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Episode 1
出会いは涙と 4
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「映奈ちゃん、逃げて!」
「いいえ逃げません。むしろあいつを逃がしちゃダメです。ナイフなんて持ってるバカな人、ここで食い止めないとまたどこで誰が傷つくか!」
「それが映奈ちゃんである必要はないでしょ!」
「戦える人が戦うのは道理です。せめて警察が来るまでは!」
強盗は「猪口才なんだよ!」と叫びながら突進する。映奈はそんな強盗に冷静に対処。自撮り棒で強盗の右腕をはじき、その流れのまま半歩右に(強盗の左に)逸れながら自撮り棒を強盗の左首筋に叩き付ける(本来この技は頭に叩き付けるものだが、ヘルメットの上からでは意味がない)。
「ぎゃ!?」
「まだまだ!」
少女の腕から繰り出される自撮り棒の一撃は速くても軽い。一撃で大人の男を地に沈めるには力不足。故にコンボ技が必要となる。
強盗は何とか手放さなかったナイフを映奈に向けて繰り出す。だが映奈も黙って攻撃を受けはしない。強盗の攻撃を半歩下がることで回避しつつ、今度は自撮り棒を持ったその手を返し、自撮り棒のグリップの先端(刀で言う柄頭)を強盗のみぞおちに叩き付け、そのまま自撮り棒での金的攻撃、膝への足蹴り、とどめに。
「『強制バレンタインチョコプレゼント・ストライク』!」
自撮り棒のグリップでヘルメットのシールドを押し上げ、あらわになった素顔、それも口もとに自分のカバンを見舞うというもの。強盗は自分の歯で唇を切ったか血を流しながら吹っ飛び、背中から地に落ちてのたうち回った。ついに動かなくなった彼を、駅前の人々が手足をジャケットで縛り上げて身動きを封じた。
「ふぅ……。これで警察が来るまでは大丈夫でしょ。……はい、カバンです」
映奈は強盗が手放したナイフを回収し、やはり手放したカバンを右手に取って被害者の女性に返す。
「ああぁぁ、ありがとうございます、ありがとうございます! このカバンは就職祝いにっておじいちゃからもらった大切な、って!」
その時、女性は感謝の笑みから驚愕の青ざめに変わった。
「あ……、あなた、その血、その傷……!」
「え? どうしたんですか?」
映奈は気付いていなかった。
強盗が繰り出したナイフによって、いつの間にか左頬に傷を刻み付けられてしまっていたことを。
その後、映奈は入院。
映奈の活躍とそれによる負傷は速報として全国にニュースで流れ、当然その事実はファンのひとりでもある紬も愕然とさせた。
傷はふさがるも二カ月してもその傷跡は色濃く残り、年が明ける頃には事務所とプロデューサーと映奈本人の話し合いの結果、アイドルを引退するという判断に至った。状況が状況だけに、『卒業』と言うフレーズは使わなかった。
だが、その決断に対して映奈はメディアの前であっけらかんと言い放った。
「確かに強盗の件でファンや関係者の皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけした事実は変わらず、そこは大変申し訳なく思っております。アイドルとしては致命的な傷ではありますが、ひとりの人間として守るべき矜持を守れた、わたしはそう自負しています。アイドルである以前に、わたしは目の前の人に笑顔でいてほしい、ただそれだけの人間、八神映奈でありたいと思っていますので!」
その引退会見に臨んだ映奈は、失明こそ免れたものの額と頬に色濃い傷跡が残っているという痛々しい姿であった。それでもなお一点の曇りもない笑顔でそう言い放つ映奈を、メディアは「この瞬間において、八神映奈こそが世界中で誰よりも輝くアイドルだ」として彼女をたたえた。
そして、メディアのある質問が彼女に降りかかった。
「えー、この引退を以ってあなたはアイドルではなくなるわけですが、今後の活動についてのビジョンがありましたら」
「そうですねぇ~……。芸能関係は少しお休みします。復帰のめどはまだ立っていませんし、顔がこんななので復帰しないかもしれません。それはさておきまずはお夜食で禁止されていたラーメンとか唐揚げとかたらふく堪能して、趣味に関しては変わらず写真をSNSにアップして、二輪免許取ったら父のバイクで遠出して……。そうですね! 一緒にワイワイできる友達が欲しいです! できるならそう、同い年の女の子ですね!」
