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ラベンダー
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昨日、知り合いからラベンダーの種をもらった。その知り合いは僕と同じ会社で働いていて、いつもやたらと僕に声をかけてくる。昨日の会話は確かこんな感じだったはずだ。
「俺、最近、園芸に興味持ち始めたんだけど、それがさ、めっちゃ面白くてさ」
「へぇ」
僕は相槌を打つ。
「そうなんよ。めっちゃ面白くてさ。でさ、お前も園芸やってみない?」
「ああ」
僕は即答した。
「じゃあ、種やるよ。今ちょうど持ってるし……はい、ラベンダー」
その知り合いは、ズボンの右ポケットからその種を取り出す。
「……なんでラベンダー?」
「ん? ……え? ……あぁ……たまたま持ち合わせがそれしかなかったんだ、うん」
納得のいく理由ではなかったが、とりあえず、ふーん、と頷いておく。
「じゃ、絶対それ育てとけよな。園芸めっちゃ面白いから!」
僕はとりあえず頷いた。
昨日の時点では、ラベンダーを育てる気など全くなかった。それでも今になって育ててみようと思ったのは、朝の妻との会話からだ。
「これ、ラベンダーの種じゃない。どうしたの?」
どうやら、昨日の夜に机の上に置いたのをそのままにしていたみたいだ。
「ああ、会社の知り合いからもらったんだ」
「そう……あなた、これ育ててみたらいいんじゃない?」
妻がやけに積極的だ。それが少し変な感じがして、どうして、と僕は問う。
「……最近、あなた少し疲れているようだから」
そうだろうか。そんなこと全然ないのだが。強いて言うならば、右腕がよく筋肉痛になるという点か、気になるのは。僕は、とりあえず頷く。
「そうだな、育ててみるか」
という感じの流れで育ててみることにしたのだが、育て方が全く分からない。妻に聞いてみるも、答えが返ってこない。仕方なくパソコンで知らべることにする。
『――ラベンダーを家庭で育てるときは、苗から育てるのがいいでしょう。種から育てるのは上級者向けです――』
おいおい、何でよりにもよってこんな難しそうな種を渡したんだよ、あいつは。
『――種をまく土は、バーミキュライトとピートモスを半々に混ぜたものを――』
待て待て、バーミキュライトって――最新鋭の懐中電灯の名前か? それにピートモスって――なんかの虫か?
『――ポイントの一つ目として、発芽率を高めるために春化処理をして――』
春化処理……だめだ、ギャグの一つも思いつかないほど訳が分からん。
そうやって四苦八苦しながらも、文章読解を終了した。
その後、家の近くのDAIKOに行き、栽培に必要な土や用具を購入した。
「よし、まずは春化処理からだな。えーと、まずは種を一晩水につけておいて――」
春化処理をはじめとした様々な作業を終了し、一年と一ヶ月後には無事にたくさんのラベンダーが咲いた。気づいたら、仕事の方がかなりうまくいくようになっていた。
「最近、いいことが多いな。そういえば、右腕の筋肉痛も治ってるし。ラベンダーのおかげかな」
そうして、ラベンダー栽培をきっかけとして、僕の人生は好転した。
後になって、あの同僚に聞いてみたことがある。どうしてあのとき僕にラベンダーをわたしてくれたのかって。そしたら、彼はこういったんだ。
「ああ、だってあの時期お前、ずっと奥さんの写真を右手に持ってたんだぜ。一年と一ヶ月間もの長い間。いくらなんでも立ち直るのに時間かかりすぎだろと思って。だから、幸せが来るっていう花言葉のラベンダーを贈ったんだ。お前に早く元気になってほしくて。そしたら――」
会話の後、家に帰ってラベンダーの花言葉を調べてみた。すると、一つの花言葉が目についた。
『あなたをずっと待っています』
その日から毎日、妻の遺影の前で手を合わせている。
「俺、最近、園芸に興味持ち始めたんだけど、それがさ、めっちゃ面白くてさ」
「へぇ」
僕は相槌を打つ。
「そうなんよ。めっちゃ面白くてさ。でさ、お前も園芸やってみない?」
「ああ」
僕は即答した。
「じゃあ、種やるよ。今ちょうど持ってるし……はい、ラベンダー」
その知り合いは、ズボンの右ポケットからその種を取り出す。
「……なんでラベンダー?」
「ん? ……え? ……あぁ……たまたま持ち合わせがそれしかなかったんだ、うん」
納得のいく理由ではなかったが、とりあえず、ふーん、と頷いておく。
「じゃ、絶対それ育てとけよな。園芸めっちゃ面白いから!」
僕はとりあえず頷いた。
昨日の時点では、ラベンダーを育てる気など全くなかった。それでも今になって育ててみようと思ったのは、朝の妻との会話からだ。
「これ、ラベンダーの種じゃない。どうしたの?」
どうやら、昨日の夜に机の上に置いたのをそのままにしていたみたいだ。
「ああ、会社の知り合いからもらったんだ」
「そう……あなた、これ育ててみたらいいんじゃない?」
妻がやけに積極的だ。それが少し変な感じがして、どうして、と僕は問う。
「……最近、あなた少し疲れているようだから」
そうだろうか。そんなこと全然ないのだが。強いて言うならば、右腕がよく筋肉痛になるという点か、気になるのは。僕は、とりあえず頷く。
「そうだな、育ててみるか」
という感じの流れで育ててみることにしたのだが、育て方が全く分からない。妻に聞いてみるも、答えが返ってこない。仕方なくパソコンで知らべることにする。
『――ラベンダーを家庭で育てるときは、苗から育てるのがいいでしょう。種から育てるのは上級者向けです――』
おいおい、何でよりにもよってこんな難しそうな種を渡したんだよ、あいつは。
『――種をまく土は、バーミキュライトとピートモスを半々に混ぜたものを――』
待て待て、バーミキュライトって――最新鋭の懐中電灯の名前か? それにピートモスって――なんかの虫か?
『――ポイントの一つ目として、発芽率を高めるために春化処理をして――』
春化処理……だめだ、ギャグの一つも思いつかないほど訳が分からん。
そうやって四苦八苦しながらも、文章読解を終了した。
その後、家の近くのDAIKOに行き、栽培に必要な土や用具を購入した。
「よし、まずは春化処理からだな。えーと、まずは種を一晩水につけておいて――」
春化処理をはじめとした様々な作業を終了し、一年と一ヶ月後には無事にたくさんのラベンダーが咲いた。気づいたら、仕事の方がかなりうまくいくようになっていた。
「最近、いいことが多いな。そういえば、右腕の筋肉痛も治ってるし。ラベンダーのおかげかな」
そうして、ラベンダー栽培をきっかけとして、僕の人生は好転した。
後になって、あの同僚に聞いてみたことがある。どうしてあのとき僕にラベンダーをわたしてくれたのかって。そしたら、彼はこういったんだ。
「ああ、だってあの時期お前、ずっと奥さんの写真を右手に持ってたんだぜ。一年と一ヶ月間もの長い間。いくらなんでも立ち直るのに時間かかりすぎだろと思って。だから、幸せが来るっていう花言葉のラベンダーを贈ったんだ。お前に早く元気になってほしくて。そしたら――」
会話の後、家に帰ってラベンダーの花言葉を調べてみた。すると、一つの花言葉が目についた。
『あなたをずっと待っています』
その日から毎日、妻の遺影の前で手を合わせている。
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