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0171★やっぱり新大街道だった
しおりを挟むリアの言葉に、下っ端を装って接触して来た騎士は、ひとつ頷いて答える。
「ええ…その認識で合っていますよ。……ただし、現在、こちらの新大街道は、大国ゼフィランス帝国からの指示により、通行止めとなっております」
その言葉に、リアはなるほどと頷く。
「そうなのですか? というか……新大街道ですか?」
リアは、自分の推測が当たっていたコトを確認しつつ、どうやってけむに巻くかを考える。
あらあら……やっぱり、嫌がらせと国力を削り取る為に、大街道を作らせたのね
でも、何時…元の大街道(旧)から、新しい大街道に入ったのかしら?
どうせだから、その辺も聞いてみてもいいかもね
そんなリアの反応に、下っ端を装って、赤身を帯びた金色、俗に言うストロベリーブロンドと呼ばれる髪を揺らして、少し考える仕草をしてから答える。
「はい、そうですよ…この大街道は、大国ゼフィランス帝国からの指示と支援により、モルガン国が作ったのですよ…もしかして、それも知らなかったんですか?」
「ええ…お恥ずかしながら、知りませんでした。それで、この大街道が新しく作られたモノなら、もとからある旧の大街道もあるということですよね」
そう言うリアを、ストロベリーブロンドの騎士は、その言葉が本当かどうかを見極めようとする。
「ええそうですよ。冒険者ギルドから、大街道は通行止めになっているコトを告知されているはずですが、お聞きになりませんでしたか?」
「はい、一応、私自身、ある理由から身分を失った為、身分証も兼ねて、冒険者登録もしたのですが………そういう、通達は知らされておりませんでした」
リアの身分を失ったという言葉に、ストロベリーブロンドの騎士はピクリとするが、素知らぬ振りでさいど問い掛ける。
「失礼ですが、お名前をうかがってもよろしいですが? あと、冒険者登録されたと言うことは、冒険者ギルドのタグを見せていただけませんか?」
ストロベリーブロンドの騎士は、ちょっと優し気な口調でそうリアに言う。
どうやら、身分の確認をしたいらしい。
そこで、リアもハッとする。
「……ああ…自己紹介が遅れてすみません騎士様。私、名をリアと申します。そして、これが私の冒険者ギルドのタグです。どうぞ、おあらためください」
そう言って、リアはロマリス王国の冒険者ギルドで作ったタグを首から外して、ストロベリーブロンドの騎士へと手渡す。
「拝見させていただきます」
存外丁寧な対応で、ストロベリーブロンドの騎士は、リアの冒険者タグを受け取り、その内容を確認する。
そしてストロベリーブロンドの騎士は、とても不可解そうな表情で、リアに問い掛ける。
「あのぉ……貴女の物腰や口調を考えますと……その家名無しというのは、どうにも解せないのですが?」
そんなストロベリーブロンドの騎士に、リアは苦笑いを浮かべて答える。
「はい、実は私…その婚約破棄されまして…やってもいない冤罪で、母国より身分を剥奪された上、国外追放された身なのです。ですから、現在は平民なので、家名はありません」
ここは、ほんの少しの嘘に、本当のコトを大半混ぜるわよ
だって、婚約破棄も身分剥奪も、国外追放も、全部本当のコトだもの
リアの物腰や雰囲気から、高位貴族の令嬢とふんでいたストロベリーブロンドの騎士は、無意識に眉をひそめる。
「ほら…シルーク王国でもございましたでしょ……あれを真似て、浮気をしていた婚約者とその取り巻きに、やってもいない冤罪をまくしたてられて、私、ほぼ身ひとつで、砂漠の真ん中に放り出されましたの……」
「えっ…砂漠の真ん中ですか?」
「ええ……追放と言っても…私に死んで欲しかったのでしょうねぇ……ご両親が帰宅すれば、そんなコトなかったコトにされて、私と婚姻させられるからだと思いますの……だって、あの方が選んだ方は、身分がかなり平民よりでしたので……」
と、それらしく俯いて見せるリアに、ストロベリーブロンドの騎士は呆れたように首を振る。
「それは……家同士の決めごとを破った、元婚約者殿は……人でなしですねぇ……」
「ええ……でも、それで良かったと思いますわ…嫌がらせで、ゴテゴテギラギラの香辛料塗れの食事を出されていましたから……あちらのお母様は、別の令嬢を嫁にしたかったようなので……」
と、いまだにふくよかどころか見事な体型の自分を、うまく擁護するようにリアは言う。
「それでも、砂漠の真ん中に置き去りはないでしょう」
「あちらのお父様は、私の血筋が欲しかったのですよ。私、これでも魔法量が多くて、いくつもの属性魔法が使えるので、自分の孫にそれを取り入れたかったようですの」
よくあるパターンの話しをすれば、ストロベリーブロンドの騎士は顔を歪める。
あははは……ポーカーフェイスが出来ていませんよ、騎士様
きっと、身近な方に、そういう運命を背負った方が居るのでしょうねぇ
だって、ものすごぉ~く同情的な視線をもらっちゃいましたもの
「それでも、神様はちゃんと見ていてくださるのですわ……だって、通りかかった冒険者さん達が、呆然としていた私を発見し、拾ってくださいまして……こうして、冒険者になりましたもの……」
「そうですか…それで、登録がロマリス王国の冒険者なんですね」
「はい、最寄りの国が…ロマリス王国だったので……ただちょっと微妙なんです……あそこの受付嬢、なんか問題ある方達しか居ないようでしたから……」
「受付嬢達が、問題なのですか?」
「ええ、なんでも仮の登録させて、問題ある安い依頼をいくつもこなさないと、本登録ささせてくれないらしいですわ」
「確かに、それは問題でしょうねぇ……ギルドマスターやサブマスターは知っているんでしょうかねぇ?」
「さぁ~…それはわかりませんわ……私も、とりあえずの身分証として、登録しただけなので……ただ、たまたま私を担当した受付嬢は、そういう方ではなかったようですけどね。拾ってくれた冒険者さん達が、良かったねぇって言ってましたもの」
「そうですか」
「ええ……ただ、そういう受付嬢さんだったので、冒険者の心得みたいなモノとか必要な装備とかの説明も、まるでありませんでしたわ……だから、その通行止めのお話しも聞いて無くて……お陰で、途中で…ものすごぉ~く大きなワイバーンに襲われて苦慮しましたわ……そのセイで、魔力枯渇を味わうハメになりましたもの」
と、さりげなく、通行止めとなっただろう経緯と思われるワイバーンの話しをする。
たぶんに、この騎士団の御一行様が出動した原因は、あのワイバーンでしょうね
通りかかったモノを、見境なく獲物としていたみただったし
討伐に向かうなら、もう居ないから、このまま大樹に向かったら徒労になるものね
ここは、情報を与えて、様子見するしかないわよねぇ……
いや、力尽くで振り切るってコトも出来るけどねぇ
流石に、大国ゼフィランス帝国の騎士団を敵に回すのは得策じゃないものね
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