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第1章 幼少期
21話 王様と側近のその後②
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この城に食堂は2つある。
王族の食事や来客の際に使われる小綺麗な小さめの小食堂と、見張りや城勤めの者が自由に使える大食堂だ。ちなみに予約さえすれば一般の兵士たちも小食堂を使うことができる。大食堂には料理人が常駐していてどの時間帯でも食事ができるのだ。
大食堂に入ると席の8割方が埋まり賑わっていた。40人程が収容できる食堂で、昼番と夜番の入れ替わる今が混雑のピークの時間帯だ。がやがやと騒がしい中を進み、思う存分好きなものを注文する。のんびりと注文の品が出てくるのを待っているとキャンキャンと高い声がした。そちらに目を向けるとジハナが隅の方の席で見張りの兵たちに囲まれて食事をしている。
「この悪ガキが側近とはなぁ」
「側近にしちまえばもう抜け出すなんてできなくなるだろ」
「どうかな、勉強なんてすぐに飽きて遊びに行っちまうかも」
「行くなら一人で行けよ、王子を巻き込むな」
「王子がいなきゃ出かけても面白くないよ」
「王子はお前みたいなのが遊ぶ相手じゃないんだよ」
「でも楽しいって言ってくれるもん」
「お前ほんと図太いなぁ」
「ってことはまだしばらく脱走特別対策隊は解散できねぇな」
見張りたちに絡まれてはいるが険悪な雰囲気ではない。放っておいても大丈夫だろう。それよりまだ脱走する可能性があることに焦りを覚える。あとでしっかりくぎを刺しておかねば。王子とその側近が脱走など、立場が変わっても変わらず常習化するようでは困る。
にぎやかなテーブルには入れ替わり立ち代わり兵が足を止めジハナに話しかけている。ジハナの前に置かれた皿は空だ。このやり取りがどのくらい続いているのか分からないが、随分長い事テーブルに足止めされているようだった。
「お、お前ヴァーデン殿のとこのガキか?なんでこんなとこにいるんだ?」
「おお、お疲れ。こいつ王子の側近になったらしいんだよ」
「ほんとか?うへぇ、お前が近くにいたら王子がもっといたずら好きになっちまうな」
「俺だって、これからいい側近になれるよう勉強するよ。なんでみんなそんな反対ばっかりするんだ!王子に迷惑なんてかけない!」
あまり皆にくどくど言われるのでジハナが根を上げたように叫んだ。遠目でもジハナが涙ぐんでいるのが見える。こりゃ周りが苛めすぎだな。ため息をついたころ「ご注文の品ができましたよ、ネオニール様!」と元気よく料理が乗ったトレーを差し出された。料理人にお礼を伝え食事を受け取ると、ジハナに助け舟を出してやるか、と彼らの食卓の方へ歩き始める。
「あぁ、悪い悪い。別にお前を責めてるわけじゃないんだ」
「お前と王子に散々苦労させられたから、ちょっと文句を言いたくなっただけだよ。側近がんばれよ」
「ほら、クッキー食うか?うまいぞ?」
泣かせてしまったかと焦っている兵士たちに涙ぐんだままクッキーを乱暴に奪い取りかじるジハナ。近くの席に食事を置くとジハナの背後に回り銀色の小さな頭をぐりぐり撫でる。驚いたジハナが振り返り、兵士たちもぎょっとして私を見た。
「安心しなさい、このいたずら小僧は私がしっかり縄をつけて見張っておくから。それにこれは案外頭がいい、大人になれば良い側近になれるさ」
「あ、いえ、ネオニール様の人選を疑っている訳では……」
「いや、今のままのジハナで不安になるのは当然だ。ただ長い目で見てやりなさい」
私の言葉に兵士たちは「はい!」と元気よく返事をした。ふてくされたままクッキーを齧っているジハナの頭をもう一度撫で、私は食事のために席に戻る。兵士たちはジハナを応援する言葉をかけ、話題はそのまま雑談に変わっていった。
甘いものたっぷりの食事を堪能する。王のしたり顔を思い浮かべるが糖分を摂取して余裕を取り戻した頭だと許してやるか、と言う気持ちになれた。
