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第十三章 そうぼう
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しおりを挟む学校祭の最終日に、犬外道の親玉に成り果てたあの白い物を祓う。
それは当主の澄彦さんではなく、予定通り次代の玉彦指示のもと行われることとなった。
澄彦さん曰く、親を越えて見せろとのことで、自分の失敗を棚に上げてそれはどうかと思う。
それから惣領の間に移動して、五人で打ち合わせ。
と、思いきや多門が加わり六人となった。
通常のお役目なら、正武家の者と稀人一人で臨むので、この人数は異例だった。
「以上である」
玉彦がそう締めくくって、解散となる。
私はさっさと立ち上がり、惣領の間を後にしようとしたけれど、玉彦に待ったを掛けられて座り直した。
二人きりになった惣領の間で、玉彦は私よりも一段高いところから見下ろしている。
私は黙ってただ玉彦を見ていた。
「明日の夜、暴走だけはしてくれるな」
「はい」
「危険だと判断すれば、必ず私を呼ぶ様に」
「はい」
「……以上だ」
「はい」
私は返事をして、玉彦が退出するのを待っていた。
なのに一向に彼は動かない。
じっと私と睨み合うようにしている。
そもそもさ、って私は考える訳よ。
そもそも澄彦さんや九条さんは、玉彦のどんな行動を求めているのってさ。
欲しいものを手に入れるために動けってさ、父親の妻になるって女をどうすれば良いわけよ。
無理矢理駆け落ちでも企てれば満足なわけ?
そんなの正武家の惣領息子として、正武家を揺るがす一大事だもん、出来るはずがない。
じゃあ澄彦さんの母屋に乗り込んで、コイツは俺のだーって言えば言いわけ?
自分から線を引いてしまった玉彦は口が裂けても言わないと思うわ。
何てゆうかもう、策士澄彦の掌で踊らされて、私が痺れを切らすのも計算に入っているんじゃないかとさえ思えてくる。
私は俯いて、色々と浮かんでは消える言葉を繋ぎ合わせた。
「四年前」
そう言って顔を上げると、玉彦は僅かに顔を歪め、それでも無表情を保った。
久しぶりに私が形式的な会話ではないものを話し始めたからだと思う。
「私は子供だったけれど、今も子供だけど、四年前にどんなことがあっても喧嘩をしてでもきちんと話し合っていこうって決めたの。大切なことは言葉にしないと伝わらないし、大事な人と話すら出来なくて背を向けられて悲しいってことを学んだから。だから私は、自分から吹っ掛けた喧嘩ばかりだったけれど、それでも話し合う機会は必ず設けたし、私なりに頑張ってたつもり」
「……」
「あの夜、私は信じてた。玉彦も背中を向けずに、喧嘩をしてでも話し合ってくれるって。でも違ったみたいで残念だった。うん、私は残念だった」
「……」
「正武家を巻き込んで騒動を起こしてしまったことについては、ごめん。全部私の勘違いだったし。あとは、あとはね……えーと……」
「比和子、もう良い」
「……うん。ごめん」
「比和子」
「うん」
「比和子」
「何よ、しつこいわね」
「私はたとえお前が何処の誰であろうと、想いは変わらぬ。お前もそうであろう?」
「……」
「比和子」
「……今さら何を言ってんのよ。玉彦は私に背を向けてしまったじゃないの。神守の者って呼んだじゃん……。流石の私だってそこまでされたら空気を読むわよ。変わらないとか言っても、突き放したじゃん……」
「それは……」
「多門に嫉妬して、暴走した私にムカついたとしても、あんまりな仕打ちだと思うわけよ……。離さないから離れていくなとか言ったくせして、離れてるじゃん。どうなってんのよ……」
私が顔を背けて呟くと、突然立ち上がった玉彦は目の前まで来て、そして私をひょいと肩に担いだ。
「ちょっ、降ろしなさいよ」
「断る」
そう言って玉彦は惣領の間を出て、離れを出て、澄彦さん側の母屋へと足を踏み入れた。
そして澄彦さんの私室の襖を断りもなく開け放った。
私はずっとその間、担がれたままだ。
いい加減頭に血が昇ってくる。
澄彦さんはお布団に横になって、煙草の火をつけたところだった。
「どうした、次代。もう寝る時間だ。比和子はここに置いてゆけ」
澄彦さんは少しニヤついていた。
「断る」
「何だと?」
「断る、と言った。この馬鹿親父が、いい加減にしろ」
玉彦は苛立たし気に、私を降ろして、澄彦さんを見下ろして仁王立ちになった。
「先ほど比和子と話をして判った。裏で糸を引いて何を考えている」
「何のことやら父にはさっぱりだよ?」
澄彦さんは首を傾げて、ニコリと笑った。
「何が妻にするだ。ボケるのも大概にしろ。何か考えがあるのだろうと放って置いたが、もう我慢ならぬ」
「ええっ? 父は何のことやら……」
「比和子に手を出せぬことは分かっていた。比和子は神守の巫女だ。一生を捧げると仮にも私に誓っている。が、心変わりをしたのなら仕方がないと思っていたが、先ほどの会話で確信した。比和子の心はまだ私の元にある」
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