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第六章 せいどう
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しおりを挟むそして澄彦さんの行動を見ていた、先ほど微妙な動きをした面々が自分の物を確認し出す。
みんなはきっとこの当主の間に集まる前に、香本さんから何か言われて普段なら禁止されているスマホを持ち込んでいた。
香本さんって結構大事なここぞという所で頭が切れる。
彼女は物事の一手二手先を常に読んでいるようだった。
「……確認した。下がれ、比和子。ご苦労であった。……ついでに次代も下がれ」
二人揃って頭を下げて、南天さんが待つ席へ戻ると彼は私に黙礼をする。
やったよ、竜輝くん、希来里ちゃん。
あいつに絶対謝罪をさせるからね。
私たちが落ち着くのを待って、澄彦さんが清藤主門を呼び、自身のスマホを見せると絶句した。
動画には三人の愉快な会話から始まり、竜輝くんが蹴られる瞬間、私が蹴られた為にスマホが吹っ飛び、天井のみ映していたものの音声がバッチリと入っていた。
主門はその場で土下座をし、手先が傍から見ても揺れている。
「申し開きも御座いません! 愚息が、愚息がこのようなことを仕出かすとは!」
澄彦さんは主門に対し、上げよ、とは言わなかった。
亜門を見据え、目を細める。
「して、亜門。すでに自身の嘘が露呈した訳だが、如何する。この正武家澄彦を謀ろうとしたこと、決して赦さぬが、弁明があれば聞いてやる」
亜門は顔を真っ赤にして立ち上がる。
その拍子に宗祐さんと南天さんが、腰を浮かせていつでも太刀を引き抜く体勢を取った。
「それはあの付き人が勝手に作ったんだ! 私はしていない!」
どこまで卑怯なんだろう。
こんちくしょうと思って、非難する声を出す前にそれを制止する玉彦の白い袖。
「亜門。正武家玉彦である。随分と久しいな。……先ほどからお前が付き人と呼んでいる、この比和子は私の惚稀人である。その惚稀人、幾度も侮辱するは赦さぬ」
凛とした玉彦の声に、主門はさらに震え、亜門は青ざめて、多門はバツが悪そうに頭を掻いた。
それもそのはずだ。
言祝ぎに来たっていうのに、その相手に怪我をさせて、しかも嘘つき呼ばわりして罪を被せようとしたんだから。
胸がスッとする。
これでもう、亜門には何らかの罰が下されるだろう。
けれど、亜門の悪あがきのとばっちりが私に飛んできた。
「惚稀人だからって俺に眼を使ったのは許されるのか! しかも殴ったんだぞ!」
確かに、使ったけど。
正当防衛だと私は思う。
でも止めておくだけで、殴るのは余計だったかな?
でもあの場面で、恐怖の対象でしかなかった亜門に抵抗するにはああするしかなかったとも思う。
「甘んじて罰があれば受け入れるが、その前にアイツを殴らせろ! それでお相子だ」
私に対して指差す亜門に、何かがプチンと切れた。
「さっきから言わせておけば、あんた馬鹿じゃないの!? 殴らせろって、その前に私はあんたに蹴られて壁に叩きつけられてんのよ!」
「女の癖に、俺に口答えするのか!」
「あんたは男の癖に潔くないのよ! そもそも、何なの? 殴って殴られてそれで謝罪も無く終わらせるつもり!? 冗談じゃないわ! だったら希来里ちゃんの頬が腫れ上がったように、あんたの頬が腫れ上がるまで何度でも叩く! 竜輝くんの犬歯が上唇を突き破ったように、あんたの犬歯が上唇を突き破るまで何度でも私が蹴り上げる! その条件で良かったら、私を殴ればいい!」
私は一気に捲し立てて、亜門の前に歩いていく。
真っ赤になって立っている彼の胸に右の人差し指を何度も突き付け、私は言い放った。
「ただし、これだけは覚えておいて。私を殴れば、私は絶対にあんたを赦さない。地の果てまで追い掛けてこの『眼』であんたを壊すわ。殺さない。壊すの。自分が壊れたって認識したまま苦しめばいいわ」
とは言ったものの、そんなこと私に出来る訳がない。
まだ視て動きを止めることくらいしかできない。
お互いに睨み合ったまま、動かない。
後ろからポンと肩が叩かれる。
振り向けば玉彦が私の手を引いた。
ので、大人しく後に続けば、澄彦さんが苦笑いしていた。
「清藤主門。今後息子亜門は正武家の敷居を跨ぐこと赦さず。この場を辞し、即刻立ち去れ。この後予定されていた言祝ぎの儀は取り止めとする。流石に正武家の惚稀人を殴らせろと宣う輩に祝われたくはないのでな。以上である」
澄彦さんの言葉に、亜門を除くその場にいた全員が頭を下げた。
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