悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

文字の大きさ
159 / 173

0158★時空神様も自重できなかったようです

しおりを挟む


 ユナのおねだりに、リアはにこにこしながら、冷凍うどんのひとつを取り出して、サッと茹であげる。
 勿論、冷凍うどんに付いていた専用のつゆをほどよく希釈して、味が良くしみるようにうどんを少しだけ煮る。

 ユナ用の器に、でき上がったうどんを入れる。
 そして、その上にそっとかき揚げを乗せて、つゆを回しかける。
 勿論、ユナが望んだオハシもちゃんと添えて出す。

 「はい、かき揚げうどんの出来上がりよ」

 リアの言葉に、ユナがにこぉ~っと笑う。

 「わぁ~……凄い良い匂い……なんか…こころひかれる匂い? 凄く美味しそう」

 そう言って、差し出された木製のどんぶりから立ち昇る匂いに鼻をヒクヒクさせて、大きな耳をフルフルさせて、尻尾をファッサファッサと振る。
 それでも、ホコリを立てたくなくて、ソッと尻尾を振るユナだった。

 そんなユナが、差し出されたオハシを手に取り、愛らしく小首を傾げているのを見て、リアはふふふふっと笑って言う。

 「ユナ……オハシはね……こうして…紙袋から出して、左右にちょっと引っ張ると割れるようになっているのよ」

 そう言って、目の前でやって見せれば、ユナは真似してオハシを紙袋から抜いて、綺麗に割る。

 「そう、上手よぉ…ユナ……あと、持ち方はこうねぇ……」

 そう言いながら、片方を親指と薬指の側面で押さえ、もう一方を人差し指と中指で動かしてみせる。

 ユナはリアの手の動きをジィーっと見詰めて、おっかなびっくり動かしてみて、思うように動いたので、にこぉ~っと笑って頷く。

 「えへっ…できたぁ~……リアお姉ちゃん…こうであってるぅ~……」

 リアの目の前で、人差し指と中指でピコピコと器用にオハシの片方を動かしてみせるユナの頭を撫でてやる。

 「うん…上手よぉ~…ユナ……それじゃ、うどんがのびちゃう前に食べちゃおうか」

 「うん……改めて、いただきまぁ~す」

 そう言って、嬉しそうにうどんをなんとか掴んで啜るユナに、リアはニコニコしながら自分の分のかき揚げうどんを食べ始める。
 と、初めてのキンキンのビールに揚げ物三昧を堪能していたグレンとルリが、かき揚げうどんを堪能するリアとユナに気付き、声をかける。

 「おや、なんか美味しそうなモノを食べているねぇ~……アタシにも欲しいなぁ~……ねぇ~グレン…食べたいよねぇ~……」

 ルリに声をかけられたグレンも、コクコクしながら言う。

 「ああ…俺も…その……かき揚げうどんって言うの食べたい……オハシっていうのも挑戦したい」

 ちょっと酔いが回っているらしく、素直な気持ちを口にするグレンに、リアはクスッと笑って頷く。

 「良いよぉ~……それじゃ…今作っちゃうねぇ~……」

 そう言って、空中に冷凍うどんを浮かべたリアは、ユナの時同様に、ちょいちょいと軽く茹でて、希釈したつゆでちょっと味がしみるように煮てから木製のどんぶりへと入れる。
 そして、ルリの分とグレンの分に分け入れ、かき揚げを乗せてつゆを入れる。
 ついでに、オハシも差し出した。

 ルリもグレンも、どうやらビールは飲み終わっているらしいコトをみてとり、リアはちょっとあきれる。

 あらあら…もう飲み終わっちゃったのねぇ~……
 ただ、昼酒は効くっていうから、これ以上はダメよねぇ~……
 それにしても、揚げ物もだいぶ無くなっているわねぇ~……

 なんで思っているところに………。

 ーーいいなぁ~……ボクも……食べたいなぁ~……ーー
 ーー……神託……降ろしちゃおうかなぁ~……ーー
 ーー美味しそう……うどん? どんな味なのかなぁ~……ーー

 ーー異世界の食べ物って…美味しいんだよねぇ~……ーー
 ーー……色々な…野菜や魚介類の揚げ物…美味しかったぁ~……ーー
 ーーキンキンに冷えたビール……のど越し最高だったし……ーー

