私と玉彦の学校七不思議

清水 律

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第七章 せんせい

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 美山高校の学校祭は、十一月の末に開催される。
 各クラスや各部活の模擬店が並び、催し物も数多い。
 五村から生徒たちが集まっているので、家族などの入場者もかなり多いらしい。

 そんな説明を午後のHRでクラス委員の五十嵐くんと塚原くんが黒板前でしている。
 今日はクラスでどんな模擬店、もしくはクラス展示をするのかと、生徒会主催の強制参加させられるイベントの参加者を決めるHRである。
 私は豹馬くんと須藤くんの協力を取り付けるために交換条件を飲んでいたので、クラス対抗歌合戦の希望者に真っ先に手を挙げた。
 すると教室内が驚きと、自分が選ばれなかった喜びの声で溢れて拍手が巻き起こった。
 この人たち、学校祭をエンジョイする気はないのだろうか。
 模擬店とかもやらずに、無難にクラス展示とか言ってるし。
 このまま放っておいたら、2Aのクラス展示は訳の分かんないマニアックな宇宙展になりそうだったので、私はまた率先して意見を言うために、挙手をする。

「はいはいはーい!」

「上守さん、どうぞ」

 五十嵐くんが私の挙手に答える。

「クラス展示って、そんなのじゃお客さんが来ないと思います!」

 私が唱えた異議に、クラスが騒めく。
 美山高校では生徒の投票により、模擬店かクラス展示で入賞すると何か良いものが貰えるらしい。
 だったらそれを目指さないと面白くない。

「このクラスは男子が多いので、女装喫茶が良いと思います!」

 すると巻き起こるブーイングの嵐。
 私は九月にこのクラスに転校してきてもう一か月半。
 大体のクラスメイトとは話をして、それなりにコミュニケーションを取っていた。
 だからもう、皆仲間だ。と勝手に思っている。

「なによ、どいつもこいつもー。勉強ばっかしてたって、思い出がない高校生活なんてクソよ、ゴミよ、価値なしよ! せっかく客寄せ男子が揃ってるんだから、やらなきゃ損でしょうよ。それと進学特化は根暗だって概念を覆してやるのよ!」

 真っ先に同意をして拍手をしてくれたのは、私の信者と呼ばれる須藤くんだった。
 それにつられてクラス内の人あたりが良いグループも賛同。
 女子二人には私から根回しをしており、もし女装喫茶になったならそのデザインや担当男子のコスプレは一任することになっている。
 あとは過半数さえ得られれば、こっちのものだ。
 ちなみに玉彦と豹馬くんは自分が客寄せとして利用されると解っているので、頑なに賛成の手を挙げない。
 こうなればもう、奥の手を出さねばなるまい。

「ちなみに女装喫茶は、家政科の2Cと合同を考えています。接客は2Aで喫茶的な事は2Cの方たちが引き受けてくれる予定です」

 進学特化は男子が多くて、家政科は女子しかいない。
 そして今は青春真っ只中。
 女子生徒との交流を、学校祭準備から終了まで経験できるのだ。
 2Cには香本さんや亜由美ちゃんもいるし、そうなれば豹馬くんも参加しないとは言えないだろう。

「五十嵐くん、もう一回採決取って!」

「あぁ、わかった」

 そうして2Aのクラスは私の策略により、2Cとの合同で女装喫茶をすることになった。
 限りあるこの学校での滞在期間中に、出来るだけ多くの楽しい思い出をみんなと作りたかった。

 放課後になってクラス委員の二人は打ち合わせの為に2Cへと向かった。
 これであらかたクラスの模擬店はなんとかなるだろう。

 私は椅子に座ってぼーっと外を眺めている。
 窓からの景色が紅葉から雪の降る冬に変わる前に、私は通山に帰ってしまう。
 この景色もあと二か月もしないで見納めだ。
 学校祭が終わる頃には蔵人の件も終わっている。そんな気がする。

「上守さん、お待たせ」

「ううん、大丈夫だよ。行こっか、須藤くん」

 私は例の如く、すぐに逃げられるように身軽にするためにカバンは教室に置いていく。
 青紐の鈴は勿論持って行く。

 今日は『笑うポスター』と『音楽室のベートーベン』を視に行く。
 どうして二か所かというと、『笑うポスター』は以前の豹馬くんの反応を見る限りガセネタだからだ。
 だからそれをガセネタだと確定させる。
 時間はそんなに掛からないはずで、だったらもう一件行ってしまおうと考えた。

 須藤くんと一緒に向かった『笑うポスター』は体育館と本校舎を繋ぐ渡り廊下に在った。
 私の目線よりも少し高い位置に貼られているポスターには『廊下はトラックではありません』と標語があり、車のトラックの窓から何故か男の子の学生がしかめっ面をしている。
 もう、どこから突っ込んでいいのかわからない。
 トラックって陸上部が走るところだよね。うん。それは理解できる。
 要するに廊下は走るところじゃないよ、と。
 それがどうして車のトラックで、運転できないであろう男子生徒が乗っているのか意味不明だ。

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