食事も後半になったところでジハナが話しかけてくる。
「さっきはありがとうございました」
「お前はこれから皆からの評価を変えねばならん。苦労するぞ」
「はい、頑張ります」
「うむ」
「えぇと、俺、部屋に戻ります。おやすみなさい」
「あぁ、お休みジハナ」
食事を終え公務に戻る。今日はいつもと違う事ばかりで通常の仕事が碌にできなかった。
さぁ頑張るぞ、と背伸びをして執務室へ入るが、私の気合は早々に王の言葉で遮られることになる。
「ジハナにレンドウィルのことをどう思っているか聞きに行こうと思う」
王の机を見ると仕事が進んでいないのは明白で呆れる。私が食事をしている間この人は何をしていたのやら。
「はぁ?その話はもう終わりです。今の2人が好き合っていようとなかろうと、150歳の成人まではどうにもならないのですから」
「気になって仕事にならんのだ」
「ほんと勘弁してくだされ陛下……」
「よし、行くぞ!」
「ジハナなら部屋にいるでしょう。私の食事中に就寝のあいさつをしましたから」
「寝てしまう前に話さなければ!急ぐぞネオニール!」
「はいはい、わかりましたよ」
王はジハナの部屋までずいぶんと早足で進む。よっぽど気になるのだなと呆れつつ、もし娘のアルエットに気になる相手ができたら私はどうするだろう、と考える。美容一辺倒のアルエットにそんな浮ついた話は聞いたことがないが王と同じように過剰に心配してしまうのだろうか。
ジハナの部屋につくと、王が扉を軽くノックする。
「ジハナ、少しいいか?」
返答はない。
「寝てしまったかな?入るぞ?」
そおっと部屋の扉を開ける。部屋の中を照らす蝋燭には火が灯っているが部屋の主はいない。その代わり窓が開いていて夜の冷たい風がひゅうと吹き込んでいた。
「トカゲめ!初日から脱走か!」
「レンドウィルのところか?それとも家に帰ってしまったのだろうか」
王は顎に手を当て呑気に考えている。
「王子の部屋を確認しましょう。さっきまでめそめそしていたくせに、まったくあいつは側近の自覚がない!」
王と私たちは王子の部屋のある5階に向かって駆け足で向かったのだった。
王族の食事や来客の際に使われる小綺麗な小さめの小食堂と、見張りや城勤めの者が自由に使える大食堂だ。ちなみに予約さえすれば一般の兵士たちも小食堂を使うことができる。大食堂には料理人が常駐していてどの時間帯でも食事ができるのだ。
大食堂に入ると席の8割方が埋まり賑わっていた。40人程が収容できる食堂で、昼番と夜番の入れ替わる今が混雑のピークの時間帯だ。がやがやと騒がしい中を進み、思う存分好きなものを注文する。のんびりと注文の品が出てくるのを待っているとキャンキャンと高い声がした。そちらに目を向けるとジハナが隅の方の席で見張りの兵たちに囲まれて食事をしている。
「この悪ガキが側近とはなぁ」
「側近にしちまえばもう抜け出すなんてできなくなるだろ」
「どうかな、勉強なんてすぐに飽きて遊びに行っちまうかも」
「行くなら一人で行けよ、王子を巻き込むな」
「王子がいなきゃ出かけても面白くないよ」
「王子はお前みたいなのが遊ぶ相手じゃないんだよ」
「でも楽しいって言ってくれるもん」
「お前ほんと図太いなぁ」
「ってことはまだしばらく脱走特別対策隊は解散できねぇな」
見張りたちに絡まれてはいるが険悪な雰囲気ではない。放っておいても大丈夫だろう。それよりまだ脱走する可能性があることに焦りを覚える。あとでしっかりくぎを刺しておかねば。王子とその側近が脱走など、立場が変わっても変わらず常習化するようでは困る。
にぎやかなテーブルには入れ替わり立ち代わり兵が足を止めジハナに話しかけている。ジハナの前に置かれた皿は空だ。このやり取りがどのくらい続いているのか分からないが、随分長い事テーブルに足止めされているようだった。
「お、お前ヴァーデン殿のとこのガキか?なんでこんなとこにいるんだ?」