 ーー捧げられたエールとは…全然…味が違ったもんなぁ~……ーー
 ーー……ああ~……やっぱり食べたいなぁ~……ーー
 ーーよし……リアちゃんに…ねだろう………ひっく……ーー

 脳裏に聴こえて来た、時空神様の本音に、リアはちょっとだけ肩を竦める。

 あららら……もしかして、時空神様ってば酔っぱらっちゃったのかしら?
 異世界の食品にはそういう効果が有ったりするって、ラノベで定番だものねぇ~
 きっと、この世界のアルコールと前世の異世界のアルコールは効きが違うのかもしれないわね

 いや……ちがう……そもそものアルコール度数が違うのかもしれないわね
 エールってモノによっては…その…酸っぱいモノもあるようだしねぇ~……
 じゃなくて、時空神様もかき揚げうどんをご所望なのね

 私に続いてユナが美味しそうに食べているところに、ルリとグレンも食べたがったし
 見れば…ハフハフしながらも、猛然とうどんを啜っているものねぇ……あははは
 そんなモノ(美味しそうな異世界の見たことない料理)を見たら、食べたくなるわよねぇ

 リアは本音を駄々洩れしている時空神様の為に、さっと冷凍うどんを取り出し、手早く茹でて希釈したつゆをしみこませて、木製のどんぶりへと盛る。
 そして、かき揚げを乗せてつゆを注いだら、サッと時空神様専用りテーブルを出して、そこに乗せてオハシを添えて捧げる。

 ほとんどテーブルに置いたと同時に、どんぶりとオハシが消えたのを見て、リアは肩を竦める。

 今回の冷凍うどんには、希釈ようのつゆが個数分付いてたけどねぇ~………
 普通は冷凍うどんだけで、つゆが付いて無いタイプばかりだから、つゆが買えるようになったら、昆布出汁だしとカツオ出汁だしの…出来れば3倍濃縮が欲しいわね

 なんとか、異世界ネットショッピングのレベルを上げないとね
 そうすれば、買えるモノも増えるはずだしね
 あとで、スーパーユウヒも、何が買えるか確認しないとね

 いや、その前に……なんやかんやで…すっかりと忘れきっていたけど
 こっちのレートを、今度こそグレンに聞かないとね
 ルリでもいいだろうけど…ちょっとあやしそうだからねぇ

 あの時、年齢までは視れなかったけど……
 しばらく人族の生活から離れていたみたいだものねぇ
 グレンは、奴隷堕ちしたといっても、ずっと人族の中に居たんだから大丈夫なはず

 いやいや……それより、ホームセンターニャンで何が買えるかよねぇ~……
 シロムラメエは、アレよね…衣類系が基本のお店
 そうよ、せめて人前に出ない時くらい、前世のジャージとか着たい

 フリーサイズとか有れば良いなぁ~……
 特に下着類がキツイのよねぇ………
 履き心地なんて、最低だものねぇ

 はぁ~……時空神様じゃないけど……本音が駄々洩れで…自重できそうにないわ
 なまじ前世での快適生活を知っているだけにねぇ~………
 ごはんにしたって、自炊よりも買い食いの方が多かったからねぇ

 実は、私のレパートリーって少ないのよねぇ
 料理本とか買えたら良いんだけど……はぁ~………
 取り敢えず、時空神様の希望は最大限にかなえるわよ

 この夢のような、異世界ネットショッピングを授けてくれたんだから
 その為には、さっさとレートを覚えて、異世界屋(買い取り専門店)も活用しないとね
 前世の貯金なんて、節約したってあっという間に使い終わっちゃいそうだからね

 そんなコトを思いながら、リアは自分の席に戻り、残りのかき揚げとうどんをつゆごと綺麗に食べたのだった。

 本当はねぇ~……つゆを飲みきるのはねぇ~……
 でも、前世食なのよ……つゆとか残すのもったいないもの……
 ダイエットの敵だとしても、お残しはしません…キリッ

 









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

処理中です...