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0156★やっと朝食です
しおりを挟むルリの微妙に気の抜けた声で、同じように驚いていたグレンは、リアが巨大なワイバーンを捕殺して、腕輪型のアイテムボックスに収納したコトを認識する。
「リアがワイバーンを捕殺したから、あの大樹の下は安全だろう……あそこで朝食にしないか?」
グレンの言葉に、リアはルリを振り返る。
「いいんじゃないかい……もう危険な魔物は居ないんだからさ………それより、さっきから良い匂いが鼻について、妙に腹が空いちまったよ……ライムが色々なモノを溶かして吸収しているのを見ると、余計にねぇ………」
ルリの言葉に、グレンも頷く。
「同感……リアが調理している音と匂いで、妙に空腹感を感じちまうよ」
そう言いながら、グレンは軍馬達に大樹の下にある馬車を停留させる為の場所へと向かうように指示する。
軍馬達も思い切り走ったので、喉も渇いたし空腹も覚え始めていたので、指示された通りに速度を落として、ゆっくりと大樹の下の空間へと滑り込んで行く。
ほどなくして、大樹の根元へ付近にある馬車を停留させる為の空間に入り、軍馬達はゆっくりと足を止める。
グレンは馬車を停止させた後、さっと四頭の軍馬達の汗に塗れた身体を風魔法を使って乾かしてやる。
リアがそういう風に魔法を使う為、グレンも無意識にそういう風に使うようになっていた。
本来なら、専用の雑布で丁寧に馬体を拭ってから、ブラシで全身を梳かしてやるのだ。
そういう馬の世話も、騎士などに付く従僕や、その下に付く奴隷の仕事のひとつでもあった。
ただ、リアは今世のとんでもなく過酷な環境にくわえて、前世を思い出したコトもあって、奴隷や従魔というモノを支配するという感覚がカケラも無かった。
だから、自分の出来るコトは、自分でするというのが当たり前の感覚のでする。
今までが今までだったので、なんでもやってもらうというのは、逆に苦痛に感じるのだ。
だから、何の気なしに、魔力の出し惜しみなど無しに、食事の準備も、馬の世話も気にするコトなくするのだ。
その時に、リアは前世の知識(ラノベやアニメetc.)を元にした、今世の常識を踏み躙るような魔法の使い方を何の気なしにする。
それを見慣れるて来ているだけあって、何時の間にか、グレンやルリも何の気なしにそういう風に魔法を使っていたりする。
まして、リアに買われてから、極力他人と関わらない生活環境に置かれていたコトで、グレンは普通の奴隷としての行動が、実はわからなくなっていたりする。
勿論、ルリにしてもそうである。
ユナにいたっては『お姉ちゃん』呼びしているが、実際には母親のように見ているふしがあり、リアの行動を無意識に真似る傾向にあった。
それはさておき、グレンが軍馬達の世話を始めた段階で、リアはナナによって姿見の中に放り込まれた全員を馬車の外へと出していた。
勿論、シャドウハウンド達もである。
シバ犬サイズになっていたコトで、ナナに襟首を銜えられて姿見の中へと放り込まれたクインにアクア、マリンにシアンの四頭は、馬車の外に出ると同時にナナより少し大きいくらいの姿になっていた。
襟首を銜えられて、姿見の中に放り込まれたコトがイヤだったらしい。
ただし、ナナに押し付けられた、レオとグリは、クイン(レオが自分の世話係りと認定)とアクア(グリが自分のお世話係りと認定)の足元に張り付いていたりする。
だから、本来の大きさにはなれなかったともいう。
マックスの巨体だと、小さなレオとグリを踏んでしまいそうで怖い為に、ナナと同等サイズにしていた二頭だった。
そして、クインとアクアがそのサイズなので、残りのシャドウハウンド達もその大きさに準じた大きさで馬車の周りに寝転がり休んで居たりする。
当然、マリンやシアンもその中に居た。
更に言えば、何故かナナの子供達に懐かれていた。
