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第六章 せいどう
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しおりを挟む「結局さ、私は納得してない訳よ。解る? 須藤くん」
「あ、うん……」
「だってアイツ、一言も謝んなかったんだよ!? 自分の甥っ子がやられてそれはないと思うでしょ? 豹馬くん」
「思うけど……」
「あーもう、腹立つー。そもそもどうして私たちが殴られたのか意味が分かんない!」
「おい、比和子……」
「何よ、玉彦。私間違ってる!?」
「……二人とも。比和子はどれくらい呑んだのだ?」
「気が付いたら日本酒一升抱いて手酌してたぞ……」
あれからすぐに清藤一門は帰された。
当主の間を後にした彼らには、送りの松梅コンビだけが付き添い、出迎えの時とは違い寂しい帰還となった。
それから酒宴の座敷に一同は移動して、先ほどとは打って変わって明るい場になる。
せっかく用意した料理を無駄にすることなく、皆で美味しくいただく。
その場には竜輝くんや希来里ちゃん、何故かお祖父ちゃんたちもいてちょっとした親戚の集まりの様だった。
希来里ちゃんの頬は何事も無かったかのようにつるりとしていて、竜輝くんも上唇を三針松梅コンビに縫われたものの、腫れは無く出血も止まっていた。
御倉神が頑張ってくれた結果である。
今度出てきたら、しっかりとお礼を言わなくてはならない。
そして私はお膳の脇に用意されていたお神酒を口にして、思いの外の美味しさにずっと呑んでいた。
ふわふわしてきていい気分になり、隣にいた須藤くんや豹馬くんと楽しくお話をしていたのに、彼らのノリが悪くてイラッとする。
そこへ澄彦さんやお祖父ちゃんたちと歓談していた玉彦がやっと私のところへ来たのだけれど、納得がいかない。
だって、部屋に帰そうとするんだもん。
まだ私はみんなと居たいのに。
「比和子、何を呑んでいるのか解っているのか?」
私の手から一升瓶を取り上げた玉彦はそれを豹馬くんに渡して、彼はそれをずっと向うへと持って行ってしまう。
「あっ……。解ってるよ。お酒。だってここにあったもん。呑んでいいってことだもん」
「それは違うと思うよ、上守さん……」
須藤くんが苦笑いをして、玉彦と視線で会話する。
「だってお酒を呑めば嫌なこと忘れられるってお父さん言ってたもん」
「忘れる方法はいくらでもあるだろう」
「どんな方法よ。あんた、そう言ってまた私に変なことしようとしてるでしょ。もう無理、絶対無理」
「……」
そっぽを向いた私の視線の先には隣に戻ってきた豹馬くんが何食わぬ顔で、茶わん蒸しを食べていた。
変なことっていうか、そもそも世間一般の高二のカップルはどんな頻度であんなことやってんのよ。
小町と守くんしか参考にならない私は、隣の豹馬くんのお膳の前に座る。
すると豹馬くんは呆れたように私を見たけど、お箸は止めなかった。
「豹馬くん」
「どうした酔っ払い」
「亜由美ちゃんとチューした?」
私の質問に彼の時間は止まり、ついでに玉彦と須藤くんの時間も止まっていた。
「ねぇ、した?」
「上守に言う必要はないだろ……」
「ふーん。じゃあ亜由美ちゃんに聞いてみる」
ポケットをまさぐるもスマホはない。
そうだった。亜門に壊されたんだった。
「じゃあ、もうやった?」
「……玉様。オレ、怒っても良いのか?」
「どうして玉彦にそんなこと聞くのよ。その前に私の質問に答えなさいよ」
「ノーコメントだ」
「ねぇ、週にどれくらいするものなの? 毎日? 週一? 月一?」
身を乗り出す私に豹馬くんは絶句して、目を見開いて玉彦と須藤くんに助けを求めている。
なによ、ちょっとくらい教えてくれてもいいじゃないの。
だってわかんないんだもん。
疲れたように息を吐きだした玉彦が、豹馬くんの前にいた私を引き摺って席に戻す。
「いい加減にしろ、比和子」
「なによ、私に命令するわけ?」
「いい加減にしてください」
「嫌よ」
「玉様の言い損じゃねーか……」
「酔っ払いが管を巻くって、初めてみたよ」
そんなことを言った須藤くんへ私の矛先が変わる。
「そういう須藤くんはどうなのよ」
「え、僕? 何が?」
「毎日なの? 週一なの? 月一なの?」
彼は酷く真面目に考えた後、私に教えてくれた。
その内容に、私たち三人は目が点になった。
「最初のうちは毎日でもしたいよね。でも学生だし、一緒に夜を過ごせるのは少ないから出来ないけど。大人になれば性欲も収まってくるから、週一とか月一になるんじゃないかなぁ。だから僕的には毎日に一票。上守さんが思っている以上に高校男子の性欲って動物並みだよ」
「……そうなの?」
恐ろし気に玉彦を見れば、顔を逸らす。
そして豹馬くんを見れば、顔を伏せた。
こいつら、無言で同意していやがる。
「そもそも須藤くんは経験済みなの?」
「あ、うん。中三の時にね」
「えっ!? 誰と!?」
「内緒。上守さんの知らない人だよ」
須藤くんが、経験済み……。
天然ボケの純真そうな須藤くんが経験済み……。
あんなことしちゃってるんだ……。
想像して耳が赤くなる。
「でもしばらくは禁欲が続いていたんだよ。だってほら、稀人のお約束があったしさ。上守さんが鈴白へ来てくれたから、終わったけど」
「今彼女いるの!?」
「いないよ」
いないのに禁欲生活が終わったってどういう事なんだろう。
考え込んでいたら今度こそ玉彦が私を強制的に抱き上げた。
「比和子には刺激が強すぎる。これ以上は語るな、須藤」
「あ、うん」
「そうだよなー。自分色に仕込んで染め上げて自分以外に興味を持たれたら嫌だよなー」
「豹馬、殺すぞ」
玉彦に睨まれても豹馬くんはニヤリと笑うだけだった。
そうして私は座敷の皆にお暇の挨拶をせずに、強制的に部屋のお布団に放り出されたのだった。
そのあとのことは良く覚えていない。
ただ次の日の朝に顔を合わせた豹馬くんには酒乱呼ばわりされ、須藤くんは笑うばかりだった。
昨晩のことをあまり思い出せなく首を傾げる私に、目の下に隈を作った玉彦は、もう酒は呑んでくれるなと懇願した。
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