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第四章 はじめて
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しおりを挟む帰りの車の中で玉彦の話を詳しく聞けば、普段は視えてはいないものの、何かが身体に当たり消えて行く気配は感じるそうだ。
そしてそのあとは禊をして気を整えるんだって。
ただそれが面倒なので、私が触れて視えてしまったものに関しては宣呪言で祓っていたそうなのだ。
そんなの全然知らなかった……。
いつもより早い夕餉が終わり、夕涼みをしながら縁側にライトスタンドを引っ張り、文学部から借りた会報誌を開く。
せっかく借りたのだから、最初からしっかり読む。
読み進めて一時間後くらい。
ようやくお目当てのページに辿り着いた。
『美山高校に伝わる七不思議』
待ってました!
「入るぞ」
待ってません。
会報誌を閉じて部屋の中を振り返れば、玉彦。
「あのさ、一緒に寝るのって土日って言ってなかった?」
ため息交じりに言えば、玉彦は首を傾げる。
「あんな事しといて、どの面下げて一緒に寝るなんてほざくのよ」
「この面だ」
「帰れ」
「断る」
枕を抱えて仁王立ちする玉彦を思いっきり無視して、手元の会報誌を開く。
玉彦に見つからない様に会報誌を読もうとしていたけど、実際問題こうも頻繁に部屋に来るから土台無理な話だった。
彼は一体私が居ない生活の時はどうしていたんだろう。
南天さんは家に帰ってるって話だったし、澄彦さんとは母屋自体が別で、この親子が歓談をしている姿は想像できない。
松梅コンビは離れにいるし論外だ。
この広いお屋敷の母屋で一人きり。
私だったら寂しくなって無理だな。
そう考えてしまうと、玉彦が部屋に来るのを無下にも出来ない。
自分では絶対に認めないだろうけど、寂しかったんだと思う。
だから私がここに居る間は、少しでもそれを埋めてあげられたらいい。
私も彼と離れていた四年の年月の分、語り合いたい。
でも、流石に最近はちょっと甘やかしすぎかもとも思う。
須藤くんの話を聞けば、私を中心に考え過ぎていて堕落しているというか、何というか。
会報誌を開いたまま考えていると、勝手にお布団を敷いて枕を並べ終わった玉彦が私を包み込むように後ろに座り、左肩に顎を乗せる。
石鹸の爽やかな香りが鼻をくすぐる。
「随分と古い冊子だな」
「今日文学部から借りてきたんだ。学校の歴史とかの特集で」
「そんなものを読み楽しいのか」
「うーん。悪くはなかったよ。それにちょっと知りたかったことも書いてあるみたいだったし」
そのページを捲り、玉彦にも見えるように少し高く会報誌を持ち上げる。
おどろおどろしいレイアウトの文字で『美山高校に伝わる七不思議』と書いてある。
一瞬左肩にある彼の頭が重くなる。
またか、と項垂れたんだと思う。
でも私は考えたんだ。
お手洗いと文学部の件を踏まえて、結局は玉彦に頼るしかなくなるってこと。
だったら最初から彼に伝えておけばいい。
私は七不思議を神守の眼のステップアップに利用するから、一緒に来てとは言わないけど何かあればよろしくって。
七不思議がどこに在るのか知っていれば、玉彦も動きやすいかなって。
でも玉彦と最初から一緒には行けない。
だって一緒に行ったら、私の眼を鍛える前に無意識に祓ってしまう。
「あのね、玉彦」
「せめて須藤か豹馬を連れて行け。最低でも香本だ」
「あ、うん。わかった」
まだ何も話していないのに、全てを悟った玉彦は両腕で私のウエストを抱え込む。
首筋に顔を埋めて呟く。
「何も知らずただお前はここにあれば良かったのに。正武家の役目などどこ吹く風で、俺と共にあることだけを考えて。でもそうはいかないのだな。このまま俺の手を離れどこかへと行ってしまいそうだ」
玉彦と共に在る為に私はこうして神守の眼を鍛えようとしているんだけどなぁ。
逆に不安を煽っているとは考えもしなかった。
「行くわけないじゃん」
彼は何も言わずにただ腕に力だけがこもる。
どうして前よりも近くに一緒に居るのにこんなに不安に感じているんだろう。
「玉彦ってば意外と心配性」
「お前に関してだけは行動が読めぬ……」
「そう簡単に読まれてたまるかってーの」
しんみりしてしまった玉彦は放っておいて、私は会報誌を読み進めることにする。
数ページに亘っての特集のようだ。
はじめに、から始まって最初の一文を何度も読み返す。
え、何だこれ。
『美山高校の七不思議は七つではありません』
えーと、普通七つあるから七不思議だよね。
七つじゃないって、なんなの。
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