただ、口元をよく見ると震えているのがわかる。ヨグ=ソトースは恐怖しているのだ、これから行く地獄という未知の世界に。



「死ぬのが怖くない人間なんて誰もいねぇ。あいつはどうも、アンタにトドメを刺されないと安心出来ないらしい」

「零児…」



 もしかしたら、零児は適当なことを言ってるのかもしれない。だがその言葉にどこか重みがあるのか、ハスターは一言述べてから一呼吸置き、渡された拳銃を手に取ると引き金に指をかけたままヨグ=ソトースに近づく。

 一歩、また一歩…ゆっくりと足を動かす。願わくばこの時間が永遠になって欲しいと心から思うハスターだったが、決断してしまった以上後にも引けないし立ち止まることも出来ない。

 そして距離が縮まると、ハスターは拳銃を構えてヨグ=ソトースの額に銃口を当てた。体内にある心臓が速く、熱く、大きく揺れて音をかき鳴らし、体全身を暑くする。

 呼吸が乱れる。自身が緊張している何よりの証。これから人を殺す。初めて人を殺して何とも思わないやつは人ではない、それこそ悪魔だろう。



『やってくれ…ハスター…』



 最後の最後で耳に残る、優しい声。周囲を見渡すと止めもせず、ただ見守る構成員らと振り返らず、どこかへ去ろうとする零児の背中姿。

 もうやるしかない。ハスターは決意し拳銃を握っている手に力を込めてギチギチと締め上げる。

 涙で視界が悪い。でも銃口は額に当てたまま。いくら銃の素人でも外すことはない。あとは指にかけた引き金を引けば、終わる。

 そんな中、ハスターの脳裏には今までヨグ=ソトースと過ごした時間が目に浮かぶ。

 初めてであった時、ヨルハの研究所から逃げ出した時、反逆軍を作って仲間を集めた時、一緒に飯を食った時、一緒に悪魔を狩った時、一緒にこの空間を発展させた時、一緒にバイクに股がって自由気ままに走り回った時、喧嘩してしまった時、自分の悩みを聞いてくれた時。

 …そして一緒に仲間達と笑って過ごした時。














「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」














 …その日、反逆軍本拠地の地下にて。一人の男による嘆きの叫びと共に…銃声が轟いた。
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