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第十一章 てんまつ
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しおりを挟む鈴白行脚の時のやつ、七不思議の用務員。
それらを玉彦は山の怪と言って、死体を繋ぎ合わせて一つのものとすると教えてくれた。
この犬外道の山の怪は、身体は人間を集めて頭を犬で間に合わせたものだと多門は説明をした。
でも自然に三体も頭を犬にしようだなんて。
申し合わせた様なその姿に違和感を覚える。
「この時期、狩りに山へ猟犬が放たれている。犬が襲われたか……。しかし身体はどこから……」
澄彦さんが扇で口元を隠し眉間に皺を寄せた。
そうなのだ。
日本は現在火葬で、三人分の遺体を手に入れることは難しい。
それにお葬式の時に遺体が無くなれば絶対にニュースになる。
三体の身体は微妙につなぎ目があり、一人ではない。
あくまでも『一人分』
しかも色はホルマリンに漬けられていたみたく白く変色……。
「あっ! あああああっ!」
私は馬鹿みたいに大声を出して白い犬外道を指差した。
どうして犬外道は私とお祖父ちゃんの家を襲ったのか。
どうして七不思議の用務員は、下半身が無くて内臓を零れさせていたのか。
三人分の遺体はどこに在ったのか。
私は一瞬で理解してしまった。
当主の間の全員の視線を集めて、私は犬外道を飛び越えて須藤くんの前に転がった。
「須藤くん! お母さんにすぐ連絡して! そっちにも犬外道が行ってる!」
あんまりにも真剣な私の言い方に、彼は廊下に飛び出してスマホから家に連絡をした。
けれどこんな時間なのに誰も電話には出ない。
お母さんも、お父さんも。
須藤くんの報告を待たずに澄彦さんは動いた。
宗祐さんと南天さんを連れて、玉彦と豹馬くんはここに残るように指示をし、私には絶対に犬外道を神守の眼で視るなと厳命をして。
当主の間に須藤くんは戻らずに澄彦さんたちと自分の家へと急いだ。
そして残された私たちの元に南天さんから連絡が入ったのは、それから三十分後。
二体の犬外道が須藤くんの家に現れて、大騒動になっていた。
けれど澄彦さんたちが到着するともう動いている外道はおらず、須藤くんのお母さんが伸してしまっていた後で、お父さんと外道を観察しながら缶ビールを呑んでいたそうである。
ホッとして私は胸を撫で下ろした。
須藤くんのお母さんは、捕物はお家芸とまで言っていたくらいだから本当にデキる優秀な人なんだろう。
それに白猿を追い掛けて山をずっと駆け巡っていた一族でもある。
ただの山の怪のイレギュラーと思っていたのかもしれない。
私は恐る恐るブルーシートの犬外道に近付いたけれど、あまりのグロさにやっぱりやめた。
澄彦さんが真っ二つにしたものもそうだし、玉彦と豹馬くんが仕留めたのも原型を留めているとは言い難い。
それに多門が解剖した後でもある。
私は縁側で立ったまま険しい顔をしている玉彦の足元に座った。
ここは空気が美味しい。
当主の間の腐臭はますます強くなっていた。
「比和子、何ゆえ須藤の家に行くと判った」
「何でって、え、なによ、皆判ってるから動いたんじゃないの?」
「違う。お前が叫んだ瞬間に犬外道の気配が現れた。須藤の家の方角だ。父上もそれを関知して動いた。場所はお前が言ったからそこへと向かったのだ」
「そんな……」
玉彦に言われてそう言えばと思い出す。
あれを視たのは私と須藤くんだけだ。
だから玉彦も豹馬くんもそれを犬外道と紐づけることがなかった。
むしろ犬=清藤という図式が出来上がっていたから、思い至らなかったんだ。
「アレ、多分七不思議の最後のやつだと思う……」
アレは歪に丸く。白く。ぬるりとしていて。
歪になっていたのは、人の手足や頭が表面に凹凸を作っていたから。
そして豹馬くんが今まで七不思議の用務員を視ることがなかったのは、用務員が完成する前にアレが成りかけの山の怪を取り込んでいたから。
私が遭遇した用務員は、もしかしたらアレに下半身を喰われたのかもしれない。
あの白い大きさを考えれば、人間五体分があってもおかしくはない。
二十五年前から山の怪を取り込み巨大化したアレの中にはもっといるのかもしれない。
私が頑張って説明をすると、いつの間にか豹馬くんも私の隣に座っていた。
玉彦を見上げながら話していたから全然気が付かなかった。
「だからって、どうして上守まで襲われてんだ? 須藤は髪を喰われたから理解できるけど」
「それはたぶん私のお父さんが原因かと思う」
二十五年前、まだ小さく弱かったアレは高校生の澄彦さんとお父さんに依代である二ノ宮金次郎の像を破壊された。
きっとそのことをまだ覚えてるんだ。
でも澄彦さんの息子や一緒にいた南天さんを襲わないのはどうしてなんだろう。
「弱き者から狙うが常套手段。だから私と豹馬が駆けつけると逃げた。御門森の家は……閻魔がいるから近寄れぬのであろう」
玉彦が閻魔と呼ぶのは九条さんで、孫の豹馬くんは納得していた。
二人がそんなにいうほど九条さんは怖い人ではないと私は思っている。
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