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Episode 2
守りたいもの、守るべきもの 6
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時戻し、紬の家。
時刻にして、十一時三十分。
一階に比べて紬の部屋はきちんと整理されており、ペンライト、グッズであるタペストリーにタオル、ブロマイド、ツーショットチェキなどが壁や机、巨大コルクボードに飾られている。部屋にはベッドと勉強机と本棚、中央の円形のちゃぶ台があり(ちゃぶ台は普段たたんで壁に立てかけられている)、本棚にはガンダムやゾイド、アサルトリリィにシルバニアファミリー、塗装セット、エンジン模型などの趣味の工作も飾られている。
ふたりは二杯目のコーヒーとピザまんを口にしながら夜を穏やかに過ごす。
「紬ちゃん、わたしとチェキ撮ったことがあるんだね」
「うん。コスモアリーナの屋外ライブの時にね」
東京都所在の遊園地『東京コスモアリーナ・アトラクションズ』。様々なアトラクションの中に水族館やバーベキューサイト、屋外ライブホールがある。そこで開かれたライブに訪れた時のことで、そのサイン入りチェキ(掌サイズの即席写真)はチェキ専用ビニールカバーに入れて無傷を保って飾られていた。
「……あ。思い出した! 『私映奈ちゃんと同じ地元なんです! 応援しています!』って言ってくれた独特なコーディネートの子がいた!」
「ど、独特? かなあ?」
「だって、着丈が短くて袖が長くて青いジャケットにゆるいズボン、ブーツ、たすき掛けのワンショルダーって、思いっきり『未来から来たトランクス』だったもん! もう印象に残ってしょうがなかった。そっかー、あの時の子が紬ちゃんかあ。わたしたち、ずっと前から知り合ってたんだね。運命感じるな~」
チェキに映る過去の紬も、前髪がセンター分けで額が出ているが目が隠れているという点でも映奈が口にしたキャラクターに酷似していた。
「う、運命かぁ。だったらいいな。ホントにうれしい」
「うん。それにこうしてコーヒーとピザまんを一緒に食べるのも運命だったのかもよ。こんなに楽しいお夜食、初めてだもん!」
「アイドルとかって食事制限あるでしょ?」
「そうなんだけどねえ、寮生活の時は寮母さんがこっそり悪いことに誘ってくれたりしたんだよ。真夜中のワイルドメリケン、背徳感たっぷりだったな~」
「そうなんだ、意外」
「うん。でも事務所の関係者じゃない、友達とするお夜食は本当に最高! だから、これからももっと楽しいことしようよ」
「そう、だね。私も映奈ちゃんと一緒に楽しいことができたら本当に、もう、本当に……」
その先は言葉にならなかったようで、紬の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
そんな彼女を見て、映奈はふっと微笑む。
「泣き虫だなあ、紬ちゃんは」
「ごめん。子供っぽいよね。泣き虫なのは自覚してるんだ」
「いいんじゃない? うん、いいことだよ」
映奈はお尻を引きずって紬の隣に座り、彼女を抱き寄せて肩にもたれさせた。
「あっ……」
そこから先、ふたりに会話はなかった。
紬はただ緊張した面持ちで映奈に寄り掛かり、映奈もまたそんな紬を受け入れている。
コーヒーとピザまんから立ち上る白い湯気と香りが、ふたりの胸を満たす。
カロリー高めで背徳感しかないお夜食に、ゆったりと流れる穏やかな時間。
誰も束縛しない、誰も注意しない、ふたりだけの空間と時間、すなわち自由。
そんな自由を満喫する紬の表情は、穏やかだった。
「ふふっ。……それじゃあそろそろ食べ切っちゃおうか」
「そう、だね」
ふたりはピザまんを食べつくし、マグカップをキッチンに置きに行った。
「それじゃあわたしはここで寝るね。おやすみ」
「おやすみなさい。首が痛くなったら遠慮なく言ってね」
