私と玉彦の学校七不思議

清水 律

文字の大きさ
102 / 120
第十三章 そうぼう

5

しおりを挟む

 学校祭一日目を明日に控えた日。

 私は玉彦側の母屋に置きっぱなしにしていた、自分の荷物を取りに来ていた。
 段ボールに詰め込んで片付ければ、たった三箱。
 よっこらせと持ち上げて二度往復をして、最後の段ボール箱の上に座ってしみじみと部屋を眺めた。

 色んな思い出が詰まった部屋である。
 電気を消して、障子を開け放つ。
 すると今夜は冷え込むなと思っていたけれど、空から雪が落ちてきた。
 ふわりふわりと踊っているので私は縁側から裸足で降りて、飛び跳ねて雪を掴むけどすぐに溶けてしまう。

 あの夜、背を向けた玉彦はきっと私がその袖を掴めば、消えることはなかった。
 どうして素直に自分から折れなかったんだろ。
 頭に降り積もる雪なんか気にせずに、空を見上げればぐんぐんと昇って宇宙まで行けそうな感覚になる。
 足音がして、頭の雪を払ってくれたのは誰かなんて振り向かなくても解った。

「玉彦……」

「風邪を引く」

「うん。あ、そうだ」

 私は汚れたままの足で部屋に戻って、青紐の鈴を同じく部屋に戻った玉彦に差し出した。

「これ、あげるわ。次の人と連絡取れなくなったら、大変でしょ? 私、もう必要ないから」

 無理矢理押し付けても玉彦は受け取らなくて、鈴は落ちて足元に転がった。
 でも私はそれを拾わずに、代わりに段ボール箱を持ち上げた。

「じゃあね」

「比和……」

「幾久しく健やかであれ、玉彦」

 どうか、元気で。

 私は元私の部屋に彼を残したまま立ち去った。
 廊下を段ボール箱を抱えて、私は零れ落ちる涙さえ拭えずに歩いた。

 本当はもう玉彦の胸に飛び込みたかったけど、それは絶対にしてはならないと澄彦さんや九条さんからきつく言われている。
 一緒に居てくれて当たり前では、この先玉彦の為にはならないと。
 それは玉彦の弱点でもあった。
 自分から動いて欲しいものを手に入れるという行動力がない。
 いつも何かが誰かがいて、五村の地に居れば正武家の意向により、大体の物事はそうなる。
 それでは駄目だと、澄彦さんは悲しく笑っていた。
 欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる位の貪欲さがないと、自分の命さえ諦め良過ぎてすぐに手放すだろうって。
 だから私ぐらいはきちんと求めて自分の手で掴みとれと。
 そして簡単に手放してしまったことの重大さに気が付き、二度と誤った判断をしないように、今回の一件を深く戒めておく必要があるのだ、と。

 でも玉彦ばかりに非がある訳ではないと私が擁護すれば、澄彦さんは「女の子一人の暴走で正武家が危険に晒されるなどあるはずがない。寧ろそんな事で正武家が揺らぐなら、僕はそれを見てみたい!!」と一蹴した。
 そして私は二人の言葉を信じて、玉彦の為と思ってこういう態度を取ってきたけれど、私の方が限界に近かった。
 神守の眼を行使する時に自分を殺すっていうのがどうしても……。
 自分が自分ではなくなるような感じがした。
 果たして玉彦はこの状況をどう考えているのか。
 あの夜、黙って澄彦さんと私を奥の間へと行かせたのが全てなんだろうけど。
 澄彦さんは玉彦が必ず奪還しに来ると言い切ったけれど、彼にそんな素振りは見られない。
 私も玉彦が来てくれることを前提に頑張っているけど、考えれば考えるほど、かなり分の悪い賭けをしていると思う。



 学校祭一日目は、初雪が美山高校のグラウンドを白く埋め尽くしたこともあり、大盛り上がりで始まった。

 クラス対抗歌合戦の予選を勝ち抜いた私は、意気揚々とクラスの女装喫茶へと凱旋し、皆から拍手喝采を受けた。
 それから私は那奈と学校祭を回って、他のクラスの人たちとも仲良くなって騒いで満喫。
 どうして私が自由に動き回れているのかというと、女装喫茶では私の出番や役割がないのだ。
 女装は男子が担当しているし、喫茶の方は2Cの女子たちが担当している。
 私はすることがなかった。ので、那奈が声を掛けてくれたので一緒に居た。

 騒いでいる間だけ、私は嫌なことを忘れられた。

 学校祭二日目は、亜由美ちゃんと香本さんと回った。
 ついでに玉彦と豹馬くんと須藤くんもいた。
 これもまぁ、それなりには楽しかった。
 女装した三人を連れ歩いて、笑いしか起こらなかったから。

 そしてこの日の夜、私たちは再び当主の間へと招集されていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

処理中です...