寝転がるマリンやシアンの身体に縋るように、マリンに二頭、シアンに一頭が張り付いていた。
当の母親であるナナは、リアの後をついて歩いていたりする。
勿論、馬車から降りて直ぐに、何時も通りにお乳搾りをしてもらい、オヤツもちゃっかりともらっているナナである。
グレンは軍馬達の世話を終えた後に、リアが搾ったナナのお乳と、ルリが獲って来た獲物の刻んだ内臓のタライを用意していた。
「ヨシ、グリ、レオ、ナナの子供達、メシの用意が出来たぞぉ~……」
グレンがそう呼び掛ければ、子供達はいちもくさんに用意されたタライへと走り寄り、顔を躊躇いなく突っ込んで食べ出す。
それを確認している間に、ルリはシャドウハウンド達の為のごはんを出す。
ルリとしては遊び半分で獲って来た獲物、サンドベアの毛皮を剥いだモノを出していた。
「あれ? ルリ…ソレはぁ?」
リアの問いかけに、ルリが肩を竦めて答える。
「ああ…サンドベア……砂漠の熊だよ……こいつは、アタシにとっては、あまり美味しくないんだよねぇ……ちょっと絡んで来たから、イラッとして殺っちゃったんだよねぇ……いちおう、何かに使えるかな? って、ユナのマジックポーチに放り込んでおいたヤツだよ……まだまだ、クインの群れはガリガリだからねぇ……しばらくは、無理をさせずに身体に肉をつけさせてやらないとねぇ……」
いまだにガリガリのクイン達シャドウハウンド達の身体を見て、溜め息を吐くルリに、リアも肩を竦める。
「そうねぇ……せめて、肋骨が浮いて見えないくらいになって欲しいわねぇ……分けてあげられるなら、私のお肉をあげたいくらいだわ……はぁ~……じゃなくて、朝食の準備が済んだから呼びに来たのよ」
リアの言葉に、ルリは嬉々として朝食の用意されたテーブルへと向かう。
そこには、揚げ物がところせましと並んでいた。
「とりあえず、この後はゆっくりと休んでから、また進めば良いってコトで、ビールを出すわねぇ……ビールっていうのは、エールと似たようなモノなのよ……ってコトで、出すわね……そしたら、時空神様にも捧げるからねぇ……ナナにつまみ食いされないでねぇ~……」
そう言ったリアは、ビールミニ墫を(3L)を出す。
勿論、ちゃんとキンキンに冷やしてである。
当然、時空神様に捧げる為のテーブルにもドンッと置く。
揚げたてのたこ焼き、焼き立てのポークウインナー、えびフライに、厚切りオニオンリング、揚げぎょうざ、カキフライ、コロッケ、春巻きetc.。
勿論、揚げたてのたこ焼きには、マヨネーズもどきにソースもどきなどもちゃんと掛けられていた。
えびフライには、オーロラソースもどきもちゃんと添えられていた。
う~ん……揚げ物三昧だけどいいよねぇ~……ああ禁断の………はぁ~……
ちょっと……いや…かなりカロリーお化けだけど……いいよねぇ~……
どうせ、私以外、カロリーをに気しなければならない人なんて居ないしね
はぁ~…でも、前世の………レベル上げるぞ
なんちゃってじゃなくて、異世界(前世)の本物のマヨネーズ欲しいし
どうせなら、カレーも食べたいのよねぇ……
うどんだって、冷凍のあるはずだしね
まだレベルがめちゃくちゃ低いから、大半のモノは買えないしね
それでも、食品類が買えるのは嬉しい
そんなコトを考えながら、リアは手をあわせて、時空神様へと祈りを捧げる。
同時に、お供え物として時空神様専用のテーブルの上にところせましと並べられたモノは全て綺麗に消えるのだった。
「さぁ……時空神様にも捧げ終わったからね……私達も朝食をたべようねぇ………ちょっと油のモノが多い気もするけど……冷えたビールとの相性は抜群だよ」
そう言って、時空神様用のテーブルを腕輪型アイテムボックスにしまって、朝食を用意したテーブルを振り返ったリアが見たのは、グレンやルリ対ナナとの攻防だった。
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