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第4章
第37話 あんなさんからの頼みごと
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【尾関 きみか】
告白すると心に決めてから、奈央と普通に話せなくなってしまった。
奈央があんなに好きで好きで仕方ないと言っていたのは自分のことだったんだと思うと、情けないくらいに照れてしまい、その顔をちゃんと見ることすら難しくなった。
クリスマスの日は色々とごちゃごちゃしてたし、シャンパンの麻酔もかかってたけど、それから二週間も経って完全に正常な状態に戻ると、いつも身につけていたガチガチの鎧は、柔らかいコットン生地に変わっていた。自分でもかなりキャラ崩壊をしてると実感する。
こんな自分は奈央が好きになってくれた自分じゃないから嫌われるんじゃないかと不安になったけど、どうしようもなかった。
とにかく早くキーホルダーを見つけなきゃという気持ちが高ぶり、なりふり構っていられなくなった私は、一万円くらいする折りたたみ式の金属探知機をネットで買った。
そして、今もまだ定期的に探しに来ている奈央と出くわさないよう、毎朝早朝にそれをリュックに入れ土手に行った。
探知機をかざして反応が出たらその場所の草を手でかき分けて探す……。だけど、いくらそれを繰り返しても、出てくるのはゴミばかりだった。
せっかくだからと、ゴミ袋片手にゴミを拾いながら探していたので、毎日同じ時間に通りかかるおばあちゃんに『いつもありがとうね』とお礼を言われるのが近頃の日課になりつつあった。
奈央からはバイトのたびにご飯に誘われたけど、まだ何もしてあげられてないくせに幸せに甘えてはいけないと自分を戒め、ライブハウスの方のバイトを理由に心苦しくも毎回断っていた。
意識して全身全霊で認めると、こんなにも自分は奈央のことが好きだったのかと、改めて自分でも驚愕する。
少し前までの自分を思い返すと、よくもあんなに平気でいられたもんだと感心さえした。あの頃の私は心に頑丈な鉄のフタをして、よっぽど強がってたんだと思う。素直になった今の私は、しまいにはあんなさんと楽しそうに話してる奈央にすら嫉妬をした。奈央を思い浮かべるだけで言いようのない不安にかられたり、他の全てのことがどうでもよくなるくらい幸せにもなれた。
今はまだ伝えられない奈央への想いを全部土手へぶつけて、とにかく私は日々一心不乱に探し続けた。
「尾関ぃ~!一生のお願いがあるんだけど……」
ある日のバイト終わり、休憩室の大きなテーブルの上にシフト表とバイトの名簿を広げた状態で、文字通り頭を抱えたあんなさんが甘えたような口ぶりで言ってきた。
「なんですか?ちなみにその一生のお願いってやつ、もう軽く20回は使ってますけど?」
「私は毎日新しい命だと思って生きてるから」
「はいはい。で?なんですか?」
「しばらく夜勤に移ってくんない?」
「えっ、夜勤!?誰か辞めちゃったんですか?」
「そうなんだよ、森本くんがフルで入ってくれてたんだけど、こないだお父さんが大怪我しちゃったらしくてさ、実家の農家を手伝わなきゃいけなくなったんだって。すぐにでも帰らないといけないから、今入ってるシフトも出られなくなっちゃって……」
「そうゆうことならどうしようもないですもんね……」
「うん。しかもさ、このタイミングで松田さんまで辞めたいって言い出して……」
「松田さんて、つい最近入ったばっかりのおじさんですよね?その人はなんで辞めたいんですか?」
「シンプルに辞めたいんだって」
「……なるほど」
「夜中起きてるのが死ぬほど辛いって私の前で泣くんだもんよ、自分から夜勤希望で入ってきたのに……」
「それはまた別の意味でどうしようもないですね……」
「つーわけでさ、なるべく早く募集かけるから、それまでの間ダメかなー?」
夜勤に回ると奈央に会えなくなる……正直それが淋しくて嫌だったけど、あんなさんが困ってるのに断ることは出来ないし、実際、今は奈央からの毎度の誘いを断り続けている気まずさもある。それに、夜勤に移れば明るくて探しやすい昼の時間帯に土手へ行けると思った。
「いいですよ!」
「マジ!?さすが尾関!!今度お礼にほねっこ買ってあげるからね!」
「それはベスが喜ぶやつじゃん」
「もう一人もすぐ見つけるから、じゃあ悪いけどしばらく頼むわ!」