「おお、お疲れ。こいつ王子の側近になったらしいんだよ」
「ほんとか?うへぇ、お前が近くにいたら王子がもっといたずら好きになっちまうな」
「俺だって、これからいい側近になれるよう勉強するよ。なんでみんなそんな反対ばっかりするんだ!王子に迷惑なんてかけない!」
あまり皆にくどくど言われるのでジハナが根を上げたように叫んだ。遠目でもジハナが涙ぐんでいるのが見える。こりゃ周りが苛めすぎだな。ため息をついたころ「ご注文の品ができましたよ、ネオニール様!」と元気よく料理が乗ったトレーを差し出された。料理人にお礼を伝え食事を受け取ると、ジハナに助け舟を出してやるか、と彼らの食卓の方へ歩き始める。
「あぁ、悪い悪い。別にお前を責めてるわけじゃないんだ」
「お前と王子に散々苦労させられたから、ちょっと文句を言いたくなっただけだよ。側近がんばれよ」
「ほら、クッキー食うか?うまいぞ?」
泣かせてしまったかと焦っている兵士たちに涙ぐんだままクッキーを乱暴に奪い取りかじるジハナ。近くの席に食事を置くとジハナの背後に回り銀色の小さな頭をぐりぐり撫でる。驚いたジハナが振り返り、兵士たちもぎょっとして私を見た。
「安心しなさい、このいたずら小僧は私がしっかり縄をつけて見張っておくから。それにこれは案外頭がいい、大人になれば良い側近になれるさ」
「あ、いえ、ネオニール様の人選を疑っている訳では……」
「いや、今のままのジハナで不安になるのは当然だ。ただ長い目で見てやりなさい」
私の言葉に兵士たちは「はい!」と元気よく返事をした。ふてくされたままクッキーを齧っているジハナの頭をもう一度撫で、私は食事のために席に戻る。兵士たちはジハナを応援する言葉をかけ、話題はそのまま雑談に変わっていった。
甘いものたっぷりの食事を堪能する。王のしたり顔を思い浮かべるが糖分を摂取して余裕を取り戻した頭だと許してやるか、と言う気持ちになれた。
食事も後半になったところでジハナが話しかけてくる。
「さっきはありがとうございました」
「お前はこれから皆からの評価を変えねばならん。苦労するぞ」
「はい、頑張ります」
「うむ」
「えぇと、俺、部屋に戻ります。おやすみなさい」
「あぁ、お休みジハナ」
食事を終え公務に戻る。今日はいつもと違う事ばかりで通常の仕事が碌にできなかった。
さぁ頑張るぞ、と背伸びをして執務室へ入るが、私の気合は早々に王の言葉で遮られることになる。
「ジハナにレンドウィルのことをどう思っているか聞きに行こうと思う」
王の机を見ると仕事が進んでいないのは明白で呆れる。私が食事をしている間この人は何をしていたのやら。
「はぁ?その話はもう終わりです。今の2人が好き合っていようとなかろうと、150歳の成人まではどうにもならないのですから」
「気になって仕事にならんのだ」
「ほんと勘弁してくだされ陛下……」
「よし、行くぞ!」
「ジハナなら部屋にいるでしょう。私の食事中に就寝のあいさつをしましたから」
「寝てしまう前に話さなければ!急ぐぞネオニール!」
「はいはい、わかりましたよ」
王はジハナの部屋までずいぶんと早足で進む。よっぽど気になるのだなと呆れつつ、もし娘のアルエットに気になる相手ができたら私はどうするだろう、と考える。美容一辺倒のアルエットにそんな浮ついた話は聞いたことがないが王と同じように過剰に心配してしまうのだろうか。
ジハナの部屋につくと、王が扉を軽くノックする。
「ジハナ、少しいいか?」
返答はない。
「寝てしまったかな?入るぞ?」
そおっと部屋の扉を開ける。部屋の中を照らす蝋燭には火が灯っているが部屋の主はいない。その代わり窓が開いていて夜の冷たい風がひゅうと吹き込んでいた。
「トカゲめ!初日から脱走か!」
「レンドウィルのところか?それとも家に帰ってしまったのだろうか」
王は顎に手を当て呑気に考えている。
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