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第四章 はじめて
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しおりを挟む「なによ、何なのよ」
「あれは物の怪だ。以前鈴白行脚でいただろう。人型の成り損ないだ」
山に出て玉彦の姿を真似て、私と須藤くんを騙そうとしたあれか。
「もともと人の形ではないの?」
「あれらは死人の身体や、事故などを起こし他人の肉体の一部を持って行く。それを繋ぎ合わせて人型を取る。大昔は山で死ぬものが多かったから不自由はしなかっただろうが、現代では難しいのだろう。土葬ではなく火葬になっているという事情もある。大方死んだ用務員の肉体の一部を使った物の怪が目撃されてそういう話になったのだな。お前が遭遇したものと、この十五年前のものが同一かは知らん」
知らんって……。
でもあれがなぜ上半身だけだったのかこれで納得がいく。
下半身を集め切れていなかったんだ。
須藤くんが足を狙われたのはそういう理由だったんだ。
たまたま手を伸ばして足を掴もうとしたのではない。
私の時もわざわざドアの下から侵入して手を伸ばしたもんね。
あぁでも惜しかったなぁ。
あれだけ動きが鈍ければ、神守の眼を試す絶好のチャンスだったのに。
「まだ読むのか?」
もう飽きてきた玉彦が会報誌を閉じようとするので、手を挟む。
「読むよ。時間あるし。まぁ別に私は明日読んでも良いんだけど」
「そうしろ。くだらん。俺が居ない時に読め」
私が夜にこの部屋にいて、玉彦がいない時って限られてるんだけど。
「わかった。じゃあ明日も明後日も明々後日も夜に来ないでよね。私、真剣に九条さんの宿題をクリアしたいんだから」
「良いだろう。……いや、駄目だ。今夜全て読め。徹夜をしてでもだ」
「はぁ?」
玉彦の変わりように首を捻る。
なんでこんないきなり協力的になったのか。
隣で玉彦はまだ私が読んでいない所まで速読し始め、概要の説明だけをしようとする。
「ちょっと、何なの。自分で読むから大丈夫だよ」
彼が手元に引き寄せていた会報誌を引っ張る。
せめて半分こにして読んでよね。
文句を言いたげな玉彦を無視して、私は会報誌の続きを読む。
七不思議改め六不思議はさっきの
『トイレの用務員さん』
『女教師と男子生徒の恋』
『笑うポスター』
『音楽室のベートーベン』
『本校舎階段の真夜中の鏡』
『校内を徘徊する怪物』
文化部で亜由美ちゃんと遭遇したのは、『女教師と男子生徒の恋』の不思議だろう。
内容を読めば女教師は家政科の先生だって書いてあるし、裁ちばさみを持っていたのも被服授業の為だ。
この話はよくあるモノで、女教師と男子生徒が恋に落ちて、でも男子生徒は他に好きな子が出来てしまって、女教師は男子生徒の首を絞めて殺してしまった。
で、自分を振った男子生徒を恨むのではなく、男子生徒が恋した女の子に嫉妬が向いてしまって女子生徒を襲うという。
でもどうして用務員さんも女教師も私をピンポイントで狙ってきたんだろう。
やっぱり、コイツ視えてる!ってわかると襲ってくるんだろうか。
とりあえず六不思議のうちの二つはもうない。
これだとお父さんと澄彦さんが消失させてしまった件と同じだ。
美山高校の七不思議は、現在四不思議になってしまった。
しかも親子二代に亘る正武家のせいで。
真剣に読み進めて、次はどの不思議に挑戦するか考える。
音楽室はどこに在るのかまだ知らないし、校内を徘徊する怪物は徘徊しているから発見するのが難しい。
でも鏡の件は大丈夫なんじゃないだろうか。
神守の眼があれば、何かは視えるはず。
それと笑うポスター。
校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下に在るらしい。
このどちらかを見に行こうと玉彦に相談しようと隣に目を向ければ、じっと私を見つめていた。
物凄く真剣な眼差しで。
「どうしたの?」
相談事が一瞬飛んでしまって、別のことを口にしてしまった。
彼の指先が私の顎を辿り、首筋へ進む。
「横顔のこのラインが綺麗だ」
「は?」
唐突に褒められて、正直コイツ、何言ってんだと思った。
どんな流れでそんなことを言い出したのか見当もつかない。
四年前の玉彦は、結構そういう所があった。
いきなり会話が始まって、いきなり話題が切り替わる。
あとから知ったけれど、頭の回転が速い人って小さい頃そうなることが多いらしい。
凡人の私には理解に苦しむ。
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