⚓
「いいえ逃げません。むしろあいつを逃がしちゃダメです。ナイフなんて持ってるバカな人、ここで食い止めないとまたどこで誰が傷つくか!」
「それが映奈ちゃんである必要はないでしょ!」
「戦える人が戦うのは道理です。せめて警察が来るまでは!」
強盗は「猪口才なんだよ!」と叫びながら突進する。映奈はそんな強盗に冷静に対処。自撮り棒で強盗の右腕をはじき、その流れのまま半歩右に(強盗の左に)逸れながら自撮り棒を強盗の左首筋に叩き付ける(本来この技は頭に叩き付けるものだが、ヘルメットの上からでは意味がない)。
「ぎゃ!?」
「まだまだ!」
少女の腕から繰り出される自撮り棒の一撃は速くても軽い。一撃で大人の男を地に沈めるには力不足。故にコンボ技が必要となる。
強盗は何とか手放さなかったナイフを映奈に向けて繰り出す。だが映奈も黙って攻撃を受けはしない。強盗の攻撃を半歩下がることで回避しつつ、今度は自撮り棒を持ったその手を返し、自撮り棒のグリップの先端(刀で言う柄頭)を強盗のみぞおちに叩き付け、そのまま自撮り棒での金的攻撃、膝への足蹴り、とどめに。
「『強制バレンタインチョコプレゼント・ストライク』!」
自撮り棒のグリップでヘルメットのシールドを押し上げ、あらわになった素顔、それも口もとに自分のカバンを見舞うというもの。強盗は自分の歯で唇を切ったか血を流しながら吹っ飛び、背中から地に落ちてのたうち回った。ついに動かなくなった彼を、駅前の人々が手足をジャケットで縛り上げて身動きを封じた。
「ふぅ……。これで警察が来るまでは大丈夫でしょ。……はい、カバンです」
映奈は強盗が手放したナイフを回収し、やはり手放したカバンを右手に取って被害者の女性に返す。
「ああぁぁ、ありがとうございます、ありがとうございます! このカバンは就職祝いにっておじいちゃからもらった大切な、って!」
その時、女性は感謝の笑みから驚愕の青ざめに変わった。
「あ……、あなた、その血、その傷……!」
「え? どうしたんですか?」
映奈は気付いていなかった。
強盗が繰り出したナイフによって、いつの間にか左頬に傷を刻み付けられてしまっていたことを。
その後、映奈は入院。
映奈の活躍とそれによる負傷は速報として全国にニュースで流れ、当然その事実はファンのひとりでもある紬も愕然とさせた。
傷はふさがるも二カ月してもその傷跡は色濃く残り、年が明ける頃には事務所とプロデューサーと映奈本人の話し合いの結果、アイドルを引退するという判断に至った。状況が状況だけに、『卒業』と言うフレーズは使わなかった。
だが、その決断に対して映奈はメディアの前であっけらかんと言い放った。
「確かに強盗の件でファンや関係者の皆様には多大なるご心配とご迷惑をおかけした事実は変わらず、そこは大変申し訳なく思っております。アイドルとしては致命的な傷ではありますが、ひとりの人間として守るべき矜持を守れた、わたしはそう自負しています。アイドルである以前に、わたしは目の前の人に笑顔でいてほしい、ただそれだけの人間、八神映奈でありたいと思っていますので!」
その引退会見に臨んだ映奈は、失明こそ免れたものの額と頬に色濃い傷跡が残っているという痛々しい姿であった。それでもなお一点の曇りもない笑顔でそう言い放つ映奈を、メディアは「この瞬間において、八神映奈こそが世界中で誰よりも輝くアイドルだ」として彼女をたたえた。
そして、メディアのある質問が彼女に降りかかった。
「えー、この引退を以ってあなたはアイドルではなくなるわけですが、今後の活動についてのビジョンがありましたら」
「そうですねぇ~……。芸能関係は少しお休みします。復帰のめどはまだ立っていませんし、顔がこんななので復帰しないかもしれません。それはさておきまずはお夜食で禁止されていたラーメンとか唐揚げとかたらふく堪能して、趣味に関しては変わらず写真をSNSにアップして、二輪免許取ったら父のバイクで遠出して……。そうですね! 一緒にワイワイできる友達が欲しいです! できるならそう、同い年の女の子ですね!」
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