リビングではエアコンをかけながら映奈が眠りにつく。喉を傷めないように加湿器とマスクも忘れずに。紬も自室に戻り、毛布をかぶってまどろむ。
時刻にして、十一時三十分。
一階に比べて紬の部屋はきちんと整理されており、ペンライト、グッズであるタペストリーにタオル、ブロマイド、ツーショットチェキなどが壁や机、巨大コルクボードに飾られている。部屋にはベッドと勉強机と本棚、中央の円形のちゃぶ台があり(ちゃぶ台は普段たたんで壁に立てかけられている)、本棚にはガンダムやゾイド、アサルトリリィにシルバニアファミリー、塗装セット、エンジン模型などの趣味の工作も飾られている。
ふたりは二杯目のコーヒーとピザまんを口にしながら夜を穏やかに過ごす。
「紬ちゃん、わたしとチェキ撮ったことがあるんだね」
「うん。コスモアリーナの屋外ライブの時にね」
東京都所在の遊園地『東京コスモアリーナ・アトラクションズ』。様々なアトラクションの中に水族館やバーベキューサイト、屋外ライブホールがある。そこで開かれたライブに訪れた時のことで、そのサイン入りチェキ(掌サイズの即席写真)はチェキ専用ビニールカバーに入れて無傷を保って飾られていた。
「……あ。思い出した! 『私映奈ちゃんと同じ地元なんです! 応援しています!』って言ってくれた独特なコーディネートの子がいた!」
「ど、独特? かなあ?」
「だって、着丈が短くて袖が長くて青いジャケットにゆるいズボン、ブーツ、たすき掛けのワンショルダーって、思いっきり『未来から来たトランクス』だったもん! もう印象に残ってしょうがなかった。そっかー、あの時の子が紬ちゃんかあ。わたしたち、ずっと前から知り合ってたんだね。運命感じるな~」
チェキに映る過去の紬も、前髪がセンター分けで額が出ているが目が隠れているという点でも映奈が口にしたキャラクターに酷似していた。
「う、運命かぁ。だったらいいな。ホントにうれしい」
「うん。それにこうしてコーヒーとピザまんを一緒に食べるのも運命だったのかもよ。こんなに楽しいお夜食、初めてだもん!」
「アイドルとかって食事制限あるでしょ?」
「そうなんだけどねえ、寮生活の時は寮母さんがこっそり悪いことに誘ってくれたりしたんだよ。真夜中のワイルドメリケン、背徳感たっぷりだったな~」
「そうなんだ、意外」
「うん。でも事務所の関係者じゃない、友達とするお夜食は本当に最高! だから、これからももっと楽しいことしようよ」
「そう、だね。私も映奈ちゃんと一緒に楽しいことができたら本当に、もう、本当に……」
その先は言葉にならなかったようで、紬の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
そんな彼女を見て、映奈はふっと微笑む。
「泣き虫だなあ、紬ちゃんは」
「ごめん。子供っぽいよね。泣き虫なのは自覚してるんだ」
「いいんじゃない? うん、いいことだよ」
映奈はお尻を引きずって紬の隣に座り、彼女を抱き寄せて肩にもたれさせた。
「あっ……」
そこから先、ふたりに会話はなかった。
紬はただ緊張した面持ちで映奈に寄り掛かり、映奈もまたそんな紬を受け入れている。
コーヒーとピザまんから立ち上る白い湯気と香りが、ふたりの胸を満たす。
カロリー高めで背徳感しかないお夜食に、ゆったりと流れる穏やかな時間。
誰も束縛しない、誰も注意しない、ふたりだけの空間と時間、すなわち自由。
そんな自由を満喫する紬の表情は、穏やかだった。
「ふふっ。……それじゃあそろそろ食べ切っちゃおうか」
「そう、だね」
ふたりはピザまんを食べつくし、マグカップをキッチンに置きに行った。
「それじゃあわたしはここで寝るね。おやすみ」
「おやすみなさい。首が痛くなったら遠慮なく言ってね」
リビングではエアコンをかけながら映奈が眠りにつく。喉を傷めないように加湿器とマスクも忘れずに。紬も自室に戻り、毛布をかぶってまどろむ。
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