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第二章 せんれい
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しおりを挟む月曜日。
私は進学特化クラスの洗礼を受けていた。
授業のスピードが速すぎて付いて行けないのだ。
先生はもう生徒が理解しているものとして授業を進行する。
生徒はそれが当たり前の様に受け入れている。
まるで塾の授業だった。
辛うじて私がこの日の授業に喰らい付いていけたのは、日曜日の須藤くんのお蔭だった。
彼は帰り際、私にプリントの束をくれた。
それは夏休みの課題のプリントで、休み明けはそれを元に授業が進むと教えてくれたのだ。
目を通すと大体前にいた学校と同じようなところだった。
なので私は夜に玉彦解説による勉強をしていた。
お昼休みになり、私はぼーっと外を眺めていた。
こんなんで私、ここでやっていけるんだろうか。
家でかなりの予習をこなさないと次の日の授業に付いて行けない。
玉彦も豹馬くんも須藤くんも、部活もしていつ勉強しているんだろう。
夏休みの間しか知らなかった彼らの生活は学校が始まるとどう変わるんだろう。
机に突っ伏して動けない。
私、ここより緩い通山の国明館に帰りたい。
もしくは違う科に変わりたい。
「比和子ちゃん?」
亜由美ちゃんの声にがばっと身を起こす。
私の天使!
今朝一緒にお昼を食べようと亜由美ちゃんは香本さんと教室に誘いに来てくれた。
もちろん香本さんがお目付している小百合さんも一緒。
彼女はだいぶん柔らかくなったそうで、普通に接しているのだと香本さんは笑っていた。
でも私が一緒だと嫌がるんじゃないかな、と言えば小百合さんはもう次の恋に走っているらしく、玉彦は眼中にないらしい。
まるで那奈のようだと私は思った。
「どうしたん? 中庭にいこ?」
「うん!」
南天さんが作ってくれたお弁当を持って、私は三人の後に付いて行く。
国明館では学食で、お弁当ではなかった。
だからこのお昼タイムは私の憧れだった。
みんなで楽しくお外でランチ。
しかも女子と!
男子ばっかの教室から離れて!
空いている芝生に座り、丸くなりお弁当を開く。
遠足みたい。
三人に進学特化の愚痴を言っていると、妙に騒がしい一団がやって来て私たちのところで足を止める。
見上げれば那奈とその友達だった。
「あっ比和子。うちらも一緒に良い?」
「あ、うん」
そうして輪が大きくなる。
那奈は私の隣に座って、総菜パンを開ける。
亜由美ちゃんたちも普通に彼女たちを迎え入れて談笑している。
「あんた進学特化に入ったんだ?」
「うん。でももう違う科に行きたいよ……」
那奈はそんな私の様子を見て口をへの字にする。
酷く同情しているようだ。
てゆーか那奈はお兄ちゃんから私が進学特化にいたと聞いていないのだろうか。
「あたしと同じ普通科に来ればよかったのに」
「もうあとの祭りだよ……」
「進学特化は特殊だからね。自分たちはお前たちとは違うんだって雰囲気ありありで腹立つ」
中庭を見渡せば、青いラインが入った生徒は他の色のラインの生徒と一緒にはいない。
青だけで固まっている。
「だからあんた、目立ってた。家政科の生徒とお昼って」
笑って那奈は肩を叩く。
友達なんだからどこの科かって関係ないと思う。
それに私があの男子たちとお昼を一緒にするって有り得ない。
たぶん話すことないと思う。
「比和子らしくていいじゃん。つんけんした転校生よりか全然好感度あるよ」
「それ、褒めてる?」
「どう思う?」
那奈と顔を見合わせて笑い合う。
「随分と楽しそうだね~。僕たちも混ぜてよ」
そこに須藤くんと豹馬くんが合流。
須藤くんは私を挟んだ那奈の反対側に座り、豹馬くんは亜由美ちゃんの横に収まる。
那奈はテンションが上がって、私越しに須藤くんと楽しく会話をしている。
「ねぇ那奈。ここにも進学特化らしからぬ二人がいるよ」
「須藤と御門森は鈴白仲間だからあんまそういう意識持ってないんだよ」
「何の話?」
「進学特化が鼻持ちならないって話」
那奈の的確な表現に須藤くんは苦笑いする。
彼もそれは感じているらしい。
「あれ、そういえば玉様は?」
那奈が周囲を見渡す。
この二人と一緒に居ても良さそうだけど、玉彦はいなかった。
玉子焼きを摘まんで、須藤くんは何となしに言う。
「さっき先生が上守さん呼びに来てさ、いないから玉彦様が代わりに受け取りに行ったみたいだよ」
何を?と聞くまでもない。
私はまだ半分残っているお弁当箱の蓋を閉めて、立ち上がった。
編入試験の解答用紙だ。
あれを玉彦に見られるわけにはいかん!
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