こうしてその二日後、早速私は夜勤へと移ることになった。
告白すると心に決めてから、奈央と普通に話せなくなってしまった。
奈央があんなに好きで好きで仕方ないと言っていたのは自分のことだったんだと思うと、情けないくらいに照れてしまい、その顔をちゃんと見ることすら難しくなった。
クリスマスの日は色々とごちゃごちゃしてたし、シャンパンの麻酔もかかってたけど、それから二週間も経って完全に正常な状態に戻ると、いつも身につけていたガチガチの鎧は、柔らかいコットン生地に変わっていた。自分でもかなりキャラ崩壊をしてると実感する。
こんな自分は奈央が好きになってくれた自分じゃないから嫌われるんじゃないかと不安になったけど、どうしようもなかった。
とにかく早くキーホルダーを見つけなきゃという気持ちが高ぶり、なりふり構っていられなくなった私は、一万円くらいする折りたたみ式の金属探知機をネットで買った。
そして、今もまだ定期的に探しに来ている奈央と出くわさないよう、毎朝早朝にそれをリュックに入れ土手に行った。
探知機をかざして反応が出たらその場所の草を手でかき分けて探す……。だけど、いくらそれを繰り返しても、出てくるのはゴミばかりだった。
せっかくだからと、ゴミ袋片手にゴミを拾いながら探していたので、毎日同じ時間に通りかかるおばあちゃんに『いつもありがとうね』とお礼を言われるのが近頃の日課になりつつあった。
奈央からはバイトのたびにご飯に誘われたけど、まだ何もしてあげられてないくせに幸せに甘えてはいけないと自分を戒め、ライブハウスの方のバイトを理由に心苦しくも毎回断っていた。
意識して全身全霊で認めると、こんなにも自分は奈央のことが好きだったのかと、改めて自分でも驚愕する。
少し前までの自分を思い返すと、よくもあんなに平気でいられたもんだと感心さえした。あの頃の私は心に頑丈な鉄のフタをして、よっぽど強がってたんだと思う。素直になった今の私は、しまいにはあんなさんと楽しそうに話してる奈央にすら嫉妬をした。奈央を思い浮かべるだけで言いようのない不安にかられたり、他の全てのことがどうでもよくなるくらい幸せにもなれた。
今はまだ伝えられない奈央への想いを全部土手へぶつけて、とにかく私は日々一心不乱に探し続けた。
「尾関ぃ~!一生のお願いがあるんだけど……」
ある日のバイト終わり、休憩室の大きなテーブルの上にシフト表とバイトの名簿を広げた状態で、文字通り頭を抱えたあんなさんが甘えたような口ぶりで言ってきた。
「なんですか?ちなみにその一生のお願いってやつ、もう軽く20回は使ってますけど?」
「私は毎日新しい命だと思って生きてるから」
「はいはい。で?なんですか?」
「しばらく夜勤に移ってくんない?」
「えっ、夜勤!?誰か辞めちゃったんですか?」
「そうなんだよ、森本くんがフルで入ってくれてたんだけど、こないだお父さんが大怪我しちゃったらしくてさ、実家の農家を手伝わなきゃいけなくなったんだって。すぐにでも帰らないといけないから、今入ってるシフトも出られなくなっちゃって……」
「そうゆうことならどうしようもないですもんね……」
「うん。しかもさ、このタイミングで松田さんまで辞めたいって言い出して……」
「松田さんて、つい最近入ったばっかりのおじさんですよね?その人はなんで辞めたいんですか?」
「シンプルに辞めたいんだって」
「……なるほど」
「夜中起きてるのが死ぬほど辛いって私の前で泣くんだもんよ、自分から夜勤希望で入ってきたのに……」
「それはまた別の意味でどうしようもないですね……」
「つーわけでさ、なるべく早く募集かけるから、それまでの間ダメかなー?」
夜勤に回ると奈央に会えなくなる……正直それが淋しくて嫌だったけど、あんなさんが困ってるのに断ることは出来ないし、実際、今は奈央からの毎度の誘いを断り続けている気まずさもある。それに、夜勤に移れば明るくて探しやすい昼の時間帯に土手へ行けると思った。
「いいですよ!」
「マジ!?さすが尾関!!今度お礼にほねっこ買ってあげるからね!」
「それはベスが喜ぶやつじゃん」
「もう一人もすぐ見つけるから、じゃあ悪いけどしばらく頼むわ!」
こうしてその二日後、早速私は夜勤へと移ることになった。
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