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第六章 せいどう
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しおりを挟む「怪我を負ったのは、次代の稀人になる竜輝である。正武家の役目以外で竜輝に怪我を負わせた清藤はどう責任を取ると? 御門森と清藤は同格ではない。格下の清藤がどう責任を取れるのだ? 教えてくれ、主門」
「そっ、それは……」
「それと幼子の希来里だが、あれは次代に嫁ぐ惚稀人の縁者である。大雑把に言ってしまえば正武家の外戚の子である。さて、主門。如何致す」
あんまりの内容に口を噤んでしまった父親とは裏腹に、亜門が澄彦さんに喰って掛かる。
段々と現される本性に、私は少し座っている位置を離す。
「元はと言えば、廊下を走っていた子らが悪いのではないですか! 私だって被害者でございます!」
いやいや、良く考えようよ。
小二と三歳児が足にぶつかったからって、ガタイの良いあんたが怪我なんてしないでしょうよ。
「ふむ。確かになぁ」
「お言葉ですが! 私も二人も廊下を走っても歩いてもいませんでした」
「走っていただろう! 嘘を付くな! 付き人の分際で!」
さっきから気になっていたけど、私のこと付き人ってどうやったら勘違いできるのよ。
もしかして多門から、御倉神といた私の話を聞いたのだろうか。
彼は私を御門森の人間だと勝手に勘違いしていたし。
それにしても澄彦さんはその付き人発言について一切否定もしないし、触れもしない。
何か考えがあってのことだろうから、私からは言わないでおこう。
「では互いに、証拠を出せ」
しょ、証拠ー!?
そんなの後は竜輝くんか希来里ちゃんに証言してもらうしかない。
えー、どうしよ……。
隣の亜門も澄彦さんの無茶ぶりに唖然としていた。
だって嘘を本当にする証拠なんてどこを探してもあるはずないもん。
「畏れながら! 澄彦様!」
部屋の一番後ろから香本さんが大声を出して挙手をする。
しかも見えやすいようにぶんぶんと振っている。
「どうした、香本」
「あのっ! 申し訳ないのですがっ! ちょっとだけ比和子さんにお渡ししたいものが!」
「……今か」
「はいっ! 今です!」
「一分で終わらせるように」
澄彦さんの許可を受けて、香本さんは亜門とは反対側の隣に片膝をつく。
そして小声で囁く。
「廊下に落ちてたよ。とりあえず保存はしておいたから」
そうして手渡されたのは、私の行方不明になっていたスマホだった。
証拠、あった。
じゃがいも動画だ!
ばっちり蹴られた瞬間や音声が入っているはず!
私は素早くスマホを操作して、動画を確認する。
大丈夫だ。
これなら、イケる!
ついでにちょちょいとスマホをいじれば、当主の間にいた玉彦と清藤の人たち以外の人間が一斉に微妙な動きをする。
亜門を見て思わずニヤリと笑ってしまう。
覚悟しておけよ、この野郎!
「澄彦様。証拠をお見せします」
そう言って私はスマホを、印籠の様に前に突き出した。
「この中の動画に先ほど言った台所でのじゃがいも」
途中まで言った私の手から亜門がスマホをひったくる。
そしてあろうことか、真っ二つに折ってしまった……。
どんだけの馬鹿力よ!
てゆーか、私のスマホ、どうしてくれんのよ……。
「亜門。もう良い、下がれ。比和子に対するお前の態度、不遜不快である」
亜門は勝ち誇ったように私を見下ろした後、元居た場所へと腰を下ろした。
「して比和子。動画とは」
「蹴られた瞬間が偶然に撮れていたんです……」
「そんなのは嘘だ!」
亜門が背後から叫ぶ。
振り返り睨めば、顔を逸らした。
そして前に向き直ると、玉彦が立ち上がり私の隣に座る。
澄彦さんに呼ばれてもいないのに。
「どうした、次代よ」
澄彦さんは頭上に疑問符が浮かんでいた。
私も同じだ。
「私の比和子は嘘を付くような人間ではありませぬ」
「だからどうしてお前が前に来るのだ?」
「そろそろ私の証言の刻かと」
呆れたように澄彦さんは扇子を広げて煽ぎ出した。
こちらを見て微笑んだ玉彦は小さく護りに来た、と口を動かす。
あぁ、玉彦はこれからここで起こることを何となく気が付いたんだな。
私と香本さんがニヤリと笑い合ったのを見逃していなかったんだ。
「澄彦様、今携帯電話等お持ちでしょうか」
私の突拍子もない質問に、思わず澄彦さんは袂へ手を入れた。
あ、持ってるんだ。
「実は先ほどの動画、私が知り得る限りの正武家の関係者のアドレスに一斉送信しました」
ついでに本当の万が一の為に、小町と守くんにも送っていた。
「えっ?」
一瞬澄彦さんが素に戻り、目をパチパチさせて懐からピンクゴールドのスマホを取り出す。
手元で操作をして、眉間に皺を寄せ始める。
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